稲葉山城 宝物庫
「剣城様、大殿様からの伝言です。今すぐ向かうから待てとの事です。それと斎藤龍興に関しては『あんな虫程にもない奴は捨て置け』だそうです」
既に斎藤龍興は信長さんの眼中になしと。史実と同じだな。確か長島に辿り着きどこかで討死にだったかな?死ぬ前に酒池肉林の極意を聞いておかないと!
「野々村さんでしたっけ?竹中さんに紹介されたと思うけど、一応織田軍の料理ご意見番です。貴方が何が得意とか知らないけど、もし『俺は織田の役に立てる!』と言えるなら、私から口添えしますが?竹中さんとは仲が良いようですし」
「ふん。主君を変える気はない!そこの誰ぞと一緒にするな!」
へぇ〜!この状況でそこまで言えるのは流石だな。the戦国時代だな。俺は斎藤龍興みたいな遊びばかりの上司は嫌いじゃないけど、人を人と扱わない人は嫌いだ。
「それと、不破さんでしたかね?貴方は問答無用です。切腹、斬首はさせませんよ」
「そ、それは拷問するという意味か!?」
「へ?いやいや。人望がありそうな貴方をここで殺してしまえば、勿体ないからですよ!嫌でも生きて働いてもらいますよ!見た感じ貴方は内政に長けてそうですし。斎藤の民の人達の信任も厚そうですからね」
「ほほほ。そうそう。私が仕える芝田殿は私と同じ平和主義な考えですよ?まだ少ししか語らえておりませんがね。それになんと言っても部下と距離が近く、飯が美味いのですよ」
おい!竹中!?実は飯目当てに降ったのか!?
「ふん。飯なぞ腹に入れば同じではないか!」
「分かっておりませんね。飯の豊かさは国力が図れます。下っ端の兵、農民の暮らしを見ればどれ程相手に余裕があるか。戦って良いか悪いか。勝てるか勝てないか。何日間継戦できるかできないか。全ては下々の者を見れば分かるもんですよ」
「何をッ・・・・・」
「この者達を見てみなさい。皆、甲賀の出身者だそうですよ?私は人の生まれで侮蔑なんかはしませんが、この小川殿の身体を見てみなさい!身体中の筋が大きいでしょう?この身体を維持する為の食糧が、織田にはあるのです。私はその秘密を探りたい」
いやどんな探究心だよ!?オレの村に来たら多分ガッカリすると思うぞ!?
「それともう一つ。貴方達が恐れを成したであろう、城の壁を・・・城門を吹っ飛ばした兵器。まだ見ぬ兵器と私の知略が合わさったら、さぞ気持ちいいでしょうな・・・。ほほほ・・・ははは・・・はーっはっはっはっ!!」
おい!?竹中も内なる自分か!?平和主義とは全然違うじゃねーか!?お前もバトルジャンキーか!?
「おいっ!ヒヨッコ!(ガンッ!)ワシは元からこの身体じゃ!」
いや小川さんも嘘つけっ!!来た時ヨボヨボだったじゃないか!?
「おっとこれは失礼。私、稀に自分に酔う事がありましてな!?その時は殴って頂いて結構」
まんまオレと同じじゃねーか!?
「剣城ッ!!見事である!」
やっと信長さん来てくれたか。
「ワシが織田信長であるッ!この城の城主は長島に逃げておる!忠臣の貴様らを放っておいてだ!代表は誰かおらぬか!?」
「某が・・・。某は不破光治と申します・・・」
「続けよ」
「此度の戦は完敗でございます。我らは以後織田様に従いこの地をお渡しします。戦に参加した斎藤の民、後の者共をどうか某一人の咎にて治めて戴きたく・・・」
「其の方らも不憫ではあるな。本来率先して士気を上げんといかん城主が一番に逃げ、民を盾にする武士の心あるまじき行為だな」
パタンッ。パタンッ。パタンッ。パタンッ。
リズムを取り出したな。史実なら確か斎藤の将は織田に仕えるか切腹するか、選ばせた筈だったから大丈夫な筈だ。
「織田様、私は──」
パタンッ!
