飴玉で怒られる
「可成、出過ぎるな。食い物の業は深い」
えっ!?飴玉一つ、二つくらいでそんなに怒る事!?
「サルや勝家が剣城から贈り物として貰った事はこの際不問とする。此奴に無理矢理技を使わせた訳でもあるまい?家臣同士が交流し、切磋琢磨する事は良い事じゃ。それにあの村の奴らに食わせた事も分からんでもない。農民も動かす為にと分かる。だが、ワシの小姓にも貴様は渡しておらんか?」
信長さんが言うには昨日からやけに小姓の機嫌が良かったらしくそれを疑問に思いつつ、信長が自慢で小姓に親子丼は美味かったと言ったら、たしかにオレの出す物は美味かったと同意したのでおかしいな?と思ったけど味見程度に食わせたのだろうと思ってたらしい。
けどそれが甘味と知って、しかもまだ信長さんも食べた事ない物を小姓が知っておるのが我慢できないらしい。
「すいません!日頃から疲れておるかと思い、元気の出る丸薬をお渡ししてました!決して内緒にするつもりではなかったです」
クッ!!これはもう丸薬・・薬としてゴリ押しするか!?
「なら何故ワシが咳病の時にその丸薬を出さないのか?」
「信長様はこの丸薬より高価な薬をお出ししました。この丸薬というのは咳病に効く程ではないのでお出ししませんでした」
「貴様が言った事はたしかに筋道は合っておるな。そもそもワシは甘味如きでそこまで問い詰める事はない」
いやいや、バリバリ問い詰めてますやん!!めっちゃ嫉妬してますやん!!
「これがその丸薬です。お一つどうぞ」
「ふんっ。別に丸薬が欲しくて言った訳ではな・・・・・何だこれは!?これが薬だと!?こんな甘いのが薬だと!?あの犬の弟共はワシよりこんな美味い丸薬を・・・ぐぬぬぬ」
一旦落ち着いた信長さんだったがまたドス黒いオーラが出てきそうだったのでオレは素早く、
《チョコケーキ12号》¥4000
を購入して素早く紙皿に乗せて渡した。
「貴様っ!!!お館様に糞を渡すなぞ、その命要らぬと見える!素っ首叩き切ってくれよう!!!」
待て待て待て!!!これは糞じゃなくチョコレートだよ!!この前滝川さんも食べて感動してたじゃねーかっ!!
「一益、待て。お主はこれが糞にしか見えぬのか?ワシには分かる。これは以前、皆に酒を出した時に一緒にあったちょこれーとというやつじゃないのか?」
「さすが信長様です。当たりです。咳病の時に濃姫様とお食べになったケーキの回りをチョコレートで仕上げてるやつです。まずは一口どうぞ」
そう言ってフォークとナイフを渡そうとしたら不機嫌に左脇さんから脇差しと箸を受け取り紙皿の上に自分で切り分けた。まぁその切り分け方が明らかに半分くらい切ってる件について。
「この匂いがたまらぬ。あの時食べたけーきとやらより美味そうだ。どれ・・・・・・う──────んっまい!!!!」
信長らしからぬ声に一同驚愕する。オレはちょっとドヤ顔だが。
「・・・・・・・・お主ら・・・今聞いた事は忘れよ。分かったか?忘れよ」
「はっ。某何も聞いておりませぬ。外に何かが居て鳴いていたのでしょう」
佐久間さん機嫌が良くなった時に1番に、ゴマすりヨイショするのは卑怯じゃないすか!?
「お主らも食ってみよ。ワシは美味い以外の言葉が思い付かん。ただしサル、勝家はわざとじゃないにしてもワシより先に丸薬を食べた罰じゃ。このけーきとやらは次の機会に食わしてやる。お主らはそこで見ておけ」
2人とも切腹すると言った時の顔より明らかに落ち込んでるんですが!!そんなにケーキ食いたかったのか!?
それから恐らく珍しいんだろうと思うが信長さんが家臣達に切り分けてやると言って紙皿に脇差しで切って渡していた。池田さんとか『自分で切れます』とか言ってたが、オレは見たぞ。それに信長が自分で切り分けた理由も分かったぞ。
信長!!セコい!セコ過ぎるぞ!!!明らかに一口分しか分けてねーじゃねーか!!!
「殿?これだけ・・・・でございますか?」
「ほーう。可成が我儘を言ってくるのは珍しい。それ!後これだけ渡そう」
そう言うともう一口分だけ森さんの紙皿に増えた。うん。本当にセコいっすね、信長さん。
「・・・・・・・・・・過分な配慮、ありがとうございまする」
あれは怒ってるよな!?さっきも庇ってくれたし、森さんにいつか特大ケーキプレゼントしてあげよう。
「殿っ!!非常に美味でございます!!」
「某もこれ程の物は口にした事ございませぬ!!」
「たしかにこれは、美味い以外の言葉が見つかりませぬ」
池田、佐久間、丹羽さんは絶賛してくれてるな!よしよし!後は滝川さん・・・・。
「ワシはこんな物に屈さぬ!絶対に屈さぬ!!!」
「一益、食わぬなら金輪際お主には何も渡さぬぞ?まぁそれはそれで、ワシの取り分が増えるから良いがな」
「クッ・・・おいっ!褌!お館様から頂いたから食うだけだからな!?お主からの施しを受けた訳じゃないからな!?」
いやまたここで褌!?それに何故変なプライドがあるんだよ!素直に食べたらいいじゃん!!
オレの横で食べられない2人組は鬼の形相でケーキを見ていた。
「お館様・・・・・。素直に美味いです・・・。悔しいながら某も美味い以外言葉が見つかりませぬ」
「ふんっ。分かったか?甘味の恐ろしさを」
そこで皆、顔付きが変わる。
「はい。一度これを食したら今まで食ってたもんが食えなくなる凄まじい飯でございまする。これを松平の折に使うのですね?」
いつのまにか木下さんが話に入る。
「うむ。予定よりかなり早いが7日後にはここ清洲に松平を呼ぶようにしておる。同盟がなり次第すぐ斎藤を潰す。いつでも動けるようにしておけ。それと此奴の技を使わせぬと申したがあれは辞める。 その代わり、使う時は此奴に相応の対価を渡すようにする。ワシも対価を渡す事にする。明日もう一度昼餉前に登城しろ。此奴が作った野菜の飯も食わそう。その時今後の此奴の事を決める」
オレはまた呼ばれるのかとブルーな気持ちになりながら柴田さんと家に帰った。
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