竹中半兵衛と決着

 「ははは!いきなり現れて悪いね!今日は斎藤の将としてじゃなく──」


 「黙れッ!!!」


 「ははは!私は嫌われてるのかな?丸腰の1人に貴方は剣を抜くと?」


 「そんなの関係ねーよ!」


 「おー怖い怖い!そうだね〜。私が今日は貴方達の味方と証明できれば信じてくれるかな?そして少し話なんか出来ないかな?」


 「そんな事どうでもいいッ!舐めるな!」


 「大局的に物を言いなさい。私の今から言う事は必ず織田軍に有利になる事です。それを将の1人が個人的感情でそれを潰すのは愚の骨頂ですよ?」


 涼しい顔して言いやがって!オレは落ち着いてるつもりだがやはり竹中の前だけは感情が昂ってしまう。金剛君、ゆきさんが、竹中の首に短刀を突き付け、隼人君は1番に銃口を竹中に向けているのに平気な顔しやがって!こいつは何なんだよ!


 「剣城?お前も刀を仕舞え。武士の恥だろうが素振りをして仕舞え」


 気付けば練習でしか抜かなかった刀を・・・お市さんから頂いた鞘に織田木瓜紋入りの刀を抜いていた。

確か武士は一度刀を鞘から出せば振り下ろさない限り仕舞うなとか慶次さんが言ってたな。なんで恥なのかはこの時代の生まれじゃないから分からないけど。


 確かに竹中を見ればイライラする。今でも千吉さんや源蔵さんを思い出す。だが死んだ人は生き返らせられないと以前農業神様も言っていたし、いつかは踏ん切りを付けないといけないのは分かってる。分かってるけどどうしても何か落とし前を付けさせないと収まらない。この先この竹中半兵衛が織田軍に来る事で飛躍的に強くなる事は分かる。この時代のリアル諸葛孔明だもんな。現にGarden of Edenの装備を2回退けてる訳だし。


 「クソがぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜ッッッ!!!!!」


 ブゥォ────ンッ!!ガンッ!!!


 オレは思いっきり地面に刀を振り下ろした。自分でもビックリするくらいの風切り音と地面に刀が当たる音が鳴ったと分かった。その事に竹中半兵衛は表情を変える事なくこちらを見据える。


 「竹中ッ!オレもあんたの兵を殺した!あんたの兵もオレの友達を殺した!戦だからしょうがないとは思う。だがこのままではオレの気が落ち着かん!そこを動くなッッッッ!!!!!」


 オレは千吉さん源蔵さんの事を忘れる訳ではないけど、ここで一つの区切りをつけるつもりで思いっきり竹中半兵衛の右頬を殴った。竹中なら避けれたであろうが敢えて避けなかったように思う。


 「気が済みましたか?」


 「剣城!それまでだ!竹中何某も一応身を改めるぞ」


 オレは慶次さんに軽く肩を2回ポンポンと叩かれ陣の方に誘導される。


 千吉さん、源蔵さん、貴方達の思う結果ではないかもしれませんがここで一つの区切りにさせて下さい。忘れる訳ではありません。ちゃんと肉もコーラもお供えします。どうか安らかに・・・・。



 それから慶次さん達が竹中の身体検査をして本当に何も持っていなく、供の1人も居ないみたいでオレ達の陣に案内した。


 「野田さん、申し訳ないけど竹中氏に甘めのコーヒーを出してあげてくれる?」


 「畏まりました。殿もコーヒーで?」


 「それでお願い。城の方の確認は怠らないように。一斉に城方が出てくれば遠慮なく野戦砲をぶっ放していいから。焙烙玉も遠慮なく使うように。あっ、くれぐれも馬舎は壊さないようにしてあげて。ノアが何か色々言ってるから」


 「畏まりました」


 「ほっほっほう!中々具合の良い陣ではありませんか!?美濃の本家より良いですな?それに何気ないこの床几、軍配旗、配下の統一された装備・・・。貴方の織田殿からの信頼が現れていますね?」


