剛力君の野望

 「で、金剛君はどう思う?」


 「はっ。剛力と同じ考えでございます」


 珍しく小川さんは静かだな?


 「そもそも、ここまで武装した船じゃなくてもいいんじゃない?」


 「いえ、実はもう一つ設計だけしている物もあります。どうぞ」


 は!?まんま第二次世界大戦の時の大和じゃん!?


 「これってまさか・・・大和!?」


 「流石!やはりこの艦隊の書物に書かれている事は、本当なのですね!?事象の事に関してはぼやけて見えませんが、大和とは剣城様が居た世界では希望の艦だったとか!?」


 いや、この時代を生きてはいないから分からないが、当時なら沈まない船として日本が一発逆転を狙った艦だった、と思うけど・・・。


 「確かに希望の艦だったとは思う。オレが居た世界で大和を知らない人は居ないと思う。そのくらい有名な艦だけど、ってかそもそも文字が見えないってどういうこと?」


 「そのままの意味でございます。第二次世界大戦とだけは見えますが、その後は変な文字になり見えません」


 「金剛君も?小川さんも?」


 「はい」


 「うむ」


 どういう事だ!?まさか罷り間違って大和を剛力君が造ってしまえば、この大和は無くなるからか!?いやそもそも作れる訳ないだろ!?


鉄の技術も無いしエンジンも無理だし・・・。いやワンチャン、芳兵衛君がダムを利用して電気は研究してくれているから、電気の方は何とかなるかもしれないけど・・・。


 「で、この大和を造るの!?」


 「すぐにとは言えません。でも我々の目標です。いずれ大殿が日本を一つにし、大殿はそこで止まる方には見えません。明や南蛮に目を向けるでしょう」


 「確かにそれはオレも思うけど」


 「その時、明や南蛮に負けない船が無いと制圧はできません!そもそもこれくらいの艦じゃないと、剣城様には似合いません!」


 「へ!?どういう意味!?」


 「そのままでございます!我ら甲賀隊は織田様の隊でもありますが、少なくとも某は剣城様に忠誠を誓っております」


 嬉しい事言ってくれるじゃん!?


 「ありがとね!」


 「真面目に聞いて下さい」


 普通に怒られたんだが!?


 「今やこのように勉学も出来、正月の寒い中コタツに入り、抹茶ミルクを飲みながら、ラーメンも食べられて、某は幸せでございます」


 「ワシもだ。まさかあの世も近くなってきた身でありながら、極楽が待っていようとはな」


 「俺もです」


 「うん!?皆どうしたの!?」


 「この場はこれだけしか居ませんが、皆、甲賀の者は剣城様に感謝しております。我らの王は剣城様です。身分も何も無い身でありながら、二つ返事で我らを引き取っていただき、今でも滝川様からお声が掛かった事、忘れません」


 「うん、まあ無条件で来てもらったからね?」


 「今でも我らを陰で笑っている奴もいるでしょう。剣城様を変な目で見る人も居るでしょうが、そんな剣城様に相応しい船を用意したいのです。大和なる艦に関してはすぐにとはいきませんが、追々お許し願えませんか?」


 「いやまあ、できるならいいけどかなり技術的に──」


 「目標なので構いません!いつできるかは言えませんがいつか必ず!」


 「分かった!分かったよ!いずれ技術が熟成した時に挑戦しなさい!その時はオレも欲しい物出してあげるから!とりあえず今はフリゲート艦くらいで我慢しなさい!」


 「いえ。それなんですがもし、明や南蛮に船が売れればどうなりますか?」


 は!?また変な事考えているのか!?いや待てよ・・・まさか!?


 「漁夫の利?」


 「御名答!流石、剣城様です!明や南蛮より3歩先の艦隊を我らは配備し、2歩下がった船を明や南蛮に売ります。そしてそれらを争わせる。その間に大殿が日本を一つにして、明や南蛮が疲弊しているところを剣城様が!!」


 いやオレかよ!?信長さんじゃねーの!?


 「別に構いはしないけど、船造るのかなりお金いるだろ!?まずは利を作ってからじゃないと・・・。そもそもオレ今どのくらいお金あるのだ!?ゆきさん?」


 「はい!」


 「オレって今どのくらいお金あるの?」


 「はい。蔵に約4000万円はあります。ちなみに芝田家は・・・というか織田家は現在新しいお金、円のみの支払いとなっております」


 は!?4000万!?大金持ちじゃねーか!?


 「一ヶ月どのくらいの収入があるの?」


 「12月で言えば約2000万円です」


 マジで!?ヤバ過ぎじゃね!?


 「がははは!堺の豪商人にも負けはしてないですな!?」


 「確かに小川さんの言う通り・・・凄いな。主な内訳も聞いていい?」


 「はい。温泉、宿、尾張及び岐阜の村々での、技術料の徴収が主となります。20%が奇妙様に。30%が剣城様で、残りが大殿様の振り分けになります」


 「ちゃんと奇妙丸君にも振り分けられているんだな。それで、その2000万から人件費やらを引けば?」


 「いえ、引いた金額になります」


 「嘘!?!?マジで!?家康さん達にも綿花のお金を出してるよね!?」


 確かに近江から行商人が多数来ている事は知っていた。国友さんのツテで堺の商人も来ている事は知っているが、そんなに買い物して他国では、どのくらい売られているのだろうか。


 「勿論です!むしろ正月には入り用かと、少し多めに渡してすらいます!ちなみにですが、大殿からの給金は入れておりません」


 いやオレってばまだ収入源があるの!?


 「それはどのくらいあるの!?」


 「大殿からの給金は主に作物などの種や苗、肥料代金、家などの建築代金と遠藤様が言っておりました」


 「へぇ〜。それでそのお金はどのくらいあるの?」


 「はい。約7000万はあります。これは新たに人材を雇った時や急な入り用、雇った方の準備金、戦などの支度金として使う為、別に貯蓄致しております」


 いやぁ〜、内助の功とはゆきさんだろ!?本当にオレに過ぎたる嫁だよ!!


 「ゆきさん?ありがとう。オレじゃそこまで貯められないから助かる。今後も芝田家の財政はゆきさんでお願い!」


 「クスッ。ありがとうございます。今後は更に詳細も書いておきますね?」


 「さすがゆきだ!剣城様をちゃんと支えるのだぞ!?」


 「がはは!長数の娘がよくぞここまで!」

 

 「爺は黙って下さい!」


 「ほっ!?何故にワシにだけ冷たいのだ!?」


 「すいません、話戻しますね。それで剣城様には新たに人材を雇って欲しいのです」


 「うん。いいよ。オレもそのつもりだったから。だから皆が戻って来てから募集をかけてみよう!一旗上げてみたい人なんかをね?」


 「はっ!人選や身辺調査はお任せ下さい!」


 「了解!とりあえず面接だけはオレがしようかな?小川さんも居てくれると助かるのだけど?」


 さすがに小川さんが可哀想だから、声を掛けてあげようか。


 「がははは!剣城様の側近とはワシの事だな!?のう?金剛よ!?」


 やっぱりやめようかな・・・・。

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