島津貴久の来訪

 本来、織田軍の強さは銭のお陰だったと思うだろう。生憎、オレは熱田には行った事ないが、津島と熱田。この2つの水運業が織田家の財政の、トップを占めていたと思う。


 だが、今や津島よりも熱田、改め那古屋での税収がダントツで1番だ。


 まず何と言っても人の多さだ。漁師や海人さんなど、相当な人が那古屋に移住している。


 養殖業としては、ワカメ、海苔、ハマチ、鯛と何でも試している。陸では剛力君筆頭に造船業もかなり盛んだ。


 主に、国友一派は武器制作がメインだ。そして、家電とまでは言わないけど住民の快適な暮らしの為の、便利グッズなどは芳兵衛君がメインだ。そして、量産型の船や防衛設備に使う大砲などは、加藤さん一派が造っている。


 そして芳兵衛君は、たまに突拍子もないような物を作る。


 本人は暇潰しと言って、超超巨大スナイパー銃を作っていた。


 基本、夜に海へと出るのは禁止としているが、それでももし、どこかから攻められてもいけないので、夜海戦の演習は九鬼さん指導の元、度々行っている。


 その寄港地として那古屋港だ。オレが農業神様にお願いして・・・。


 「最近はめっきり注文しなくなり、面白くないんだなぁ」


 と夢現つに現れたため、思い浮かんだのが灯台だ。


 那古屋港にある灯台・・・信長さんが一目見ただけで、那古屋エレキテルだ!と命名したものだ。


 確かエレキテルとは、江戸時代にオランダから伝わった、摩擦起電機の事を言うと思うのだが、一体どこでそんな言葉を覚えたのか・・・。


 ちなみにこの灯台・・・。


 《海の道標 灯台》


効能・・・その光は300キロ先まで見えると、識者の間では言われている。海神監修の元、レンズにミスリル鋼の濁りを取り使用する事で、太陽光の光を内部に溜め込み放出する事が可能になり、神許庁に出願している。


 これを見た瞬間に特許ですね。と思った。相変わらず、たまに出る識者とは誰か知りたいとも思う。


 まぁその灯台の横に小屋を建てて、警備員を1人常駐させるようにしている。そこに例の超超巨大なスナイパーも装備してある。もし敵がここに来ても一撃で沈没させる為にだ。まぁそんな日が来ない方がありがたいけど。


 「うむ!見えた!あれぞ父御の船だ!」


 その灯台がある港にオレと義弘さんは来ている。勿論、貴久さんを出迎える為だ。朱華さんは約束の通り、薩摩との定期船を行ってくれている。


 この仕事が終わり次第、明に旅立つとの事。オレは戻って来てくれると信じているので、何も気にしていない。


 船団は10隻程だ。朱華さん達の船は芳兵衛君達が造った例の船だ。


 後は貴久さん達に渡した船は、言葉は悪いが量産型だ。エンジンも朱華さん達に渡した船より少し小さい。燃料の石炭は、全てGarden of Edenで購入したものだ。


 ちなみにこの石炭は定期購入している。


 オレが何回も何回も購入していたら、例の球体様が『定期購入にすれば便利』と言ってくれたからだ。7日に一度、那古屋でも1番警備が厚い織田水軍の兵舎にある倉庫に、配達されるようにしている。


 一度の配達で、アースガルド産、石炭1キロあたり20円だ。これを1回1000キロずつ購入している。


 船は貴久さんに限らず、織田家の名のある武将、文官誰しも欲しがる為、差別するのは悪いから皆同じ量産型だ。剛力君が相変わらず毎日忙しくしていて、人により装備品が異なる。


 佐久間さんなんかは、船の中に畳を敷いてほしいとか、木下さんに関しては大砲などの設備より、調度品に気合を入れているみたいだ。


 オレの家臣達のお陰だから、オレは一切この話に関与していない。むしろ剛力君がメインとなり、している仕事だ。


 その量産型の船団が大きく見えた頃、どの船に貴久さんが乗っているのかはすぐに分かった。1隻だけ木彫りの熊?の彫り物が、デカデカと装備されてある船があるのだ。


 何故、熊なのか問いたい。間違いなくあれに貴久さんが乗っている筈・・・。


 「お〜う!義弘、久しぶりだ!剣城殿!息災なようでなによりじゃ!これほど大きく速く動く船があるとは、驚きである!漕ぎ手も必要ないとは正に・・・いや、何でもない」


 いや言えよ!正に・・・その次は何なんだよ!?気になって眠れないじゃないか!!


