蟹江城下の人達
「拙僧が北勢を説得して参る。戦になれば必ず長島が動き戦乱が広がる。そうならない為に、無闇矢鱈に攻めないでいただきたい」
「分かりました。私は後方に構えるようにしておきます。作戦予定はいつ頃を想定していますか?」
「準備出来次第と思うておる。蟹江の者は随分前から沙汰を申しておるから、2~3日後くらいには動ける」
「分かりました。私も準備しておきます」
この日は城にオレの部屋を取ってもらい泊まった。次の日の朝に例のプレハブに向かい、軍議の事を皆に言う。
「なんと!?では此度は戦っても一当てしかせぬと!?ぐぬぬぬぬ」
いや小川さん。どんだけ戦いたいんだよ!?
「そこまで詳しくは聞きませんでしたが、勝恵さんと言うお坊さんが説得していく、と言う話です。滝川様も今回は平和路線な感じでした」
「一益殿も毒されおったか!?」
いや小川さん?何も毒されてないし、なんなら平和が一番じゃないすか!?
「それと、剛力君?城の改修はOKだそうだよ。鳥の件も了承貰ったから太助さんを連れて来てくれる?」
「はっ。畏まりました。それと従軍はいつの予定で?」
「ごめん。大事な事忘れてたな。一応準備出来次第。2~3日後と言ってたからいつでも行けるように。剛力君は無理に土塁固めしなくてもいいから」
「我らにかかれば半日あれば出来ます。野田殿!青木殿!励もうぞ!」
「「当たり前だ棟梁!!」」
「作業工程……転圧で弱い土壌を………タンパーは皆で行う……砕石は某が用意……」
いや野田さんと青木さん達は、いつの間にあんな仲良くなったんだ!?棟梁って・・・。大工にでもなったんか!?それにこれを半日ってどんだけ凄いんだよ!?
また聞いた事ない事、剛力君が言ってるぞ!?
「剛力君!!任せる!怪我しないように頑張ってくれ!褒美は・・・バームクーヘンでどうかね!?」
「バームクーヘンですか!!?野田殿!青木殿!急いで取り掛かろうぞ!!!」
剛力君がバームクーヘン好きな事くらい調査済みよ!
「剛力〜!怪我して腕割れたりしても私達が手術してあげるから安心して怪我して大丈夫だよ〜!」
鈴ちゃん・・・。恐ろしい事言うなよ!?安心して怪我して大丈夫って・・・。
オレは城の慶次さんの部屋に行った。
「慶次さん。今大丈夫ですか?」
「おう!剣城か!どうした?」
「滝川様は明智様にオレの事内緒にするように言われてるから渡しにくかったんだけど、このトランシーバー渡しておいてくれます?」
「あぁ。確かに明智殿には素性は隠しておいた方が良いな。分かった。叔父御に渡しておこう。それと叔父貴だが此度から帰陣が許されたそうだ」
叔父貴って誰だ?利家さんか?
「正確には森部の戦の折に帰陣を許されておったのだが、叔父貴も中々変わり者でな?それで諸国放浪して戻って来たみたいなんだ。それで俺も久しぶりの挨拶をしてお前の事を話したら、木下のおっちゃんもお前の事を話しだして、一度会ってみたいと言っていたぞ?」
「利家様の事ですよね!?分かりました。落ち着いたら一度挨拶させてもらいますね」
準備すると言っても既に出来ているから特にオレはする事が無かった為、蟹江の民家を見て回った。特に見栄えはしないけど、どことなく清洲の人達よりしんどそうな感じの人が多いな・・・。
「お菊さんいる?」
「はっここに」
「栄養補助食品を渡そうと思うんだけど、城下の人達って何人くらいいるの?」
「500人は居ると思いますが・・・」
意外と多いな。さすがに全員分は用意できそうにないな。
《栄養補助食品カロリーバーチョコ味×200》1個¥100
効能・・・・ご飯を食べる間もない忙しい貴方にカロリーチャージ。健康維持に必要なビタミン、タンパク質、ミネラル、鉄分etc。全てが詰まった物。
《エナジードリンク×100》1本¥100
効能・・・・エナジーと名の付いたジュース。高麗人参、アルギニンが少し入っている。即効性のエナジードリンク。
「金剛君、琴ちゃん、鈴ちゃん達も集合!」
「どうしましたか?」
「一日オレは手が空いたから城下を回ろうと思う。大膳君は至急村に行き米の補填を。今から家々を回り元気そうな家の方には米を、病気や元気が無さそうな家の人にはこの二つと米を渡そうと思う」
「さすが我らの殿!!荷物持ちを俺に任せて下さい!」
いやお前は今しがた伝令をお願いしただろ!?