 「おい。俺はまだあんたを信用した訳じゃない。俺の殿があんたを殺さない。織田に有益な情報を渡すと言うから陣に案内したまで。俺は殿みたいに甘くはないぞ」


 「おぉ〜!怖い怖い。前田慶次殿だったかな?先程から殿の周りを囲んでいる配下の者も絶妙な立ち位置。少しでも近付けば瞬時に私の首が千切れてしまいそうですね。ほほほ」


 「・・・・・・・・・・・・」


 「さて・・・。こんな雰囲気になるとは思ってませんでしたがこれから私は織田軍の軍師としてお話ししましょう」


 竹中半兵衛が言い出したのは稲葉山城には抜け穴が2つあるらしく、その抜け穴は斎藤龍興とその側近しか知らない道らしい。長良川に出るように作られてるらしく、2つの内の1つを竹中半兵衛は知っていると言った。その抜け穴から入ると出口・・・城からは入り口だが第一曲輪に通じているらしく、その曲輪の横は斎藤家の居館の隣でそこは斎藤道三の頃から歴代当主が寝泊まりしてたが豪遊好きの龍興は城の大広間、軍議を行う場所や様々な部屋で女を並べ酒を飲み酒池肉林を行っているとも。


 「ぐぬぬぬぬ!!!斎藤龍興がッッッッ!!!!お、おん女をはべらかせ酒を飲み、乳繰り合っているだと!?許さん!許さんぞ!!!」


 「剣城様、どうされましたか!?そんなに斎藤家が憎いですか!?」


 「金剛君は分からないか!?」


 「剣城はまだだからな。俺にはお前の気持ちが分かるぞ」


 「なに!?慶次殿も剣城様の事が分かると!?」


 「がははは!確かにそれは憎いですな?な?我が殿!?がははは」


 「小川殿も分かると!?ドントシンク…ドントシン…ドントシ…」


 「続けて良いですかな?あっ、配下さんどうも。この茶色い水を飲めと?うん?甘いと申すか?」


 「まあ、見慣れない物は飲みにくいでしょう。私が毒味します。うん!美味い!水出しコーヒーでしょう?これを誰が煮出しました?今回は小泉さん?なら小泉さんはバリスタの称号を出しましょう!今回のコーヒーは合格です!」


 「おぉぉぉぉ〜!!!殿から合格が出たぞ!!!」


 「小泉殿!我も晩餐の折はお呼ばれしたいですな!?」


 「変わった軍ですね。上と下の者が区別無く和気藹々と。そのばりすたと呼ばれる称号は織田家では特別なものですか?」


 「いや、別にこの飲み物を誰が1番美味しく作れるか勝手に配下の者が競い合ってただけですよ。それで1番美味く作れた人に好きな物あげると言っただけですよ」


 「ほほほ。面白いですね。では私もその小泉殿が作った物を飲んでみましょう・・・・・・。あまい・・・?甘い!?この茶色の水が甘い!?何故!?何故ですか!?」


 ふん。稀代の軍師と呼ばれようが所詮は昔の人だ。甘い物と酒を出しときゃこの時代の人は驚くよな。


 「参りました!降参です!この飲み物の作り方は想像が付きませんね。っと・・・この事はまた後程教えて下さい。それで先の続きですが、この貴方の隊で抜け穴を通り城の前に布陣します。今の当主は戦の“い”の字も知らぬお坊ちゃんです。頼みの稲葉殿も安藤殿も氏家殿も織田に降っていると存じております。周りに居る側近は役に立たないでしょう」


 「我らがその抜け穴を通り敵に挟まれる可能性が残るが?」


 「そこは私を信用してもらう他ないかと。現に私が斎藤家側なら今の内に城から攻め、少数の貴方達を瞬殺しますね。ですが、何も仕掛けて来ないし兵の配置すらせず剰(あまつさ)え民に矢弾の盾となる様にする方だ。そんな卑怯で臆病な人には仕えるに在らず」


 「我らを瞬殺だと!?」 「ほ〜う。竹中氏は我らを簡単に倒すと?」 「がははは!この竹中何某は面白い事を言う・・・」


 ガンッッッッッッ!!!!!!



