剛力の武衛陣 魔改造計画
「そこに直れッ!!!可成ッ!!!お前が着いていて何故こうなる!!己等全員が食いやがったのか!?」
朝から信長さんは激怒している。
「義弘・・・お前も分かっているんだろうな?織田軍に混ざって、人様の飯を平らげるとは行儀がなっていないようだな?おいは常々言っていたよな?飯を人様から奪うなと」
義弘パパの貴久さんも何故か怒っている。いや、何故かといえば昨夜のバーベキューだ。
「ワシは何も味がせん、薄い京料理で我慢していたものを、己等だけあの美味いタレの飯を食いやがって!!」
昨日したバーベキューに、信長さんを呼ばなかったからだ。高槻城の本丸から離れた二の丸でやっていたのだが、気付けば柴田さんや森さん、蜂屋さん、羽柴さん、丹羽さんと、ほぼ主要な織田軍の面々が食べに来たのだ。
その後は義弘さん達、薩摩の人が酒飲み大会のような事になり・・・今に至る。遠藤さんにも食べさせたのだが、どうやら遠藤さんからニンニク臭がしたみたいで、そこから勘付いたようだ。
「剣城ッ!!お前は何回言っても分からん奴だ!あれはカレーの時じゃ!あの時は・・・・・新作料理を作った時の・・・・あれは鍋の時だったな!?ん?あの時も・・・・ケーキを作った時も遠藤と食っておった・・・・(チッ)」
いつもの説教だ。こうなれば誰も何も言えない。ただただ俯いているしかできない。だが、オレはこんな時でも信長さんの扱いを分かっている。
「信長様!それと貴久様!義弘様達、薩摩の人はオレが誘いました!すいません!あと、よければこれを御賞味下さい!新作の砂糖たっぷりの、柔らかいクッキーでございます!」
「ワシがこんな物で──美味いではないか!!ふん。今回はこれで勘弁してやろう。今一度言う。次は皆で食う時は必ずワシにも伝えろ。いいな?」
「南蛮菓子より甘くて美味い。剣城よ。我等、薩摩兵児は人様の飯を食らう事は良しとせぬ。此度は誘ってくれたみたいだが、次があるなら書面で呼んでくれ」
いやいや、どんな軍だよ!?島津家の人とは普通に飯も食えないのか!?
オレ達も含め、主要な者は清水寺に出向く。まず驚いたのは観音像だ。そして、清水の舞台から飛び降りるとはよく言ったものだ。現在の清水寺とは違い、そこそこの軍に攻められても守れるだろう、と思うくらい要塞化してると思う。
住職の人に案内され、ここで森さんや蜂屋さん、柴田さん達とは別れる事となる。
「なんかすまんな。警備隊の任務、励めよ」
「いえいえ。森様や柴田様、蜂屋様の御活躍で大変助けられました」
そこから未だに謙遜ばかりする坂井さんを連れて、後は義弘さん及び配下の人50名程を選抜して、元尾張守護 斯波家の京都での邸宅の、武衛陣を目指す。
「将軍が住む屋敷を建てる!場所は武衛陣を使え。早急に建築せよ!」
と、信長さんに言われた。
オレ達甲賀隊は武衛陣まで戻り、まずは剛力君を使い、大膳君が清洲の村より木材の輸送、国友さん配下の人を数名呼び寄せての簡易炉を作り、鉄門を製造と一気に動き出した。
間取りや外観なんかは剛力君任せだから、これまた難攻不落の邸宅になるだろう。
一方、残りの人達は洛中での警備だ。
「本当に容赦しなくてもいいんだな?」
「えぇ。信長様にも言われましたので」
そう頼もしく言ってくるのは義弘さん達、薩摩の人だ。信長さんの名前とオレの名前を使い、各軍の将の人に今一度、乱取り、狼藉、盗み、女遊び禁止!と伝えたのに下っ端の人は言う事を聞かない。
小川さんも含め、日に20人程処罰されている。
「がははは!我が君!本日は5人程、成敗致しましたぞ!」
「いや、小川さん!?一応元は一緒に戦った人達だからね!?」
「そう言われましてもな・・・。女が居ないのは、ちと寂しい気持ちは分からなくもないですが、飯もあるというのに民相手に乱暴するのは、宜しくないですからな!」
「剣城殿?」
「はいはい。坂井様?どうされました?」
「某が警備隊の頭というのは・・・」
「うん?そりゃ、当たり前でしょ!?数々の城を短期間であんなに落として、あの我(が)が強い美濃の人達を使いこなし、信長様からの覚えもいい坂井様を、遊ばせる訳ないでしょ?」
「あ、いや・・・そんな事は・・・某は梶川殿に・・・だから責任を取り更迭させた方が、軍の規律にも良いかと・・・」
