上泉信綱のレベルの高いギャグ

 パカラッ パカラッ パカラッ


 ノアの全速力にて敵本陣を後にした。剛力君子飼いの八郎兵衛君達は、武衛陣から持ち出したであろう国友銃と、加藤製作所から用意された片手銃にて、敵を一掃している。


 うん?首はどうしたかって?勿論、右腰のベルトに紐で括り付けてある。オレは全力で固辞したが、大野さんが・・・。


 「剣城様!お忘れ物にございます!」


 「え!?いや、そんなの要らないから!大野さんが信長様に渡したらいいよ!」


 「何を言っておるのですか!?剣城様が城持ちとなる為の大切な一歩です!」


 スチャスチャ


 「はぁ!?何で括り付けるの!?外れないんだけど!?」


 「ははは。またまた御冗談を。望月頭領。剣城様の大切な土産だ。落とさぬように頼みます」


 いや、全然冗談じゃないんだが!?マジで首なんて要らないんだが!?


 このように、大野さんが括り付けた首をちゃんと持っている。


 「芝田剣城様が!いや、我が君が!美濃の我が君が!三好が首を討ち取ったり〜!!」


 「小川さん・・・恥ずかしいんだけど・・・」


 「がははは!それでこそ我が君ですぞ!三好の2将を討ち取ったり〜!!」


 いや、答えになってないんだが!?


 「ま、負けた・・・」「負けてしまったのか・・・」


 三好の兵達は皆がガッカリしている。兵の数では未だ圧倒的だが、いかんせん、纏める兵が居ないのは本当だろう。よく見れば、草臥れた農民兵のような人達ばかりだ。

 美濃、尾張のような専業兵士は、未だ他国では居ないと見える。


 「きぃぇゃぁ〜〜!!風穴空けちゃる!!」


 「足りぬ!骨の軋む音が足りぬ!!」


 「「おっ!?剣城様!?」」


 小川さんの掛け声にて三好の兵は士気も無く、楽々と中陣まで下がる事が出来た。そう。慶次さん達、奉行衆が居る所までだ。

 小泉爺ちゃんと、牧村お婆ちゃんは現役の頃を彷彿とさせるような動き方だ。まぁ現役の頃を見た事ないから知らんけど。


 「おう!剣城!殺ったか?」


 「えぇ。抜かり無く。けど、三好長逸と筒井家が、全く動かないのが気になります」


 「う〜ん。筒井家と共に三好長逸は居ると思うんだがな。剛力や剣城の活躍を見て怖気付いたか、このまま敗走し、阿波に帰り再起を計るか。どちらにしても今は狩り時ぞ」


 「狩り時・・・ですか!?」


 「あぁ。三好を撃滅するなら統率の無くなった今こそ好機!剣城は本圀寺に残る兵を出撃させろ!明智何某も呼び出せ!」


 「わ、分かりました!」


 「良し。奉行衆等よ!よくぞ耐え抜いた!俺の期待以上だ!悲しいかな、何人かは脱落しただろうが、今が攻め時だ!大将首はもう居ないが、ここで三好の兵を多く討ち取る事が出来れば値千金ぞ!お前達は後に幕府軍初期の兵となるだろう!歴史に名を刻め!命を惜しむな!奉行衆!今一度着いて来いッ!!」


 「「「「オォ────!!」」」」


 慶次さんはやっぱ、すげぇ〜よ。


 「剣城様。やはりこのまま一度、戻られるので?」


 「そのつもりだけど、望月さんは戻りたくない感じですか?」


 「いえ。慶次が言っていたように、筒井家の兵に三好長逸が居るとするならば、何故、今残る兵を纏めようとしないのかと思いまして。もし某が長逸ならば、起死回生の一手を打ちますが」


 「というと?」


 「我等が今回行った作戦のように、突破力の優れた馬廻りを前に出し、本圀寺裏手から奇襲を掛ける・・・。それを悟られぬように筒井家は動かずに居てもらう。慶次達に兵は狩られてしまうでしょうが、筒井家の兵が殺される訳ではない。それに筒井家は剣城様に牙を剥いた訳ではない故に、三好が負けたところとて、お家は残るかと。三好の方は兵は減っても将軍を手中に収めると・・・」