「大膳!剣城様はお前に村に米を頼んだであろう!?早く行かないか!!」
「予備米として、通常より米俵を10程多めに用意してありますが、不足でしょうか!?」
クッ・・・・!大膳のくせに用意周到だな!?
「素直に褒めよう。とりあえず兵糧とは別に10俵あるんだろ?そこから1俵空けて分けていく」
「金剛!準備とはこのように致すのだ。覚えておけ!」
「ぐぬぬぬぬ・・・。大膳、貴様・・・」
あの勝ち誇ったドヤ顔・・・。それに上から目線・・・。変な踊り・・・。オレにあんな態度したら一生便所掃除と雑用させてやる!!
そこからオレは家々を回った。痩せてる人しか居ないし、家を訪ねても奇怪な顔して取り繕ってくれない人ばかりだったが、中には部屋に上げてもらい少ない食糧だろうゴボウだけの汁を出して貰ったり、一度話しだすと止まらなくなったお婆ちゃんが居たりと、気分転換にはなったが・・・やはり中には何かの病気にかかっている人も居た。
「だから私達が貴方を治します!なので診察をさせて下さい!」
「嫌じゃ!わしゃこのまま生きてても食う物も畑も無い!死んだ方がましなんじゃ!」
何と言おうとオレ達を拒否する人も居たがそんな人を無理に治療する気は無い。本当はしたいけど軋轢を生むつもりは無いからな。そんな人達には米を2キロ程と栄養ドリンク、栄養食品を置いて家を出る。
「さすがに皆で同じ所を回ってたら一日で終わらないから、手分けしよう。治療が必要な人が居たら鈴ちゃん達は各々の判断で。ただ時間が無いから手術は遠慮するように。オレが出した薬類は持ってるな?」
「はい!スーパーエンジェルゴッデスフェアリー軟膏とアスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン系統の解熱剤と………」
「うん!鈴ちゃん大丈夫!後は任せた!」
鈴ちゃん達に医療の事聞くのはダメだ・・・。全く分からん薬を言ってきやがる!!
オレはその後お菊さんと回ったが、幸いオレが回った家の人達は栄養失調気味な人が多かったので、米と例の二つを渡す。
『ありがたや〜!』 『仏様だべか?』 『あんたの事ぁ忘れねぇ〜』
等々、聞いたことない方言や訛りが酷い言葉で色々お礼を言われた。オレの持ち回りが終わった頃には暗くなり始めていたが、益氏さんがオレを呼びに来た。
「殿がお呼びです。こちらへ」
本当に必要最低限しか話さない人だな。
「お菊さん?大丈夫だとは思うけど後はよろしく。金剛君や奏ちゃん達に、ありがとうって言っておいてくれる?」
「はっ。剣城様お疲れ様でした・・・・。ありがとうございました」
「うん?なんて?最後なんか言った?」
「いっ、いえ。なんでもありません!」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
城に入るまで間が保たん・・・。何でこんな寡黙なんだよ!?
「何故、何故下々の民に施しをした?お主はそんなに余裕があるのか?」
初めて話し掛けられたが、滝川さんの時の初対面より殺気が強い件。どうもありがとうございました!
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