ヘッドランプの有用性

 止まっていた時間が流れる。


 「よしっ!いっちょチートやるか!出でよ!キャタピラコマンドーmk-2神様ver!」


 「なな、何ですか!?これは!?まさか妖怪!?剣城様!早く私の後ろに!!!!」


 本当に健気だよ。お菊さん、俺の為におんぶしてくれようとするし、こんな情け無い俺でも守ってくれようとするし。何とかお菊さんに報いてあげたい。


 「落ち着いて下さい。これはオレが出した物です。未来の馬?ではないけど馬みたいな物です!オレが操縦します。後ろに乗って下さい」


 そう言うと凄く渋りながら、現代の学生カップルが自転車を二人乗りする時の様な横向きに乗ったので、危ないから跨いで乗るように伝えた。

 そうすると必然的に手を持つ所がオレしか居ないのでラッキー!!と思っていたのだが暫く走ってお菊さんも後ろが慣れたのか、最初は体をギュッと手を回して捕まえてくれてたのが最終的に甲冑の紐を持つだけになっていたり。

 

 オレはもっとハグしてもらいたかったが?


 「剣城様!このきゃたぴらなんとか号と名の馬は尾張一早いんじゃないですか!?お館様の小雲雀(こひばり)号より早いんじゃないですか!?」


 「まあ正確には馬ではないですが多分早いと思いますよ。この戦が終われば信長様にも見てもらう予定です」


 てか、このキャタピラコマンドーmk-2神様ver.めっちゃ運転しやすいんだけど!?それに音がキャタピラが擦れる音しかしないんだが!?


 「私もいつか自分で乗ってみたいです!!・・・。いえ、何でもございません。剣城様、申し訳ありません。それとそろそろお味方が見えてくる頃だと思います。お味方に当たらぬよう気を付けて下さい」


 初めて自分を出したな。いいよ!!いつでも乗せてあげるよ!!なんなら今度のお菊さんのプレゼントは現代の馬の飯を食わした馬をプレゼントしてやるか!?と邪な考えを思っていたら木下さんの部隊らしき人達に追いついた。


 「ひぃぃぃぃぃ────!敵方のもののけだ!!」


 「馬鹿者!!怯むな!たかが一騎!!押し返せ!」


 待て待て待て!!斬りかかろうとすな!危ねーじゃねーかっ!!!


 「待って下さい!オレは織田軍です!新参ですが本当です!」


 「何を抜かすか!貴様なんぞ見た事ない!」


 「すいません、芝田剣城と申します!最近信長様の夕餉、たまに朝餉や昼餉も作っております!後、とある村を発展させるよう任務に携わってます!木下様や…」


 「何事ですか?まさか行き当たりばったりの兄者の後詰めまで竹中何某が考え・・・剣城殿!?その馬はどうしたのですか!?それに甲賀のお菊殿まで!?」


 さらりと未来の秀吉さんをディスってる秀長さん。それにお菊さんの事も調べてる感じだな。こういうのが嫌われるのかな?


 「詳しい事はまた内々に教えます。まず信長様は無事ですか!?」


 「今、兄者達は木下家を支援してくれてる川並衆と我らで、何とかお館様を安全に撤退させられないか考えております。お館様は今撤退中です。敵の軍師、竹中半兵衛なる者が中々に手強いようで」


 注目を浴びてるからとりあえずオレはボックスにキャタピラコマンドーmk-2神様ver.を閉まった。それに竹中半兵衛ってあの竹中半兵衛か!?またまた大物じゃん!

 確か城を16人で落としたとかで有名だったよな?未来の秀吉さんに仕えるんだよな。

 て事は今はまだ敵か。マジ者のチート野郎じゃん!!オレは使い方見てないけど双眼鏡とかライター・・・確かに武器ではないけどそれ使って負けたってことだよな?


