鋭すぎる未来の秀吉

 「木下様、お疲れ様です。書状を頂いていたみたいで要望の物をお持ちしました」


 「おー!剣城か。済まんな。だが今ここで貰っても困るから後でワシの家で出してくれんか?それでワシの家で夕餉でもどうじゃ?」


 「それは大変ありがたいのですが、信長様の夕餉を作らないといけないので少し遅くなりますよ?」


 「構わん。剣城にねねも紹介したいのじゃ。ねねの方も剣城にちょこれーととやらのお礼を言いたいそうじゃ」


 「そんな全然いいんですけどね。それにまだ拝見はしてないですが対価も頂いてますので」


 「なに!?まだあの刀見てないのか!?いや、済まん。取り乱してしまった。ワシは刀の腕は然程でもないが、刀収集が好きでな。剣城に渡した刀はそこまでではないがちゃんと銘があるのを渡したのじゃ」


 「知らなかったです。すいません、今ここで確認しますね」


 そう言ってボックスから頂いた刀を出したが、どうせなら皆の刀を見てみようと思い、タブレットの上に乗せ鑑定した。


 《日本刀3本銘なし》¥900000


 《山城国の刀工の短刀》¥3000000


 「んっ!?!?!?!?えっ!?!?!?!?」


 「どうしたんじゃ?まさか偽物じゃったのか?」


 「いやいや!偽物か本物か言えば本物です。山城国がどこかは分かりませんが山城国の刀工の刀だそうです。買い取り金額が300万円です!!!!!」


 「訛りが酷くて分からんのう。"さんびゃくまんえん"とはいくらなのじゃ?それとも未来では銭の事を"さんびゃくまんえん"と言うのか?」


 「いや、すいません。思わず興奮し過ぎました!未来では銭の事は円と言います」


 んで確か昔大河ドラマで見た山内一豊の奥さんが嫁入りの持参金で東国一の名馬を買ったシーンを見たがあれが確か400万円くらいの価値とか言ってた様な・・・。


 「それで300万円がどれくらいかと言うと、この近辺で1番の馬が買えるくらいです」


 「ほーう。なら中々良い値段で売れたのじゃな!」


 「いや、まだ売ってはいません。むしろこれからも銘ある刀は売りません。売ろうと思えば売れますが色々と制約があり・・・」


 「そこまでじゃ!」


 「お主、嘘をついておるな?お館様と最初謁見した時も制約があると申したな?今も制約があると申したが目が泳いでおる。ワシは剣城の事を気に入っておる。ここだけの話にする。正直に申せ」


 うわっ!鋭過ぎるぞ!それに刀の事はそういう意味じゃないんだけどな。


 最初皆の前で1日、10個程度と制約があると言ったのに、それ以上に皆に渡してるのに甘味パワーのお陰か、信長さんにすらツッコまれなかったのに。流石!未来の秀吉さん!


 「はい。本当は制約なんかありません。最初自分の保険の為に言いました。何個でも銭さえあれば購入できます。

 私は未来の戦が無い世から来ました。

 この時代は間者には拷問なんか普通に行われてると習ったので拷問され無限に物を購入させられるのを防ぐために嘘を言いました。すいません」


 「お館様の畏怖は凄い。それに少々突っ走るところもあるが、筋道が合っていれば優しい方だ。いずれ剣城の口から今の事を申すのだぞ?」


 「分かりました。わざわざありがとうございます。流石ですね。信長様から未来の事は語るなと言われてますので多くは言いませんが、流石は木下様です。

 これだけは言ってもいいかな?織田信長という人物の次に木下様は未来では有名になる人ですよ」


 「何!?それは本当か!?ワシが何かでかい手柄を立てるのか!?教えろ!!教えろ剣城よ!!!」


 いやいや、信長さんと違って興奮し過ぎだろ!!!!


 「いや、さすがに言えませんよ!未来の行動をここで言えば多分木下さん、それに他の方も思う行動が取れなくなるし、これからの行動が歪んでしまいます。それが戦の折なら時に致命傷になったりします」


 「初陣もしておらん奴が偉そうに!分かった。自分の未来は自分で作ろうかのう」


 それからオレは刀の事、この時代で有名な刀などを売れば二度とこの時代では手に入らなくなる事を伝え、この時代で松茸があまり価値が無いが未来では価値が高いのと、いずれ海で捕りたい魚が要る事を伝え、それらを売って資金を作るように言った。


 「中々に剣城の技は難しいもんなんじゃな。海は近くじゃからいずれ思う魚も取れるだろう。じゃが、ワシが渡した短刀は売っても構わん。

 家に吉光の刀は20振り近くあるのじゃ。その中で言葉は悪いがよくある短刀を剣城に渡したのじゃ」


 「そこまで言うなら分かりました。これだけは売らせてもらいます。後、銭が皆と一緒で、この人はこれだけ銭があるとか分からないので、出来るだけ公私混同はしない様に普段はこの時代の物で生活するつもりなので、そこら辺だけよろしくお願いします」


 「まぁ、戦の準備や普段は給金が出されると思うぞ?あとワシは今後は甘味と酒と女子(おなご)が喜ぶ物が欲しいのう」


 何が未来の天下人だよ!!目の前に居るのは鼻の下伸ばしまくってるただのプレイボーイじゃん!!


 「貴様、今ワシを馬鹿にしおったな?」


 鋭過ぎるぞ!未来の秀吉さん!!!!

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