 「その考えてるままだとすれば、筒井家は賢しいですね。三好が勝てば三好側に。負けても家が残るようにすると・・・。だけど望月さんの考えが正しければ有り得るかも・・・。急いで戻ろう。島津兵の人達は・・・」


 「おどりゃぁぁ〜!!首寄越せッ!!!おいどんはここぞ!!」


 「まだ斬り足りぬぞ!!首だ!首寄越せ!義弘様にドヤされるではないか!お前ッ!!逃げるな!いや、逃げるのはいいがこちらを向けッ!!背中からは斬らぬ!!」


 うん。やはり薩摩人は怖い。あんな大軍の中、ここだけ敵が殆ど居ない。いや、敵だった人達は居る。漏れなく皆、死んでいるけど。


 「木脇さん!奮戦お疲れ様です!一度、本圀寺へ戻ります!」


 「相分かった。三好の兵は他愛ないですな。その首二つ持っているという事は、首領2人も大した事なかったという事ですな」


 「えっ、えぇ。まぁそれなりでしたよ」


 「がははは!我が君の活躍を後で其方にも見せてさしあげよう!実はこんな事もあろうかと、アクションカメラにて、我が君の勇姿を撮影したのだ!ブルーレイに焼き回しして皆に配ってやらねば、とな!?がははは!」


 いやいや、いつの間に撮影したんだよ!?そんなの誰が見るんだよ!?


 「ふははは!流石、御家老殿!おいどんも、後学のため見せて頂きたもう」


 いやいや、木脇さんもかよ!?どう見ても薩摩の人達の方が凄いから!!


 それから、本圀寺本陣までは実に楽な道のりだ。


 まず竹中隊だが上杉、浅井の兵の活躍が凄まじかった。半兵衛さんも何故か甲冑を脱ぎ捨て、上半身裸になり、敵の返り血で真っ赤になりながら敵を殴り殺している。ヘカテーの例の杖でだ。

 上杉、浅井の兵隊も見事に、敵の死体の山が積み上がっている。


 「ほっほっほっ。剣城殿。やりましたか」


 「なんとかって感じですが。それと、『三好長逸が現れるかも』と望月さんが言うので、オレは一度戻ります」


 「うむ。私はもう少し運動しましょうか」


 このように無双状態だった。まぁ半兵衛さんの所はこのままで大丈夫だろう。仮に筒井家が動いたとしても、この人ならどうとでもなりそうだ。


 続いて坂井隊だがここも凄かった。特に坂井隊の中に居る美濃3人衆が、本当に凄い活躍だった。オレのように腰に首を括り付けてある。しかも下っ端らしき兵達もだ。


 「うむ!大将、剣城殿!やりおりましたかな!?」


 「安藤様。御苦労様です。この2人が三好の2人です。危うい所はありましたが、なんとか、2将は討ち取りました」


 「流石ですな。いや、我等も先の上洛戦の様に手柄を上げられれば、例のけぇきなる物やビードロの酒、烏龍茶など貰えるかと張り切っていたのですぞ!」


 「うむ!ワシもだ。此度も活躍すれば鮭を頂けるかと」


 「我も同じだ。我は芋を揚げたなんとかちぃぷすという物を所望したい」


 はぁ!?今回は何も言ってないぞ!?


 「剣城殿・・・。申し訳ない」


 「え!?坂井さん!?」


 「実は剣城殿が出られた後、ここも少し危うくなりまして。バラバラに攻められると、明智殿の殺し間に敵が向かわなくなりまして。それで、勝手を言いました」


 殺し間・・・。確か鉄砲隊を左右に分けて、入って来た所に斉射するアレだったか。この時期から明智の殺し間ってあるんだな。


 「あっ、あぁ!そういう事でしたか。いや、てっきりこの美濃3人様が、強請ってきているのかと思いましたよ。まぁ、坂井さんがそう言ったのなら仕方ないですね」


 「うむ。流石、坂井だ。あのお館様の無理難題を簡単に熟し、対等に意見が言える大将に確約を取り付けたな」


 「確かにな。我等が勝手に言ったと思われるのは少し心外ではあるが、美濃で好き勝手した罰でもあるしな」


 