 まぁ、言ってる事は分かるけどな。オレが相手側でも100にも満たない軍なら今の内に仕掛けるよな。ただ、よりにもよって芝田隊のバトルジャンキー1位2位3位が居る中で瞬殺と言うか・・・。オレ止められるだろうか・・・?小川さんは方天戟を地面に叩きつけたぞ!?すっげー音が鳴ったぞ!?


 オレは何となく思い付いて手を横に出し、味方を制する仕草をしてみる。一度やってみたかったポーズだ。現代のアニメとかである敵役の親玉がするような感じだ。オレは深く息を吐きスッと手を横に出す・・・・・。


 「がははは!殿もやる気だぞ!小泉!遅れを取るなよ!?」


 「当たり前だ!敵はただの1人ではないか!」


 いや小川さん!?どこがやる気なんだよ!?これは明らかに止める仕草だろ!?


 「これはこれは言葉が過ぎましたね。謝りましょう。申し訳ない」


 オレは自分がしたかったポーズだったが物凄く後悔した・・・。


 

 「小川さん、小泉さん座って下さい。オレは竹中さんの話を信じましょう。それに信長様の本隊が来れば根斬りになるかもしれません。無関係ではないですが民の人達も死ぬかもしれません。私はそこまでしたくないです」


 「流石、我が殿!それでこそ我が君です!」


 小川さんの御眼鏡に叶ったらしく我が殿から我が君にレベルアップしました。どうもありがとうございました。


 「やはり良い軍ですね。面白い?楽しい?初めて貴方達と話をしましたが昔から知る友のような感じがしますね〜。次仕えるなら貴方達みたいな人と一緒に働きたいですね」


 「がははは!ワシらは殿から特別な恩寵を頂いておる軍だからな?竹中何某のようなヒヨッコが来る場所はではないぞ?そうだな・・・。主(ぬし)が殿に土下座をし、主(ぬし)の兵が'運良く'殺してしまった殿の友の墓に手を合わせるなら考えなくもないがな?」


 いや小川さんは何勝手に仕切ってんの!?まあ別にいいっちゃいいけど。それにオレの中ではもうそれなりに踏ん切りは付いたけど・・・。


 「・・・・・・・・・・・・・」


 あぁ〜あ。小川さんが屈辱的な事言うから涼しい顔してた竹中さんも無言になったじゃないか。これで織田家に来なくて武田や六角なんかに行けばかなり強敵になってしまうぞ!?どうすんだよ!?


 「先の戦では誠に申し訳ありませんでした。これも戦国の世の習い・・・。その時は間違いだと分からず本来仕えるに値しない者に仕えていたのは事実。そしてその時起こした過ちを悔いる事はしない。だが私が殺してしまった芝田殿の友の墓に手を合わせ墓参(ぼさん)する事をここに誓う。そしてもし宜しければ・・・この竹中半兵衛重治を芝田隊の末席に加えていただけないだろうか」


 おいおいおい!?マジで土下座しだしたぞ!?小川さんどうすんの!?


 「ははは!剣城!そういう事だ!亡くなった者を思う事は悪い事ではない。だがいつか先に進まないと何も変わらない!千吉や源蔵も分かってくれるさ」


 「がははは!本当に土下座するとはな?だが二言はあるまい!約束だ!竹中半兵衛重治ッ!大殿に聞かないと分からぬがまずは我が君から大殿に言えば間違いないだろう!仕官は芝田隊と言うのだぞ!?がははは!」


 いやもう芝田隊は当主、小川三左衛門さんでよくないすか!? 

今までつっかえていたモヤモヤが晴れてきた気がする。もういいや!なるようになれ!


 「野田さん!トランシーバーお願いします。信長様に竹中半兵衛さん織田家に降り仕官を求めてきた。必殺の作戦有り。芝田隊で城攻め敢行したい。と伝えてくれる?」


 「はっ!畏まりました!」


 城攻めと言ったら野田さんまで笑顔になったんだが!?そんなに皆戦いたいのか!?

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