酒の力
「貴様!料理人ではないな!?誰だ!市!これはどういう事だ!?」
「・・・・・・兄上・・・だと思います」
「え!?義兄上殿・・・ですか!?」
「剣城!もう良い!下がれ!!クハハハハハ!良い劇を見させてもらったぞ!ワシが織田信長じゃ!まずは変装して現れた事を謝ろう。警備がザルじゃな。これがお主を狙う六角の刺客なら、首と胴が離れておったぞ?」
「貴様!浅井を愚弄しておるのか!!」
「浅井久政殿とお見受け致す。今、ワシは義弟と話しておる」
「ぐぬぬぬぬぬ」
おいおい!威厳だけで周囲を信長さんのペースに持ってきてるよ!?これが本物なのか!?
「ワシの文句は後で受け付ける!だがまずは、このうえでぃんぐけーきとやらを食わないか?」
「な、何を・・・いや、すいません。皆の者!取り乱して済まぬ。いただこう」
「新九郎!貴様!この流れが分かっておるのか!!?織田は我らを愚弄しておるのだぞ!?」
「いい加減にしなされ。この前代未聞な事をするお方が義兄上殿だ。何か理由もあるのであろう。俺はその理由を知りたい」
信長さんは素知らぬ顔で、ウエディングケーキを食べてるよ・・・。
「甘くて美味いな!果物も良い物ばかり使っておるな!浅井の者も遠慮せずに食え!早うせぬとワシが全部食らってしまうぞ?」
何呑気な事言ってんだよ・・・。
「甘い・・・そしてなによりも美味い・・・」
「義弟殿よ?良ければ別室にて語らわんか?二人でだ」
「ならぬ!新九郎!それはならぬぞ!」
「良いでしょう。遠藤?お前の考えを知りたい。俺を信じ、ついて来てくれるのであれば・・・先代を退出させろ」
「・・・・・はっ。どんな場所にもついて参ります。久政様、どうか・・・」
「離せ!」
「義兄上殿、こちらへ。他の者はケーキを食べておけ!全部は食うなよ!?市も疑って済まなかった」
「新九郎様・・・・」
チッ!お市さんの目は完璧にハートになってるわ。
オレと大野さんはこの場に残されたけど、どうしよう。アウェーだよな・・・。
「芝田殿?」
「三田村様。騙した形になりすいません」
「いや、その事は織田殿に口止めされてたのだろう?某は織田の事を信用しておる。あの歓待に嘘はないと思っておる。そんな事よりこの開け方を教えてもらえぬか?」
案外わざと気にしてないフリをしてくれてるのかな。浅井の将なら気にしない訳ないもんな。
「三田村様?ありがとうございます。ウイスキーですか?岐阜で飲まれませんでした?」
「織田殿はどうか分からぬが、浅井の者は血の気が多い輩が多いんでな?これはウイスキーと言うのか。いや、実は織田殿に見せてはもらえたが、飲ませてはもらえなんだ」
いやなんで信長さんは自慢だけしてるんだよ!?飲ませてやれよ!?そんな高いウイスキーじゃないぞ!?
「すいません。この蓋を左に回して・・・三田村様?少々お待ちを。すぐ戻ります」
オレは台所に行き、また人払いを済ませ、家康さん達と同盟の時にプレゼントした割れないグラスを購入する。
《割れないグラス4色セット×10》¥72000
それを持ち素早く部屋に戻る。
「酒を入れる湯呑みを忘れてました。どうぞ。ガラスで出来ていますが割れないので今後も使えますよ。私から皆さんに贈答します」
「見た事ない湯呑みだがこれは・・・」
「4色ありますのでお好きな色をお取り下さい。そして私がウイスキーを注ぎましょう。大野さん?氷をお願い出来ますか?」
「はっ。少々お待ちを」
「氷・・・!?氷と申したのか!?」
「皆の者?もう良いではないか。このように織田殿は、我らも知らぬ物を作ったりしておる。ここ近江も尾張に負けぬ様にすれば良いではないか」
「おい!三田村!お主は何一人で纏めておるのだ!」
「そうだ!そうだ!貴様は小姓であろうが!」
なんか遠藤さんみたいな言われ方だな・・・。
「剣城様。お待たせ致しました」
「おっ!?誠、氷がそんなにも!?」
オレは驚いてる人を気にせず一人二かけらずつグラスに入れウイスキーを注いだ。
「何じゃこの酒は!?効くぅ〜!」
「酒精が強いな!これはういすきーと言うのだな!?」
「誠、この酒に似合う湯呑みだ!こんな凄まじい物を我らにくれると言うのか!?」
「はい。一人一つずつはあると思いますので、どうぞどうぞ!」
「この酒はどこ産なのだ!?京か?」
「ワシはちと辛いのう。そちらの方を飲んでみたい」
「こっちですか?どうぞ。これはワインと言いまして・・・飲んだ方が早いですね」
「うむ・・・。甘い・・。こっちの方が飲みやすい!」
この人は名前は知らないけど、あまり酒が強くはないのかな?
「酒は色々お待ちしましたので、試してみて下さい!そして、飲みたい時は美濃改め岐阜に来ていただければ、買う事も出来ますよ!」
さりげなく商品の紹介もできたな!皆こぞって買いに来てくれる筈だ!
「お〜い!芝田殿!?ちゅーはいは甘くて美味いのう!」
「ヒック・・・。いやいや、やはり焼酎だ!雑味の無い味だ!」
「梅が漬け込んである酒の方がワシは好みだ!」
「誰もお前の好みなんか聞いておらぬ!!」
変な空気だったのが酒が入り少し溶け込め、浅井の人達も酔い始めた感じになり、オレにも余裕が出来たのでお市さんの方に向かう。さすがに咎められるかと思ったが、案外、何も言われなかった。
「お市様、本日はおめでとうございます。そして騙した感じになり申し訳ありません。これをどうぞ。先程撮影した写真です。後日、額縁に入れ拡大したのもお待ちしますね」
「剣城は知っておったのか?」
「え!?何がですか?」
「兄上が来る事じゃ」
「すいません。最初からそのつもりでした」
「だろうな。肝の小さい剣城がこの様な事する筈が無かろうな」
いやさり気なくここでも毒吐くなよ!?肝の小さいって・・・。
「もう構わぬ。妾は浅井ぞ。妾達が長く話すところを見せる訳にはいかぬ」
「すいません。ケーキ・・・ご堪能下さい。ゆきさん?お市様のお色直しとかもよろしくね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます