間話

 剣城達が雑賀衆の守る森を抜けていた頃。


 〜岐阜 剣城邸〜


 「ねぇ?菊?剣城様は大丈夫かしら!?」


 「ミヤビも剛力も金剛も、小川の爺やも居るから大丈夫だって!ゆきは今回は何でそんなに心配しているの?」


 「だって・・・。何か今回は胸騒ぎがするの」


 「剣城様が居たら、『そんなフラグ立てないで!』って言うわよ?」


 「確かにそう言いそうね」


 「おーい!剣城おじちゃんのお姉〜さ〜ん!!」


 「あっ!勘太郎君じゃない!どうしたの?」


 「ううん!今年はお年玉はしないの?あと、これ!父ちゃんが餅ついたから、渡してこいって!」


 「ふふふ。勘太郎君。ありがとうね!剣城おじちゃんは皆の為に今は働いているの。だから今年はお年玉はしないかな?」


 「そっか!分かった!なら皆でお祈りしてくるよ!剣城おじちゃんが無事に帰って来てくれたら、してくれる?」


 「う〜ん。どうだろうね?そういえば城下の子供達は何してるの?」


 「皆、雪合戦してるよ!」


 「よーし!今年は剣城おじちゃん抜きでお年玉しよっか!」


 「やったぁ〜!!ゆき姉ちゃん!ありがとう!」


 「ふふふ。皆を呼んで来てくれる?」


 「分かったよ〜!!」


 「ゆき?お年玉ってお金渡すやつよね?勝手にしていいの?」


 「大丈夫よ!剣城様は寧ろ喜んでくれる!それに林様や布施様が、剣城様の文官業に就いてくれるみたいだから、あの人達にも分かってもらわなければ、いけないしね!」

 


 

 「え!?ワシがか!?あ、いえ・・・。ワシがですか!?」


 「林様。今更、私如きなんかに丁寧に話さなくても構いません。ですがせめて領民、下々の人達には目線を合わせて下さい。どうぞ!これが子供に渡すポチ袋です!」


 「う、うむ・・・。では、学ぶと致す」


 「ふむふむ。美濃では、子供にお年玉なる物を渡す習慣があるのじゃな!?これは奥方殿が考えたのですかな?」


 「いえ。剣城様がです」


 「やはり、元六角家の者は憎いですかな?もし、障るような事があるならば、離れまするが・・・」


 「申し訳ありません。直ぐにこの感情が消せそうにありません。ですので、態度で示して下さいますよう」


 「う、うむ。相分かった。下々の目線に下げ、民の気持ちを知るという事ですな」




 「よーし!この織田家 家老格の林秀貞が皆に、年玉をやろう!並べ!」


 シィ〜ン


 「ふぉっふぉっふぉっ。皆の者!来なさい!特に童達〜!お年玉なる物を渡そう!一年に一度しかないのであろう?」


 ワァーイ!!


 「おじちゃん、誰?」


 「おじちゃんは、少し遠い所で仕事してたのだが、この度、剣城殿の下で働く事となったのじゃよ。だから、これから顔を合わせる事もあろう。よしなに頼むぞ!おじちゃんは、この辺の事に詳しくないからのう」


 「なっ!?童達!!ワシの方にも来い!!よーし!ワシの方の年玉は小銀判1枚・・・。100円多く入れてやろう!さぁ!並べ!」


 シィ〜ン


 「な、何故じゃ!?何故ワシの方に来ぬのだ!?」


 「林様。恐らく・・・その話し方が良くないのかと」


 「奥方殿か。じゃが、下の者と同等と申すのは・・・」


 「気が引けますか?皆〜!おいでぇ〜!おばちゃんが、皆にお年玉あげるわよ〜!」


 ワァーイ!!


 「ふふふ。勘太郎君!皆を集めてくれたのね!」


 「うん!ゆき姉ちゃん!ありがとう!」


 「おい!童!何故、最初からワシの所には来なかったのだ!?」


 「・・・・・怖い」


 「うん!?怖い!?怖いだと!?別に普通ではないか!?」


 「ふぉっふぉっふぉっ。林殿は童の扱いが分かっていないようですな?それでも、織田家 一番家老ですかな!?」


 「な、何を!?」


 「某は外様ですし、新参ですからな。それに、剣城家の奥方様始め、皆には嫌われているから必死なのですよ」


 「ぐぬぬぬ・・・」


 「よーし!童達!この不肖 布施公雄が童達の親にもおやつを奢ろう!皆の者!呼んで来なさい!」


 ヤッタァァァ〜!!!!!


 「「「父ちゃん!!」」」 「「「お母ちゃん!!!」」」


 少し打算的な部分は見え隠れしてるけど、あの布施様は本当に剣城様が成そうとしてる事を、覚えようとしてるのかしら。私達も『六角家の人だから』と毛嫌いしていては、今後はダメかもしれない。これからの未来の事を考えると、過去の事ばかりを恨んでも仕方のない事、かもしれない。


 「ぐぬぬ!布施何某爺いめ!!」


 ふふふ。この2人は野田様や小泉様を見てるみたいね。まぁ、お互いが切磋琢磨して頑張ってくれれば、良いかしらね。


 「おーい!この林秀貞様も、皆に何か奢ってくれるって言ってるわよ〜!」


 「え!?奥方殿!?な、何を!?」


 「差し出がましい真似をすいません。後で銭はお返し致します。ですが、今は林様が出したという事でお願い致します」


 「・・・・うむ。その心意気や良し。他家の奥方殿に銭を借りるなぞ、織田家 一番家老の林家として末代までの恥じゃな。あの布施何某爺いに負けてはおれん!おい!お前!蔵を一つ空けて銭を持って来い!皆の者ッ!!全員来い!晩飯はこの林家が出してやるぞ!!」


 「なっ!?おじちゃんも皆の者に晩飯を振る舞ってやるぞ!!!」


 「何だと!?」 「な〜に〜!?」


 ふふふ。面白い人達ね。

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