間話 剣城の家紋

 「岡部さん!そこらへんで大丈夫ですよ!!」


 「うむ。だがこれだけじゃどうも派手さが無い。もっとこう・・・織田家に相応しく、気高く、誇り高く見せつけねばならない」


 いやこれでいいだろ!?この人は何を求めてんの!?


 今オレ達がしている作業は時計台を作っている。そう。岐阜の町の真ん中にある広場に無理矢理作っているのだ。


 時計は、農業神様にお願いし正確な太陽暦を制定する為、それを強制的に皆に覚えてもらう為に、超デカいソーラー時計を特注で作ってもらったのだ。


 「太陽神と言えばホルスですよね!?ホルス様って居るのですか!?」


 「我が兄弟は勘違いしてるのだなぁ。世界各地に人間に伝わっている神に色々名前があるけど、元は一つなんだなぁ」


 「うん?では、各地で呼び名が違うだけってことですか?」


 「簡単に大まかに言えば太陽神の権能を持った、ホルス、ラー、天照大神と居るのだなぁ。けど太陽神と言えば太陽神一人しか居ないのだなぁ。神とはその物、事象において絶大なる権能を放ち、能力に長け神格がある者を指す」


 と、意味の分からない事を言われたので、オレは他の神については聞かない事を決めたのだった。


 「まぁこの話はまた別の機会で言いたいんだなぁ。そしておすすめはこれなんだなぁ。これは時間、日付け、曜日まで出る時計なんだなぁ」


 と用意してくれた時計は5メートルくらいある、まん丸の時計で別にコードで繋がっていて、そこにソーラーパネルが付属している作りだった。時計の下に現代でよく見た数字でも時間が示されている。


 《神様印 巨大時計》¥100000


効能・・・・10万年に1秒しか狂わない時計。基本ソーラーパネルにより動き、動力が足りない場合は時計下にあるネジを回せば動く。識者によると、摂氏プラスマイナス157℃まで耐える仕様。


 という時計を購入して今に至る。


 「そうじゃ!このそーらーぱねる?を設置せねばならぬし、この横にお主の家紋でも入れぬか?織田木瓜紋を中央にし、ワシは熱田の宮大工出身だから五七桐竹紋を彫ろう。お主はどうする?」


 家紋なんか決めてないけど!?けど家紋ってカッコいいよな!?


 「ありがとうございます。1日、2日で考えますのでお待ち下さい!」


 と言い、岐阜に引っ越してきた皆とオレの家で会議を始め、主に小見様に風水的な事や哲学的な事を言われ納得してしまったり、慶次さんなんかはオレが思う物で良いと言われたり、迷いに迷った。


 「拙僧は、剣城殿のお名前にある漢字を家紋にしても良い、と愚考致します」


 「うん?剣と城って事?」


 「そうですな」


 「おっ!さすが沢彦和尚!良い事言うではないか!」


 「ではデザインはワシに任せてもらって良いですな!?あぁ〜!なにも剣城様のお手を煩わす訳にはいきませんからな!?がははは!」


 結局は剣と城をモチーフに、他家に無い家紋にしてくれる事に。沢彦さんの助言と剣の角度なんかは、小見さんが監督してくれると。手配は小川さんがしてくれ、国友さんが木板を用意してくれる事に。


 「何がなにやら分かりませんけどお願いします」


 と、あっと言う間に決まり、オレは人生初の家紋を作ってもらう事になった。


 当たり前ではあるが町行く人、往来の人、商人の人など、オレの家紋を見てあの家紋はどこの家の人だ、など色々聞かれ、答える人は皆『剣城家』『剣城家』と言い、いつしかオレの名字は芝田なのに、剣城家と勘違いする人が現れるが、それはまた別の話。

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