カレーは正義

 「下の方で城の下男、下女がてんやわんやしておったぞ?また収穫したそうだな」


 「はい。未来の肥料で育てたら1日で実がなります。既に料理頭には伝えてますので収穫した物も出してきてくれると思います」


 「失礼します。お待たせしました。村から納められた果物です」


 「これまた雅な果物だな。どれ一つ・・・・。これは美味いっ!この赤色のは何と言うのだ?それとこの黄色っぽいのも汁が甘くて美味いの」


 それからオレは収穫した物の名前と食べ方を教えて、特にイチゴは肥料を使えば安易に作れるので早くこの辺の村に回し、量産したら他国に贈り物としても活躍できるという事を言った。


 「たかが農業だと侮っておったわ。それも1日2日でこれ程成果を出すとはな。見事!大儀である。褒美を出そう。それにこれ程の物だ。それなりに肥料とやらも貴様の技で銭が掛かっておろう?」


 えらい、信長さん今日は優しいな。良い事でもあったのか?


 「銭は掛かりますが然程でもないので大丈夫です。それに褒美もこの前貰ったばかりだし家も建てて頂いてるので大丈夫です。なので私ではなくて村の人達に褒美を渡して欲しいです」


 「ふんっ。欲の無い事は相手に疑心を生み出す。じゃが貴様は裏表が無い顔をしておる。じゃが何も褒美を出さんのはワシの沽券に関わる。銭5貫を褒美とする。それとサル!お主は、即刻人を集め村を拡張せよ」


 「はっ。畏まりました。明日には150名程連れて行く予定です。それとこの後、此奴をお借りしてもよろしいでしょうか?」


 「ワシの夕餉と甘味が終われば許す」


 「あっ、それと村の人の褒美は私の技で酒でも振る舞おうかと思いますがよろしいですか?」


 「それは貴様に任す。少し早いが腹が減った。何か作って参れ。それと今日の甘味も食べた事ない物を所望する」


 それから木下さんは別室で待機してるという事でオレは急いで台所に行って、


 《業務用カレー粉50kg》¥10000


 《鶏肉12kg》¥8000


 を購入してジャガイモ、人参、玉ねぎ、鶏肉を一口大に切り、カレー粉と水を入れて具材を煮込んだ。


 「これが基本となるカレーの味です。ここから更に煮込んだり、今日収穫した果物を摺り下ろしたりしても味が変わり美味しくなります。これを米の上によそって食べます」


 「こんな下痢みたいなのが食えるのか?たしかに香ばしい匂いはしておるが・・・」


 「頭!!これ凄い美味いですよ!!!」


 「馬鹿が!ワシより先に味見するんじゃねー!ワシが味見を最初にするって決めてるんだよ!(ハスッハスッハスッ)」


 伊右衛門さん、味見じゃなく普通にガッツリ食べる件。肉に忌避感ないでしょ?ってくらい食べてるんですが・・・。


 「このカレーの良いところは多めに作って次の日に火を入れ直しても美味しく食べられるところです。では信長様にお出ししてきますね」



 「お待たせしま・・・」


 「遅いっ!!いつまで待たせるんだ!こんな香ばしい匂いさせて待たせおって!ワシをこんだけ待たせたのだ。美味しくなかったら素っ首叩き斬っ・・・・(ハスッハスッハスッ)」


 いや、良い食べっぷりじゃないですか!?てか、少し遅れただけで首斬られるんすか!?戦国時代怖くないすか!?


 「まぁまぁの美味さじゃな。もう一杯よそってこい!」


 偉そうに!何がまぁまぁだよ!!


 ・・・・・・・・・・・。


 ここでオレは強烈なプレッシャーを感じた。しかも信長さんからは見えない所からだ。


 「市とお濃か。この匂いに釣られたか」


 「カエルよ!妾も兄上様と同じ物を所望する!」


 糞っ!!オレはパシリか!木下さんとの約束もあるので素早くカレー2つと信長さんのお代わりを一緒に持って戻ってきた。


 「大儀である。妾も今宵の甘味を期待してるぞえ」


 「兄上!見た目は酷いですが何やら香ばしい匂いがしておりまする!(ハスッハスッハスッ)」


 お市さんもガッツいてるよ・・・。それにしても可愛い・・・。素足で踏ん付けられたい・・・。


 「これだけではまだ足りぬ!もう一杯よそってこい!」


 「いや、さすがに食べ過ぎです!後でしんどくなると思いますのでこれくらいで止めておいた方が・・・」


 「貴様はワシがこのカレーに遅れを取るとでも?ワシの腹が先に音を上げるとでも?」


 いやいや、またこれですか!?食事は戦ですか!?


 「この後、甘味もありますのでその事も考えていただければ・・・」


 「ふん。ならば今日のところはこの辺で堪えてやるとするか。それに美味過ぎて勢い付けて食った訳だが、肉の他にも収穫したらしき物が入っておったが、これも台所衆が作ったのか?」


 「はい。作り方は教えてますので食べたい時にこれからは食べられると思います」


 「であるか。では、このかれーとやらは3日に一回は食すとしようか。未来とやらの食事は凄いの。食に興味が無かったワシが今じゃ1日の楽しみになりつつある」


 オレが作った訳ではないが褒められたら良い気分になるな。オレは褒められたら伸びるタイプなんだよな(自称)。


 《和三盆ケーキ×3》¥1500


 《パックミルクコーヒー×3》¥300


 ケーキとコーヒー牛乳を購入してストローを刺して渡した。


 「今日もケーキですがこの黒い所はチョコレートとは違いますが、食べたら分かります。かなり甘いケーキです。それとこのケーキに合う飲み物を出しました。お召し上がり下さい」


 「ふん。貴様も分かってきたではないか。いずれこのけーきとやらも城で作れるように致せ。それと松平の同盟の事、忘れるなよ。こーらとけーきとかれーを出すように致す。下がって良いぞ」


 そこからお辞儀をして部屋を後にして、小走りで木下さんの部屋に向かう。


 「すいません!お待たせしました!かなりお代わりをしたので時間が掛かりました」


 「この匂いは、やはり夕餉か・・・。ワシもご相伴に預かりたいのう・・・。これは未来の料理なのか?ねねにこれからの渡りは付けておるがさすがにこれが何という料理か分からんから作れんだろうな・・・」


 マジでガッカリし過ぎだろ!折角、奥さんが作る愛情たっぷり料理があるんだからそれで良いじゃん!!確か恋愛結婚じゃなかったっけ!?


 「この料理はカレーと言う未来の料理です。材料は収穫した物で作れますが、鳥の肉が入っております。忌避感が無いのであればそんな難しくないので作り方、奥さんに教えますよ?それに材料もお渡ししますよ?」


 「流石、剣城殿!!分かっておるではないか!ワシは元農民だからな。そこら辺の野鳥を食べたりしておる。忌避感なぞ無い。では早速ワシの家に行こう」


 そう言われオレよりだいぶ背の低い未来の秀吉さんの背中の温もりを感じながら家に向かった。



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