また甘い握りかよ!?
「何故と言われても・・・ただ偉そうに言うつもりはありませんし、私が治めている訳でもありませんが、私が居る村は間違いなく日の本一、潤っていると言えますね」
「ほう。それは未来の技でか?」
「最初はそうでした。けど最近はこの時代の人達の手で発展してきております。蟹江方面にはまだ届いてなかったかもですが、松平方面の尾張の村は餓える事は無くなった、と聞いております」
「お主は・・・甲賀の者を預かってくれておるのだな?」
「100名程ですが、なんとか食べさせてはいけるくらいには」
「この村の者も半分以上は甲賀の出身だ。甲賀は知っておるだろうが貧しい。皆が皆食える訳ではないのは知ってるな?年老いた者、生まれつき体が弱い者は家族に捨てられる。その者達を密かにここに住まわせておるのだ」
いや、滝川さんってあんな難しい人なのに優しくない!?めっちゃ面倒見がいい人じゃん!確かに老人がこの城下には多い気はしたけど。
「某は口下手だが礼を言う。殿も口下手で中々感情をお出しにならない方だが、昼間にお主を褒めておった」
いや、めっちゃ感情出す人じゃね!?主に喜怒哀楽の怒がオレには圧倒的に多いけど・・・。
「満足にとは言えませんが、一応全員を見るようにはしました。怒られなくて良かったです。もし何かあれば今後も言って下さい。私に出来る事なら手を貸します」
「・・・かたじけない」
「益氏から聞いたと思うが城下の者をすまんな」
「いえいえ。私なんかより滝川様の方が立派です。私は一時的な事しか出来ませんので。ただ、今後はこちらの方も安定すれば、色々食物やら物資などの商いが来るように信長様に上奏してみますね」
「すまん。助かる。それと明智殿とも話したが明日から作戦開始だ。なんでもお主は竹中何某と初陣で大立ち回りしたとか?」
「ぁぁぁぁぁ!その事は忘れて下さい!!」
「面白い奴だな。ははは」
おっ!?初めて滝川さんの笑顔を見たぞ!?
「恐らく戦闘にはならんと思うが、気を引き締めるように。慶次から預かったとらんしーばー・・・しかと預かった。伝令がある時は使わせてもらう」
「くれぐれも明智様にバレないようにお願いしますね?」
「それと刻が合わなかったが、お主は大物からも目をつけられておったぞ?松永久秀殿を知っておるか?」
「あっ、知ってますよ!未来でもまぁまぁ有名じゃないすかね!?」
「やはりそうか。その御仁は明智殿に鉄砲傭兵などを貸し与え、明智殿と共に中央に知り合いを作る為に懇意にしておるのだが、お主が育てた食物や甘味、酒を土産に渡したら大層喜んでおったぞ?」
「そうなんですね。そりゃ珍しい筈と言うか、日の本全部探しても絶対に無い物ですからね。一度会ってみたい気もしますが、またの機会にでもお願いします」
「会いたくても中々会えん方だ。なんせ三好家の者だからな。それに官位も弾正少弼に転任し、将軍の御供衆の方だからな」
オレは歴史で知ってると言っても、信長に高価な湯呑みか何かを渡して恭順したが、最後は爆死したってしか知らない人だけど、あの人そんなに凄い人だったの!?
「こんな事言うのもなんだが・・・以前柴田殿や森殿が食べた物を食ってみたいのだが、構わないか?」
滝川さんが注文してくるのは初めてだな!?よし!本気でオレが作ってやろう!
「いいですよ!なんですか?あのお二人に出した物ならラーメンとか牛丼・・・。他に何があったかな?」
「甘い握りを所望する」
「・・・・・・・・・・」
甘い握りかよ!?あんなの米に砂糖まぶしただけじゃないか!!!やはりこの時代の人の味覚は分からねぇ〜よ!!
「あ、甘い握りですか!?あんな物より醤油を混ぜた焼きおにぎりの方が・・」
「ただ甘いのが食いたい。だめであろうか?」
しょうがない!そこまで言うなら食わせてやるよ!!!オレは有り得ないと思いつつ、砂糖をまぶした握りを滝川さんに渡して、感想なんか聞いてもオレは今後作る気は無いので、部屋を後にした。
「益氏!益重!これを食べてみろ!甘い握りだ!」
「叔父上もやっと剣城殿をお認めに──これは何ですか!?美味い!!美味過ぎる!!!」
「殿、某これほど美味い握りは初めて食べました」
「だろう?剣城はこの握りが好かんようだ。人それぞれ好みはあるだろうが、これを嫌いな者が居るとはな・・・」
「本当に不思議でございますね?某はこの握りの為なら何でもしますぞ!!」
「益重!お主は剣城と話しやすかろう?この作り方をこの戦が終わる前に聞いておきなさい。今後めでたい日に食おうではないか!」
「はい!分かりました!!」
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