 「ならここで早く信長様に合流して、それから…」


 「剣城様・・・。ここは木下藤吉郎様の陣。あまり口を出さない方が・・・」


 お菊さんが教えてくれた。あまり他家の陣で軍議に関わる事は言わない方が良いと。


 「おおう、剣城か。お主も来たのか。護衛の嬢ちゃん?構わん。剣城、お主も来い。長ったらしい挨拶は良い。小物の時からワシが世話になっとる川並衆の頭領、蜂須賀小六と言う者じゃ」


 おっと!この人も名前だけは知ってるぞ!?確か早い時期から木下さんに仕えてるんだよな!?川並衆が何かは知らんけど何かの集団か?


 「俺は川並衆を纏めとる蜂須賀小六じゃ。今は正確には斎藤の虫じゃが、事あって藤吉郎を世話しておる」


 明らかに蜂須賀さんの方が上から目線な件。でもそれに対して木下さんも他の人も怒ってないからこれはこれで有りな仕え方なのかな?それに斎藤の虫って、斎藤側って事か?スパイか?


 「芝田剣城と言います。木下さんと同じ尾張での任務に携わっております。よろしくお願い致します」


 「それで剣城も何か良い案があるなら頼む。お館様は今、あそこの稲葉山の尾根の手前くらいだと思うが、このまま無策にお館様と合流しても敵の軍師にやり込められる可能性がある。そのくらい敵の軍師は頭の切れる奴じゃ」


 「それで俺が考えたのが、我らは織田の殿様を助けに来たが見ての通り数は少ない。敵に気取られたら勢いのまま擦り潰される可能性もある。

 だからここは織田の殿様の撤退を優先するために松明を一人二つ持って山の中を走り、かなりの援軍が来たと思わせられないかと思ってな」


 「すいません。私は戦が初めてなので良い作戦だとしか思いません。私も松明を持って出ます。その作戦でいきましょう」


 「ただ一つ問題があってな。今は季節は冬。乾燥し、もし火が燃え移ったら味方の退路が断たれてしまうのじゃ」


 燃えない火とかネットスーパーに・・・いやさすがにそれは無いよな。燃えたら駄目、人を多く見せる光があれば良い・・・光!?


 「いい手があります。蜂須賀さん、今からオレがする事に驚かないで下さい」


 そこでオレは信長さんにあまり使えんと言われ返却されていたヘッドライトを取り出した。驚くなと言ったがやはりみんな驚いていた。

 お菊さんはいつもの様に隠れずオレの後ろで喋らず待機していたが、ヘッドライトを見たら驚きより好奇の目な感じがした。多分、見た事ない物に興味があるのか?

 なら前のケーキ断らずに食べてくれても良いのに・・・。そのせいでオレは遅刻したんだぞ!?二度と香水なんか付けん!!実力で女は勝ち取る!!!


 「これを頭に付けスイッチを押すと光ります。ここに100個有ります。一人で3つ持てますしそれに燃える心配もありません。遠くから見たらバレないと思いますがいかがですか!?」


 「藤吉郎、この事が終わったら詳しい話を頼むぞ」


 「聞きたいと言うなら構わんが、お主が聞きたい事は織田軍の1番の機密情報ぞ。それなりの覚悟を持って聞いてくるがよい。では、ワシの軍と川並衆、剣城も参加するか?待機でもよいが?」


 「言い出しっぺの私が待機はいけません。私も行きます」


 「おい!護衛の嬢ちゃん?剣城は初陣もまだじゃ。それに恐らく女子(おなご)もまだじゃ。甲賀の出の者らしいな?見事、剣城を守ってみせよ」


 「・・・・・・はい、畏まりました。この命に代えましてもお守り致します」


 クソが!決定!絶対木下さんに甘味出してやらねーよ!何でみんなの前でバラすんだよ!!!そりゃ確かに気になって春画は少し見たさ!その時たまたま木下さんが来て隠してしまったけどよ!!

 お菊さんなんかちょっと顔引いてるじゃないか!!もうこうなりゃ早急に4Kビデオカメラ買ってねねさんに木下さんの浮気現場の映像見せてやるからな!!!

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