 〜坂井目線〜


 おかしい。どう考えてもおかしい。俺は自分に非が無くなる様に、然もこのおっさん3人が我が儘を言っているように、伝えたつもりなのだが・・・。

 何故、あそこで剣城殿は叱ってくれないのか。このおっさん3人は欲しい物を言い、剣城殿が叱ると思っていたのに・・・。

 確かに、このおっさん3人の奮戦が無ければ危なかった。だが、明智殿の必殺の殺し間で確実に敵を減らしていたというのに、安藤のおっさんが・・・。


 「単調な戦だ。面白くない。手柄どころの問題ではないな」


 「うむ。ワシもそう思う。あの流浪の明智に手柄ばかり取られるのは癪だな」


 「我もそう思う。大将は我等と坂井を信用して1番を譲ってくれたというのに」


 今思い出してもイライラする。俺は何度も『勝手な事をするな』と言った筈なのに、気付けば中陣の竹中隊の近くまで、勝手に移動しているし。そのせいで前田殿達、奉行衆は更に前に行く事となった訳だ。俺が無理矢理、本圀寺正門まで退かせなければ、このおっさん3人は間違いなく前に進み、帰り道が閉ざされていた筈だ。

 それに、もし前田殿が殺られていれば、俺の首だけでは済まなかっただろう。剣城殿の懐刀、剣城軍の第一軍の前田殿だ。

 いくら、下が勝手に動いたと言えど、それを纏められなければ将である俺の責任・・・。美咲も家の下女や下男までも斬首だっただろう。

 

 「まぁ、オレは坂井さんを信じていますので。武だけに関してはやはり慶次さんですが、坂井さんはオールラウンダーと言いますか。何でも卒無く熟すと言うのが妥当ですかね。こちらの作戦の意図を汲み、臨機応変に対応してくれるというか・・・。兎に角、坂井さんが約束したなら、オレはその約束を果たしますよ。また欲しい物を紙に書いて、後日、家の者に渡しておいて下さい。あっ、首は要らないので各々が信長様に渡して下さい!」


 「うむ」 「相分かった」 「恩に着る」


 やはり剣城殿は勘違いしておられる。俺は家で畑を耕し、慎ましく静かに暮らしたいだけだというのに・・・。




 「と、いう事なので坂井さんも欲しい物があれば是非。奥さんにお土産でもいいですよ?坂井さんはゾッコンみたいですしね!それと・・・勘違いで済めば良いのですが、本陣付近に三好長逸が現れるやもしれません。無傷の筒井軍も居ますので、もう少しここを守って下さい」


 「何ですと!?」


 「坂井さん。大丈夫ですよ。本陣には配下の金剛君も居るし、オレも今から戻りますので」


 「うむ。なら、小物の首でももう少し狩るとするか」


 「そうだな。氏家や安藤よりかはワシの方が少し首が多いだろうが、負けたくはないからな」


 「なっ!?我の方が既に狩った首は多い!」


 「何を言うか!ワシの方が多い!」


 「そこの!未だ剣城殿が居るのだぞ!控えろ!」


 「な、何をッ!?坂井の癖に偉そうに・・・」


 「へぇー。そんな事を言うんだ?オレは坂井さんがそう言うから約束は果たすと言ったのに。いくら首を取ろうが手柄を立てようが、オレは規律を乱す人に褒賞は出さないよ。この事も信長様に伝えましょうか?一応、オレの軍には目付は居ないけど毎回、戦が終われば事細かく信長様に報告しているんですけど?」


 「あっ、いや、これは違うのだ。未だ少し気分が高まっていたようだ。許してくれ」


 「そ、そうだ。我等はどうやら勘違いしていたようだ」

 

 「と、いう事です。坂井さん!もう少しよろしくお願いします!ちゃんと坂井さんの活躍を、信長様に伝えておきますので!」


 いや、俺の活躍なんかより剣城殿のあの一喝で、3人を黙らせた方が凄いと思うのだが。


 「いや、何も言わなくていいのですが・・・。某は何もしていないですし、向かって来た敵を倒す、明智殿の殺し間に敵を誘導する、安藤殿、氏家殿、稲葉殿が敵を屠ってくれただけでして・・・」