 「剣城君。すまぬ。父御はたまに話をやめることがあるのだ。あれは驚いている時によくやる癖なのだ。許せ」


 義弘さんが耳打ちで教えてくれたけど、もっと気になるじゃねーか!


 「相変わらず人が多い。織田殿と文を交わしていたが、まさか此程とは・・・」


 「岐阜はもっと多いですよ。とりあえず岐阜に案内致します。貴久様は特別に自分の乗り物にて案内致します。こちらへ」


 オレは用意していた大黒剣の横に乗せた。


 「な、何じゃ、これは!?」


 「特別な乗り物ですよ。あ、ヘルメット被って下さい!」


 「お、おう。こ、これか?こうか?」


 「はい!それで大丈夫です!義弘さんは後で来ますか?一応、配下の金剛君に言って馬車は待機させてますよ」


 「うむ。兵児が全員降り、この混乱から立ち直れば向かう!」


 うん。確かに薩摩人達はかなり驚いているな。これまたアルバイトで雇った、臨時の出迎えの人達に驚いている。


 「キャ〜!島津様!!!」「島津様!!カッコイイ!!!」


 誰か分からない女の人達だけど、薩摩人全員島津だと思っているのかな?そこまで言えとは指図してないんだが!?


 ちなみに、この那古屋で色々な仕事を生業としている人達・・・今日はバイトという事で大判1枚で雇った訳だが、兵の人達に露店で仕事をしてる人達が、自分で作った自慢の料理を渡している。


 これに関しては露店の人達から『俺達が作った飯が外国に通じるか試したい』と言っていたので許可したのだ。


 「島津様!あたいが作った秘伝のタレ焼き鳥をどうぞ!」


 「島津のお武家様!オラの母ちゃんが漬けた秘伝のタレのイカ焼きです!」


 「これは秘伝のブリの照り焼きです!」「これは秘伝の………」


 活気が有ってよろしい。ちなみにこの秘伝、秘伝と言っているのは、オレが『露店でも開いたら儲かるよ!』と言ったところ、人が殺到した為、どうしても教える料理に限りがあるので、被ってしまうお店が出る訳だ。


 だからその人達独自の味を出して『秘伝の味○○家!みたいにすれば特徴が出ていいと思うんだ!』と皆に伝えたところ、どのお店も秘伝のタレとか秘伝の味!と言うようになったのだ。まぁこれはこれでありかと思う。


 「い、いや、相すまぬ。今は任務中にて」


 流石、生え抜きな選抜隊だ。絶対に美味しそうに見える筈なのに、食べていない。


 「剣城殿?あれは剣城殿が考えた事か?」


 「いえ。あれは露店を生業としている人達が自分達で、『薩摩人達にも美味しいと言ってもらえるか確認したい』と言っていたので、許可しました。よろしければ食べる事、許してあげてもらえませんか?」


 「うむ。そういう事か。ならばそうしよう。皆の者!長旅という程ではないが御苦労!織田殿の民の好意、受け取って良い!その代わり受け取った物を嫌いだから、と残す者が居れば斬首だ!」


 いやいや、怖ぇーよ!何で食べれなかったら斬首なんだよ!?


 「うむ。殿から許可が出た。実はこの匂いに我慢ならんかったのだ・・・美味いッ!!何じゃこれは!?こんな物食べた事がない!!店主!これは何と言うのだ!?」


 「これはカサゴの煮付けです!」


 「いと美味し・・・」


 よし!とりあえず、これでいいかな?よし!オレは貴久さんを城に連れて行こう。城の出迎えは万全の筈!森さん!木下さん!後は慶次さん!頼むぞ!

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