剣城の口上
「剣城様!起きて下さい!剣城様!!!」
「うん?あ、お菊さんおはよう。どうしたの?」
「どうしたのじゃありません!!!もう皆、声掛けして整列していますよ!?早く準備を!!」
「え!?もうそんな時間!?!?いつもならもっと早起きするのにこんな時に・・・お菊さん!甲冑お願い!顔洗って歯磨きしたらすぐ戻るから!」
「おーい!剣城、早く来い。──今起きたのか!?」
「慶次さん、おはようございます!すぐ準備します!」
「がはははは!うちの大将は肝が大きいな!」
「いや申し訳ない!甲賀衆にも整列しておいてくれるようお願いします!」
「もうしてるぞ?後は剣城だけだぞ?」
マジか!?またオレは寝坊してしまうのか!?急ぐぞ!!!
「滝川殿、芝田殿は遅いですがいつもこんな感じで?」
「いや。いつもかどうかは分からんが、以前の斎藤方との戦でも寝坊した、とか言っておったような。少し弛んでおるようだ。明智殿、すまん」
「別に私は構いませんよ?芝田殿は図太いようですな?ははは」
オレは皆が整列してる中を走り、馬に乗ってる明智さん滝川さんの元に近寄った。うん。滝川さんと仲良くなれたと思ったのに、殺気がやばい件。
「遅れてすいません!お待たせしました!」
「芝田殿?おはようございます。緊張しておられんようでなによりです。それにしても芝田殿の隊は・・・異様と言えば失礼か。中々に凄い装備をしておる者もおるようだな?」
「あれは私の村で開発してる──って、そんな事はまた今度言います!それより滝川様、本当に遅れてすいません!!」
「ふん」
ふん!?ふん!?!?それだけ!?めっちゃキレてんの!?これは元日本一と定評のある、ジャンピング土下座で謝るべきか!?そうなのか!?
「もう良い。お主も横へ来い。お主も一隊を率いる将の1人だ。下の者に笑われるぞ?」
そう言われオレは滝川親族、明智隊、勝恵さんが居る中に並んだ。オレの隊は慶次さん、小川さん、金剛君だ。
「聞けッ!!!今からお館様の悲願!美濃を取り、斎藤を滅ぼす為に北伊勢を攻める事とする!者共!気を引き締めておけ!」
「「「「オーーーーッッッ!!!!!」」」」
いやこれが先日、慶次さんが言った言霊というやつか!?短い単純明快な言葉だったけど、オレでも滾ってくる感じがするぞ!?さすが歴戦の猛者、滝川一益さんだな。
「一益、久しぶりじゃ」
「三左衛門か?久しいな。どうした?」
「我らの殿からも一言良いであろう?」
いや小川さん、何言ってんの!?何も喋りたくねーし!?なんならオレが喋ったら逆に士気が落ちるよ!?
「ほう。芝田殿の口上か!?滝川殿?私からもお願い致しまする」
いや、明智さんも何言ってんの!?決定!明智さんとは絶交だ。半笑いで言いやがって!!
「もう一つッ!!!!!お主らが最近口にしておる白い米!食い物!!まだ上位の者しか用意できなかったが、装備しておる槍を開発した芝田剣城である!心して聞けッ!!!」
いや滝川さんもマジか!?何て言えばいいの!?あぁぁぁぁぁぁ───!!!!クソが!!もう何でもいいや!!
「皆さんッ!!!おはよう!!!!」
"おい!剣城!!なに言っ──"
"叔父御。少し待て"
なんか滝川さんと慶次さんが言ってるけど、もういいや。思う事言おう。
「敵は貴方達を倒しに来るでしょう。戦闘になれば誰かが怪我をして死ぬ事もあるでしょう。けど安心して下さい!!私が貴方達を殺させません!怪我をすれば治します!存分に励んで下さい!!」
「予は常に諸子の先頭に在り!」
「「「「オーーーーーーッッッ!!!」」」」
「ほっほっほっ!中々の口上ぶりじゃないか?」
「お主にしてはまあまあじゃ」
「自分の事を予とな!?がははは」
未来の太平洋戦争末期の硫黄島の戦い、栗林中将の言葉お借りしました!まだ産まれていない栗林様?申し訳ございません!!!
「さすが我が殿!!最高の口上でございます!それでこそ我が殿でございます!さっ、言葉通り我らは先頭に参りましょう!」
いや小川さん!?あれは言葉の綾で・・・。
「三左衛門!ちゃんと作戦がある!控えてくれ!お主の武はいつか使う時がくる!だがそれは今ではない!」
ほらやっぱり小川さんは忍じゃねーじゃん!?武って言われてるよ!?
「当初の通り剣城は後ろを。我らは先頭だ」
カッコつけて『予は常に諸子の先頭に在り』とか言ったのに、オレは後ろの方に戻った。甲賀衆が待ってるオレの隊に戻ると、青木さんや野田さん達が涙を流しながら、さっきの口上を褒めてくれた。
「普段お優しい殿ですが、我はやれば出来ると信じておりました!!」
「普段とは似付かわしくないお言葉・・・。某は感動の渦に・・・・」
そんなにか!?てか普段どんな印象なんだよ!?
「ありがとうございます。口上の通り貴方達を必ず守ります。では行きましょう。よろしくお願いします」
「「「オ──────ッッ!!」」」
「おっ!?後方の士気が高いですな!?はは!此度は案外簡単やもしれんですな?」
「それは勝恵殿に掛かっておる。だが何回も言うが説得に応じない者には──」
「分かっておりまする。拙僧がちゃんと交渉致します」
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