 「ははは。またまた御謙遜を!では、よろしくです!望月さん!小川さん!小泉爺ちゃん、野田お爺ちゃん、牧村お婆ちゃん!戻るよ!」


 「左様ですか。畏まりました」


 

 「おっ?芝田殿か!?」


 「芝田殿!?その首はまさか・・・」


 「剣聖様に明智様。お疲れ様です。良かったら解いてくれませんか?配下の者が括り付けて取れないのです・・・。イヤマジで。ズボンは血で汚れるし」


 「いや、誠に討ち取ってしまわれましたか・・・」


 「まぁ、案外に危ない場面もありましたが、最低限の仕事は果たしましたよ。それと、オレの家臣の前田隊及び奉行衆が、『今は狩り時故に御出陣されたし』と言っていました」


 「確かに、敵の士気がみるみる下がったとは思ったが、まさか・・・」


 「この2人を討ち取ったからですね。ここはオレに任せて存分に掃討をお願いします」


 「私もよろしいですか!?一応、将軍には眠ってもらいました」


 「眠ってもらいましたって・・・。まぁ鞠ちゃんなら大丈夫かな。凛ちゃんも控えているしね。明智様から離れないようにね」


 「ありがとうございますっ!!明智様!向かいましょう!!」


 「お、おい!?」


 正門に残っていた明智さん配下20名程と、鞠ちゃんが颯爽と出て行った。それに釣られてか、本圀寺防衛隊の後詰めとして、待機させていた兵も飛び出して行った。まぁ、三好に関しては後は狩られるだけだろう。


 「金剛君!」


 「はっ。ここに」


 「状況は?」


 「静かなものです。剣城様が出られて全方面から攻撃を仕掛けられましたが、鉛を仕込んだ兵は正門に集中していたようで、隼人と俺と細川様の軍で凌ぎました」


 「そっか。細川様ってあの細川様?」


 「あのというのは分かりませんが、明智様と元は関係があったようでございます。あちらに見えるがそうです。が、剣城様とは合わないと思います」


 「何で?一応、この軍な責任者はオレだから挨拶はしないといけないだろう?お礼もしないといけないし」


 「いや、しかし・・・」


 「そんなに会わせたくない訳?」


 「いや・・・申し訳ございません。出過ぎた真似を」


 「いや、怒ってる訳じゃないからね!?」


 金剛君がここまで言うのは珍しい。確か史実では明智さんと上司と部下の関係で、その後も懇意にしてるのは覚えている。山崎の戦いで最後の最後に協力せずにお家を守り、家名を残した名将だった記憶がある。これだけ聞けば食わせ者のように思うけど、この大事な時に眠っているバカ殿こと、将軍が死去した後の葬儀も誰も行わないからと、確かこの人が行ったって記憶がある。


 「初めまして。細川藤孝様とお見受け致します。此度の責任者の織田軍 料理ご意見番 芝田剣城でございます」


 「おぉ〜!其方がそうであったか。見事に首を取ったようで」


 「なんとかって感じです。また落ち着けば色々話しましょう」


 本当は色々話を聞いてみたいし、是非この人も織田軍に・・・寧ろオレの陣営に文官として来てもらいたいくらいだけど、金剛君の件もあるからな。少し警戒していた方が良いかな。


 「少し良いか?」


 「うん?剣聖様。どうされましたか?」


 「その呼び方は好きではない」


 「そうですか。では剣鬼様とお呼びしても?」


 「いや、それも好かん」


 この人は是非、一度岐阜に来てもらわないといけない人だからな。上泉様と言えば他人行儀かな?男なら誰でも憧れる剣の天才の人だよな。この人の剣が後々、柳生、宝蔵院、そして・・・島津家が使う本物のタイ捨流からの、示現流へと繋がるんだったよな。


 「では剣豪様で宜しいですか?」


 「いや、巷ではそう皆が呼んでくれるが、上泉で結構。兄弟弟子を面倒見てくれていると聞いている。愛洲からよく文が届いてな。それと、老婆心ながら、北側の山が静かだ」


 剣豪こと、上泉信綱さんは表情を変えず山を見て言った。


 「オレの配下の者も懸念が御座いまして、一度ここへ戻りました」


 「気付いておいでか。結構な数かと思う。殺気に満ち溢れておるよ」


 殺気!?いや、オレは全く感じないんだが!?しかもオレも気付いているかのように言ったけど、全て望月さんの勘なんだけど!?


