あまり嬉しくない褒美?
次の日の昼過ぎくらいにオレと柴田さんが登城した。曰く、事前に皆が集まる前に作るようにとの事だった。
「皆さんこんにちわ!今日も昨日と同じ物を作りますが、昨日より人数が多いので頑張って作りましょう。途中材料が足らなくなったらまた言って下さい」
「あの・・・その・・・・済まんっ!!!!!昨日あれから皆で天ぷらの練習をして昨日の材料全部使ってしもうた」
はぁ〜!?どんだけ天ぷら作ったんだよ!!!そりゃ普通の大きさの小麦粉だったけど、全部使うのは中々だと思うが・・・。でも珍しい物見ればしょうがないか。彼らも覚えようとしてたのかもしれないし。
《業務用小麦粉》¥5000
《卵》¥200
《業務用醤油》¥2000
を購入して料理頭に渡した。
「とりあえず今日はこれで作ってもらいます。さすがにこれだけあれば無くなる事はないと思いますが、もし何かあれば言って下さい」
それから料理頭と弟子さん達は一生懸命昨日のかぼちゃの甘辛煮、天ぷらを作ってオレは正直あまりやる事が無かったのでお米を炊いてもらい、醤油と砂糖で焼きおにぎりもどきを各1人一個ずつ作った。そして全部を作り終えたところでちょうど小姓が呼びに来た。
「拙者、今日よりお館様の小姓に抜擢されました遠藤と申します。剣城殿の事は長谷川殿からお聞きしました。以後お見知りおきを」
「芝田剣城と申します。よろしくお願いします」
お近付きに飴玉をと思ったがまた信長さんが不機嫌になる為やめておいた。
「昨日、左脇殿を筆頭に何人かが小姓の任を解かれ放逐されました。その時、長谷川殿や左脇殿や他の方も伝えてくれと頼まれた事がありまして、あの丸薬は非常に美味でした。暫くはお目に掛かれませんがいずれお礼申し上げますと言っておりました」
「えっ!?放逐って!?それは丸薬のせいでですか!?」
「某は理由は存じておりませぬがくれぐれも剣城殿とは関係ないと伝えてくれとも言われております」
絶対飴玉のせいだろ!!信長さん!?そんな事で放逐とか・・・・。でもオレも信長さんに意見なんか言えないし・・・。
「剣城殿?理由は某は分かりませんが、本人達も剣城殿のせいじゃないと言っておるので、あまり気にしなくても良いのでは?それに放逐と言っても多分、戦の折は一兵卒として戦働きすると思いますので、剣城殿もまた会える可能性はあるかと存じます」
「なら良いのですが・・・。でもやはり気になります。もし遠藤様がまた皆に会う機会あれば、私が謝っていたと伝えてくれませんか?」
「分かりました。そろそろお食事の支度はよろしいでしょうか?皆々様方、お待ちしております」
そう言われ、今更深く考えてもどうしようもないし、とりあえず目の前の事を真剣に取り組もう。
「お待たせしました。昨日収穫した新たなる野菜の料理でございます。目下量産中でございます」
「やっと来たか。うむ。昨日と見た目は変わらぬな。これも城の料理人が作ったのか?それに茶色い握りが一つあるが?」
「甘辛煮や、フライドポテト、大学芋、天ぷらは城の人が作りました。ただこの焼きおにぎりは私が作りました。以前柴田家の料理人が作ったのを真似させてもらいました」
今回は保険を掛けて先に先手を打っておく。柴田さんの料理人の真似と言われれば怒られる事もないだろう。
「殿!!これは何とも見事な料理ではないですか!」
「そうそう!この見た事もない物ばかりですが何とも食欲がそそられる香ばしい匂いがしております!」
「ワシはっ!ワシはこんな物になんか・・・・」
森さん丹羽さんは概ね良い反応だが、また滝川さんだけ・・・・・。
「とりあえず早速食べてみよ。そして率直な感想を述べよ」
そこからはオレが自然とドヤ顔になってしまうくらいの美味い、こんな物食べた事ない、城の料理人が作れたのなら我が家でも作れるのか、どんな味付けをしておるのかとか言いながら30分もしない内に皆食べ終わってしまった。
「皆食べ終わったみたいだな。して、どうだ?恒興、述べてみよ」
「はっ。この料理見た目も然る事ながら、味も一級品です。南蛮の料理と言われれば某は分かりませぬが、初めて食べる物ながら自然と次へ次へと箸が進みました」
「可成!」
「はっ!池田殿の言に付け加えるのならば剣城殿が未来から来たという件は嘘ではないと思いまする」
「左様。某はまだ直接剣城殿とは話もした事もありませんが間違いないかと」
「保守的な信盛までもそこまで言うのは珍しいな」
「一益!」
「はっ。こんな珍しい料理、作物だけで判断するのは些か早計やもしれませぬが某に同じ事をせよと言われましても出来ないのも事実。
飯だけで同盟は変わらぬと思いますが、松平の小倅に格の違いを見せつけるのには良い手かと」
「ふん。であるか。まずは此奴に此度の事で褒美を渡さんといかん。咳病の事然り、この奇天烈な料理の食材を此奴は1日で蔵一つ使うくらい献上してきおった」
何をくれるのかワクワクしながらオレは聞いていた。
「まず咳病の件に関して銭10貫を褒美とする。大小一振り、感状を此度の農業の褒美とする。それと此奴を勝家預かりから任を解き饗宴及びこれらの材料を生産する任務を命ずる」
いやいや、信長さん?オレ農業初心者なんですが・・・?あの、全て例の金色のニワトリの鶏糞のお陰なんですが・・・。
それに刀とかは素直にお金になるから嬉しいけど感状て・・。要は手紙だろ!?・・・・・・まさかっ!!!!信長の手紙、売れるのか!?!?
「何ぞ、貴様不服か?」
「あっ、いえいえ感状が嬉しくて色々考えてました!!饗宴が何かは分かりませんが農業の事は頑張ります!目下色々な作物を既に植えてると思いますので近々また皆さんに披露できるかと。
その時はまた皆さんにお裾分け致しますので利用方法も教えますので期待していて下さい」
「ほーう。ワシに啖呵きるとは良い度胸だな。なら珍しい野菜じゃなく白い米を1番に作れ。今日の握りは格別に美味かったが貴様が以前ワシに食わした米と比べたら食えたもんじゃない」
そう言われオレはなんとか脱穀する機械を格安で探そうと思い城を後にしようとしたら・・・・オレは柴田さん預かりじゃなくなって家無しじゃん!!と気付いたら信長さんから声を掛けられた。
「お主の家を作る様に手配しておる。それまで城で寝泊まりしろ。その代わり飯は台所衆に教えておけ。お主らも異論はあるまいな?」
信長の強烈なプレッシャーに家臣一同頷いていた。
うん。これはあれだ。毎日あれ作れこれ作れ甘味はまだかとか言われるんだろうな・・・。
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