漢 森可成

 台所に着いたオレは早速皆に調理方法を教えようとしたら、料理頭の人が半泣きになりながらオレに縋ってきた。


 「お主がぁぁぁ!!!お主がお館様に未知なる物を食わせたせいでワシの料理がぁぁぁ・・・・」


 おいおい、初老に近い人の涙なんか嬉しくねーぞ!!たしかに材料も何も無いのにあの親子丼みたいなの作れと言われても無理だよな。


 「それはすいません。信長様からこれからお渡しする物で皆さんが作るように教えよと言われました。私が作り方を教えますので頑張って覚えて下さい」


 それからオレは少量だが何の油か分からないが食用でもたまに使うと言われたのでその油を鍋に入れて物陰に隠れて、


 《小麦粉》¥300


 《醤油》¥400


 《塩》¥200


 《業務用砂糖》¥1500


 を素早く購入して、以前購入した卵をボックスから取り出し、料理頭と弟子の人達に卵、水、小麦粉でオーソドックスなバッター液の作り方を教えて油で揚げると天ぷらが出来るという事を教えた。


 「「おぉぉーーー!!!」」


 「頭!!!何やら香ばしい匂いがしております!!」


 「砂糖!?それにこんなに真っ白な塩なんか見た事無いぞ!!!ともかく、ワシもできる限り覚えておるがお前達もちゃんと見て覚えとけ!いつでもお館様にお出しできる様にしておくのじゃ」


 「次の料理に移ってもよろしいですか?」


 「その前に・・・遅れてしまった。最初見苦しいとこを見せてしまったが、ワシは織田家の台所を任せてもらっておる伊右衛門と申す。以後よろしく頼む」



 ・・・・・・伊右衛門さん・・・お茶かよ!!!と思った。


 「はい。私は柴田勝家さん預かり、芝田剣城と申します。よろしくお願いします。では天ぷらが冷めてしまうので先に次の料理教えますね」


 そこからジャガイモでフライドポテト、カボチャを醤油と砂糖で煮詰めた甘辛煮、サツマイモを乱切りして砂糖と水を煮詰めて、その液体をサツマイモにかける、大学芋を教えた。

 正直色々足りない物もあるけどとりあえずは美味しいと言えるくらいの物は出来たかな?カボチャの煮物なんか味醂を入れてないからちょっととろみが少ない気もするが・・・。


 「皆に味見をしてもらいたいのですが、急いで教えたので量もそんなに作ってないので代表で伊右衛門さんに味見をお願いします」


 「「「えぇぇぇーーー!?!?」」」


 「騒ぐな!!この後また作ればいいだろう!そんなに難しい事はしてなかったから剣城殿が居なくても作れそうだぞ。とりあえず味見をば・・・。

 何だこれは!?甘いぞ!?それも普通の甘さじゃない!?!?」


 予想通りの反応だな。とりあえずこの時代の人にも通用しそうだな。


 「とりあえず冷める前に信長様にお出しします。伊右衛門さん、持って行きますよ!」


 「まっ、待て!!まだもう少し味見を・・・」


 そうやたらと味見をしたがる伊右衛門さんを説得して料理を持って座敷に戻るとそこには超超超不機嫌な信長さんと冷や汗ダラダラぽい柴田さんが居た。


 「お待たせしま・・・・・・」


 そこで何故か自然と柴田さんの横で正座をしてしまう。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 「貴様、ワシに黙ってる事があるのではないか?」


 「黙ってる事ですか?・・・・・何も無いと思いますが・・・・」


 「しらを切るか、はたまた何も悪く思うておらんかだ。まぁ、良い。先に作ったもんを食おう」


 おかしいぞ!?甘いやら美味いとか言いながら食べてもらう予定だったのに信長さん無言で食べてるぞ!!!?


 「・・・・一通り全部食べたが相変わらず美味いな・・・・」


 パタンっパタンっパタンっ・・・・・。


 「誰ぞある!『ははっ』今すぐ、可成、長秀、恒興、サル、一益、信盛を連れて参れ」


 それから、30分程沈黙の怖い空間でションベン漏らしそうなのを我慢しながら待っていたら皆が到着した。


 「集まったか。急に呼び出して悪いな。お主らに聞きたいことができた。ワシに・・・・ワシに内緒で此奴から贈り物を貰った奴は居るか?最初に貰った物とは別にということだ」


 「某は殿の前以外では此奴とは会っておりませぬ」


 「池田殿と同様。某もです」


 池田さんと森さんが言うと滝川さんが憤怒の形相に変わる。


 「殿!此奴が何をしたかは分かりませんぬが某は最初から此奴は信用できんと思うておりました!某に斬らせて下さい!!」


 斬るって!?斬るってどういうこと!?!?何もオレ悪い事してないぞ!?滝川さんオレの事嫌い過ぎだろ!?


 「一益、刀から手を離せ。何も斬るとは言うておらん」


 「殿っ!!!!すいません!!某、殿が咳病の折に剣城殿と縁が出来まして丸薬なる物を貰いました!!ですが何も内緒にしていた訳ではなく殿も知っておるものかと思っておりました!!誓って嘘ではございませぬ」


 「某もこの剣城が某の家に居候になるからと貰っただけでしてお館様に嘘をついておると思うてなく・・・」


 おいおい!飴玉の事か!?ただの飴玉でこんなに大事になるのか!?しかも藤吉郎さんも柴田さんもオレを擁護してくれんのかっっ!?!?柴田さんに関しては絶対知ってただろっ!!!



 「某・・・この柴田勝家、お館様に不興を買い切腹を申し付けてくれれば今すぐこの腹掻っ捌いてみせまする。ですが、この剣城殿の技は見事というほかありませぬ。どうかこの剣城だけは許して頂ければと申し上げます」


 「某も柴田殿同様、今この場でも腑掻っ捌いてみせまする。ですが、剣城殿だけは勘弁して下さい。此奴はお館様の"これから"に必ず必要な方!!ワシなんかより役に立ちまする。柴田殿の武もこれから必要。どうかワシ1人の咎にて納めて下され」


 「初めて剣城殿と会ってあの黒い見た事もない物を妻や側女に食わせたら大層喜びましてな。殿?丸薬が如何な物かは分かりませぬが、この剣城殿が持ってる技はお館様に必要なもの。木下殿の情報収集、柴田殿の武も必要なもの。不必要な罰は混乱を招きます」


 なに!?この森さんの大きな包容力は!?惚れてまうやろっ!!!

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