 「どのくらいですか?」


 「300は居るだろうな。硝煙の臭いもする。はぁ〜。やれやれ。今代の将軍は色欲と酒に溺れているな。先代と兄弟というのが嘘のようだ」


 「えぇ。そのようですね。オレも嫌われているようですし」


 「この一大事に駆け付けた御仁を嫌うか。誠、やれやれだな。其方は三好を滅ぼすつもりか?」


 これは試されているのか!?問い掛けられているだけだが、刃を突きつけられてるような感覚だ。


 「オレの上司である織田信長様は、相当に色々な人に裏切られて来ていますが、大概は許している優しい方です。言動なんかは苛烈に見えますが。オレもその口です。が、オレは敵対して降伏した人は許しますが、裏切りは許しません。だから、三好義継は斬りました。三好宗渭もです。まぁ実質、三好を差配している三好長逸も最早、退けないでしょうね」


 「聞いていた人物と大分、剥離しているようだな。其方の殿とやらは」


 「はい。他国にはかなり厳しいように聞こえているようですが、オレには面倒見が良く、優しい・・・事はないですが、命を掛けるに相応しい人ですよ」


 「そうか」


 「戦わずして勝つ事が1番だとは思いますが、三好に限っては無理ですね。オレは信長様の為に三好は駆逐しますよ。どんな手を使っても」


 「戦わずして勝つ・・・孫子兵法か」


 「えぇ。元来、オレは平和主義ですよ。上泉様は、今回しかオレを見ていないから分からないかと思いますが、戦は嫌いです。皆、笑って暮らして行ければ・・・と思いませんか?」


 「愛洲の文に色々書かれていた。だから諸国放浪の旅の途中で、一度美濃にも行ってみようと思っていた矢先に、この騒動を知ってな。愛洲の殿は奇妙な技を使い、斬られた手をも生やす薬を持っているとも聞いてな。そんな薬は聞いた事もなく、また美濃や尾張では飢える事は皆無と聞いたから、気になったのだ」


 「薬の件はまぁ・・・色々ですね。少なからず、織田家の領地は治安も良く、飯も職もあり、女も子供も笑って暮らしていますよ。娯楽は少ないですがね。上泉様も一度、愛洲さんに挨拶がてら来られてみては、如何ですか?招待しますよ」


 「うむ。一度、織田信長公とも話をしてみたくなった。だが、その前に・・・。来るぞ」


 「えぇ。そのようですな」


 はぁ!?何で望月さんまで分かるんだよ!?黙ってさっきまで頷いていただけだろ!?オレは全く分からないんだが!?いや、ここは知った振りをするのがデキる男の嗜みか。


 「上泉様も分かりましたか。オレもそろそろかと思っていました」


 「がははは!我が君!嘘はいけませんぞ!望月頭領は、修羅場を潜った数が違いますから分かりますが、ワシでも気付かないくらいですぞ!この喋る守護盾ですら、今気付いたくらいですからな!」


 『ごっつぁんです』


 はぁ!?何でバラすんだよ!?恥ずかしいじゃねーか!


 「ふむ。其方は確か筆頭家老殿だったな?面白い盾を持っているのだな。できれば、殿だけではなく某も守っていただきたいくらいだ。盾だけに立って守るってか?ははは・・・いや、すまぬ。つまらぬ事を申した」


 はぁ!?この人も喋る盾に驚かないのかよ!?『守っていただきたいくらいだ』って・・・あんたがオレを守ってくれよ!?しかも、『盾だけに立って守る』って・・・。これがこの人のギャグのつもりか!?レベル高すぎだろ!?



 〜清洲城 始まりの村 牧場〜


 「デュフ・・・デュフフフフフ」


 「児玉様は何で笑っているのですか!?」


 「糸子殿か。いや、なんとなく遠くから面白いシャレが、聞こえた気がしたからな」


 「シャレですか?シャレとは?」


 「うむ。では一つ・・・牛はなんて鳴くと思うか?」


 「え?モー?」


 「その通り。だから某も牛だけに申す・・・モースなんてな?デュフフフフフ」


 「・・・・・・・」


 

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