初めて語った関ヶ原の戦い

 そしてこの日は城に泊まった。来た人達は魔改造された岐阜城に驚いている。勿論、オレもだ。まず、手動式ではあるがエレベーターがある。歯車を何個も装着している為、3人乗りではあるが遠藤さんは軽々回していた。


 そして、今回特別に開放された岐阜城の温泉だ。壁の絵は趣味が悪い・・・おっと。中々にこの絵を好む人は居ないだろうと思うが、髑髏の絵だ。信長さんらしい。


 「今宵は温泉に入り、各々が好きな酒を飲みゆるりと過ごせ。ワシもとやかくは言うまい。各自個室を用意しておる。下がれ」


 そう。こんな大人数を収容できるように剛力君達が工夫に工夫を重ね、簡単ではあるが一つの部屋に仕切りを付け、声は大声ならば聞こえてしまうだろうが、防音装備としてスポンジとゴムなんかを簡易的な壁にして、板で作った部屋だ。


 オレは泊まってもいいし、家に戻ってもどちらでも良いと言われている。信長さんの気遣いだ。来年は来た人達に、マッサージ師なんかを充てがってやりたいと思う。


 そしてオレはゆきさんに、色々閃いた事をメモしてもらった。マッサージの事や奇妙丸君の事、そして意味の分からないくらい届いている文の返答だ。


 知らない人からの手紙がわんさか来ているのだ。まあ殆どがオレの配下になりたいとか、オレはどこどこの場所で何々をしていた!甲賀者より使える!とかだ。そんな輩には返信はしていない。ってか、そもそも飛脚の人は本当に凄いと思う。住所もクソもないのにちゃんと届けてくれるのだから。


 住所の制定とかもしたいよな。まあこれは追々だ。


 「後は飯屋なんかは一極集中にして、色々なジャンル分けにしたいなと思ってる」


 「それは剣城様が主導でされますか?」


 「う〜ん・・・オレばかり頑張っても意味ないから、新たに店をやりたい人募集してみない?以前より余裕できてるから、新たに挑戦したい人とか居るかもしれないし」


 「畏まりました!人を振り分け選別しておきます。他にはありませんか?」


 「あっ、後は安養寺さん達のお土産と、養殖する人なども作りたいかな?後は一緒に九州に・・・島津さんに挨拶に行く人も見つけてほしいかも」


 「そもそも何故そんなに、島津何某なんかに拘るのですか?」


 「ゆきさん!?分かってないな!島津家と言えば前進撤退をする猛者だよ!?しかも、負け戦と分かりつつも義を貫き、その負ける側に立つような家の人達だよ!?カッコイイじゃないか!」


 「何の戦かは分かりませんが、剣城様が心酔しているのは分かりました。ではこれも私が選抜隊を見つけますね」


 「こんなものかな?あっ、この槍を慶次さんが帰って来たら渡すから、覚えておいてくれる?」


 「まぁ!?素晴らしい業物ではないですか!?」


 「うん?あぁ。オレの師匠から貰った感じかな?ロンギヌス槍って言うんだよ。慶次さんにピッタリじゃない?」


 「そうですね!畏まりました!お渡ししておきます!」


 「後は・・・大谷吉継さんとかも欲しいな。たしかハンセン病かなんかだっけ?」


 「大谷吉継?誰ですか?未来で有名になった方ですか?」


 「実はオレが知ってる世界では、関ヶ原の戦いと言って東西で大きな戦があったんだよ。その戦では、西軍有利とされながら東軍が勝ったんだけど、その西軍の中で孤軍奮闘したのが島津義弘って人と、大谷吉継って人なんだ。他にもまだ居るのはいるけど、とりあえずこの2人が気になる」


 島左近なんかも有名だけど、石田三成が自分の領土の半分上げるから来て!って言って仕官したんだよな!?オレってば自分の領土はこの家しかないからな。


 「東西で戦ですか!?」


 「うん。オレがこの世界に来て2回の正月が来たから、今は西暦1563年。今から37年後に時代の覇者を決める大きな戦だよ」


 「え!?その時、大殿様は!?織田家が覇者ではないのですか!?」


 「シッ!声が大きい!このオレが居た未来の事はお菊さんにも、小川さんにも、金剛君にも、言った事ないんだよ!ゆきさんにだから言ってる事なんだよ!だから他言無用に。それにその世界にオレはするつもりないから」


 「すいません・・・取り乱しました」


 まあ、本来の歴史を言ったところでってのはあるかも。既に大きく変わってるだろうし。


 「その関ヶ原の戦いで、絶賛東軍に囲まれて逃げ道がない中、無事薩摩まで逃げ帰った人が島津家の人達なんだよ。しかもその時の戦でオレの世界の歴史では、とある家の四天王って言われている人の1人を、この戦の傷で戦死させている」