「あぁ〜、その事ね。あれはオレのせいだから、坂井様は気にしなくていいですよ。オレがちゃんと全体を見えていれば、あんな事起こらなかった訳だし。とにかく!坂井様は足軽を好きなように使い、なんならオレの甲賀隊も使っていいから、徹底的に取り締まって下さい」
「はぁ〜。分かりました」
何故だ・・・何故、『お前なんかもう要らん!後方に下がれ!』と言ってくれないんだ!!オレは美濃に帰りたいだけなのに・・・。俺がやる事する事全て裏目に出ている・・・。こうなりゃ、本当に何もせずに居てみようか?そうすれば『お前みたいな無能は使えん!帰れ!』と言っていただけるだろうか。
「剣城様!京人の家々は散々な状況です。ここは我等、甲賀隊の腕の見せ所では?」
「うん?剛力君は家建てたいの?」
「はい。今までは長屋が当たり前でしたが、マンションのような住宅を建てると、土地も余裕が出来ていいかと」
「いや、それはいいけどさ?武衛陣はどうするの?あそこもまだ何も出来ていないよ?」
「武衛陣に関しましては今日より手を付けます。予定では2日で強固な屋敷が出来上がるでしょう」
「2日!?2日で出来るの!?流石、剛力君だ。まぁ、やりたいようにやりなよ」
「はっ!ありがたき幸せ!では・・・早速!御免!」
「我が君!本日も10人程、賊を退治しましたぞ!」
「はいはい!小川さんもお疲れさん!」
「小泉、戻りました!今日は11人退治しました!」
「なっ・・・伝七郎!嘘を申すな!ワシより数が多い事なぞありえん!」
「ふん。俺はお前と違って裏道を見張っているからな!」
「クッ・・・」
「はいはい!いつもの張り合いはいいから!じゃあそろそろ食べ物の配給といこうか。大膳君!」
「はっ!荷車に米と漬け物、塩漬け肉、各種野菜類、魚の干物、酒や醤油も相当数運んできました!既に用意してあります!」
「流石、大膳君だ!岐阜の方はどんな感じ?」
「はっ!何も変わりなくです!ただ、甲賀の皆は剣城様が帰られるのを、心待ちにしております!」
「へ!?何で!?」
「なんでも、新作料理のイチゴ肉飯や梨とキュウリの酢の物を、御賞味していただきたいとか。俺の配下は新作の着物、ジャージ、ダウンジャケットなんかを試着していただきたいと。塩屋殿の方も上杉、武田だけではなく最近では津軽家、南部家、最上家にも出入りしているようで一度、売る物の精査をしていただきたいと」
いやいや、イチゴ肉飯ってなんだよ!?聞いただけで吐き気を催しそうなんだが!?服はまだ分かる!塩屋さんは上杉にぼったくりなくらい、利益出してる筈だろ!?それなのに更に販路を広げてどうするんだよ!?津軽家って青森だろ!?どうやって移動してんだよ!?
「そ、そうか。次に帰った時にでも食べたり試着してみるよ」
「はっ!皆に伝えておきます!」
「まっ、まぁ、とりあえず行こうか」
「さぁ!皆の衆!今の内だ!!剣城様が出られた今こそ好機!」
「よっしゃ!剛力殿!ここは京の剣城様の邸宅にもなるのですよね!?」と国友衆の1人。
「その通りだ!最初こそ将軍御所となるだろうが、将軍にはすぐに別の場所に、御所を建てる手筈になっている!おい!そこの者!早く目隠しをしろ!誰かに見られたらどうするのだ!次!外壁に隠し扉を計画書通りに作れ!そこには国友大筒砲を備え付けるのだぞ!」
「剛力・・・お前・・・」
「なんだ。金剛か。剣城様に着いて行かなくて良いのか?」
「小川の爺やが着いて居る。それに坂井様も慶次殿も一緒だ。ミヤビもどこか近くに居るから俺は構わない。それにしてもこんな事して良いのか?」
「うん?良いも何もさっき『やりたいようにやりなよ』と言っていただいた。だからやっているまで。それに将軍の御所に最初はなるのだ。やり過ぎて損はないだろう?それに将軍に喜ばれると、引いては剣城様まで褒められるのだ。手は抜けない」
「そうか・・・。ならいいが・・・」
「どうしたのだ?」
「いや、どうせやるなら・・・剣城様には完成してから見せた方が、喜ばれるのではないのか?」
「だから今、急いでいるのだ」
「分かった。なら今日はここに近寄らせないようにしよう」
「おっ!助かる!」
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