 流石のゆきさんにも、徳川家康って名前を変えた家康さんの家臣、井伊直政が戦死したよ!とは言えないよな。


 「では大谷様と言うのは!?」


 「実は西軍は最初、数的にも相当有利だったんだけど、とある人の裏切りにより総崩れになったんだよ。で、大谷吉継さんって人は最初から、その人が裏切っても大丈夫な陣作りをしていたんだよ」


 「裏切りを見越して!?」


 「そう。そう。それで確か何回かは押し戻したりしたと思うけど、他の人達も裏切りだしてさすがに陣を保てなくなり、最後は切腹したのだったかな?しかもこの人、ハンセン病って病で自分で歩けないくらいのレベルなのに、輿に乗って指揮してたらしいからね」


 「なんとまあ勇敢なお人なのですか!?さぞ人望が高い人なのですね!?」


 「うん。ただこの大谷吉継さんって人は、どこの出身か分かってなかったと思う。豊後国の国人の子とも、六角家臣の子とも、本願寺の坊官の子とも言われているし、そもそもまだ3歳くらいだと思う」


 「では、薩摩に行ったついでに確認してみますか?」


 「いやさすがにそれは無理だろ!?豊後は大友だったよね!?大友とか頭おかしいバトルジャンキーの家だろ!?そもそも島津と大友って仲が悪いから、島津と仲良くなるなら豊後には行けないだろうな」


 「剣城様はどちらの方が配下に欲しいのですか?」


 「配下にしたい訳ではないけど、仲良くなりたいのはかなり離れているけど、島津家だな。なんかオレの中で、勝手に神格化してる感じさえする。前進撤退はできる事じゃないからね」


 「ふふ。畏まりました。私達甲賀隊もそのくらい思われるように精進いたしますね!」


 「違う違う!そういう意味じゃないからね!?」



 戦国時代の正月は長い。地域により多少は変わるらしいが、織田家は年明けから7日までは正月と決まっているらしく、オレも家でじっとしている。ちなみにだが、安養寺さん達にはコーヒー豆や菓子類、漁業の本なんかを渡した。


 暫くした後にオレは多分行かないと思うけど、配下の誰かに行ってもらい、ビワマスの養殖をしてもらおうと思ったからだ。


 そして滝川さんは蟹江城に詰めては居るが、桑名方面一帯を治めている為、桑名の海に例の土管を沈めてもらう事にしている。


 これまた時を見て、例の刺し網を試してもらう事にしている。伊勢海老が取れれば御の字だ!むしろ獲っていただきたい!伊勢海老の刺身、バター焼きは美味いからな!


 そして森さんは釣竿とリールの使い方を教えて餌を付けて糸を垂らすと当たり前の事を教えた。むしろそれ以外教える事がないからである。


 「これで餌を付ければ魚が釣れるのか?」


 「狙う魚にもよりますが、基本的にエビを付けて鯛を釣るみたいな?感じです。まあお暇な時にでもお使い下さい」


 この釣り竿には、素晴らしい能力が備わっている事はまだ知らない。もう少し後の事である。


 最後に家康さんだ。家康さんはぶつくさ言いながらも・・・いや、文句しか言ってなかったが、本田さんが社交辞令の挨拶をして帰って行った。どうも信長さんは、浅井家を贔屓にしてるように見えたみたいだ。それと景品がダイエット器具と知り、ガッカリしたようだ。荷車を貸して帰って行った。


 後ろ姿がドナドナを連想させる気がした為、個人的に即席ラーメンや氷漬けにしたマグロの半身を渡してあげた。勿論、マグロに関してはメニューと作り方を、数種類書いたメモも渡している。


 「剣城殿・・・・いや何でもない。ありがたくいただく・・・はぁ〜・・・・」


 いやいや、ドヨンとし過ぎだろ!?


 「家康さん?近々飛脚に甘い物持って行かせますので、元気出して下さい!」


 「本当だな!?いつだ!?いつなのか!?」


 「殿!!そんな甘い物ばかりではまた太ってしまいますぞ!」


 「ははは!近い内です!もしかすると私が届けるかもしれませんよ?海から!ではまた!気を付けて下さい!」


 「海から?まあ分かったぞ!楽しみにしている!」


 

 皆が去り、オレもまだ仕事をする気にはならないが金剛君、小川さん、剛力君達と男だけで話し合う。オレの家に置いてあるコタツに入ってだ。


 「で、船なんだけど剛力君は何を求めて、こんなに武装しているのかな?」


 「いやそれは・・・いついかなる時にも即応できるようにと・・・まず国友氏にも確認取っておりますが、鋳造砲は必須でございます」


 「いやそれは分かるよ?何も武装が無いのは怖いからね。けどこの設計図を見て思うんだ。まずこれは何?」


 「いえ、これは先に言った鋳造砲は特別製に致しまして・・・長砲にし安定性を増すように・・・そして右舷に炸裂弾を装備出来る直射砲を、10門装備致します」


 剛力君が設計しているものは普通に戦艦だな。オレは即利益が出るように、漁船的なのを求めてた筈なんだけど・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る