「貴様らの処遇を言い渡す。以後、織田に仕えるなら許そう。ワシはここで止まる男ではない。これから先、優秀な人材が必要だ。飽く迄(あくまで)斎藤に忠節を誓うと言うなら切腹を許そう。少し時間をやろう。よく考えておけ。竹中、貴様はこっちじゃ」
オレも袖口を掴まれ隣の部屋に竹中さんと連れて行かれる。
「剣城!信任厚い者一人、同席を許す」
「はい。お菊さん一緒に」
お菊さんの名前呼んだらゆきさんが寂しそうな目に見えたけど・・・。気のせいだよな。小川さんも恨めしそうな目をしてるけど・・・。気にすれば負けだ。
「座れ。まず一言。・・・・よくやってくれた・・・」
おいおい!?信長さんどうしたんだ!?かなり喜んでくれてるんだが!?
「ここまではお膳立ててやったが、神速の如き攻略は見事と言う他ない!」
「はい。褒めて頂きありがとうございます。部下のお陰です」
「その部下をよく統率しておる。そうがんきょうで確認したがあの野戦砲と申したか?それに一際大きい国友銃があったな?開発、運用、見事である!それと竹中だ」
「はっ。遅れて申し訳ありません。俗世から離れようともしましたが、まだその時ではないと思いまして。この竹中半兵衛重治。これより織田家に忠節を誓い、芝田殿の配下にお願いしたくあります」
「貴様は物怖じせぬようだな」
「表情を顔に出さず相手に内情を悟らせない為に、覚えた技でございますよ」
「ふん。剣城の元で励む事を許そう。名目は与力だ。剣城が開発した兵器の運用方法などを、織田の他の者に教えるように」
「はっ。ありがたき幸せ」
「竹中、外せ」
「名を菊と申したな?竹中と此奴の悶着を伝えよ」
お菊さんは単純明快に少し殴りあったが和解した。竹中はオレに対して理解あり、織田に対して理解あり。オレの考えに賛同。と答えた。
「ふははははは!誠に殴るとはな!傑作だ!だが!貴様が変な方にいかなくてよかったのう。竹中に感謝しておけ!後はワシがやろう。下がって休んでおけ」
あの殴られた出来事もこの事見越してなのか!?だからわざと竹中は殴られたのか!?
「一つだけ・・・。もし不破さんが斎藤に忠節を誓うと言っても、あの人だけは死なせないようにしてくれますか?」
「ほう。理由は?」
オレは突入した時の顛末を言い、この地を復興するのに使える事を言った。
「分かった。そうしよう。それと義父殿の宝物庫がある筈だ。ワシが見る前に3点程見繕っておけ。今回だけは目を瞑る」
「え!?いいんですか!?」
「今回だけだからな?他の者にも言わなくて良い。ワシが見れば渋ってしまうからな。未来とやらは何が価値があるか分からん!」
「ありがとうございます!!!!!」
「ふん。調子がいい奴め」
オレはルンルン気分で竹中さんに宝物庫の事を聞き、信長さんに許しを得てる事、この事は絶対他の人に言わない事を伝え、場所を教えて貰った。場所は階段の横の隠し扉?みたいな所に部屋があり、そこに色々な物があった。
「えぇぇ〜・・・・。何か地味だな」
「なっ、何を言っておりますか!?この甲冑は但馬の…いやいやこれは若狭の…」
オレより竹中さんの方が興奮してるんだが!?
「剣城様は嬉しそうではありませんね?」
「そうだね。イメージは扉を開けると金銀財宝があるイメージだったからね。この時代にそんな物無いのは分かってるけど、どうしてもね・・・」
「未来のイメージは私達の考えとは違いますね」
「う〜ん。まっ、価値ある物もある筈だし、3つもくれるって言うんだから選ぼうか!どうせならオレ、竹中さん、お菊さんで一つずつ選ぼう!」
「私が選んでもよろしいのですか?」
「別にいいよ!なんならお菊さん頑張ってくれてるから欲しい物あるならその一つはお菊さんにプレゼントしてあげるよ」
「え!?そんなの悪いです!ちゃんと──」
「はい!ストップ!いいから貰っておいて!欲しい物があるかは分からないけど、普段のお礼です。だからこれからもお願いします」
「・・・・ありがとうございます」
「お前が剣城か?」
「え?そうですけど」
なんか、ヤンキーみたいな大男に声掛けられたんだが!?170センチ半ばの俺より身長高いんだが!?
「悪い!悪い!俺が前田利家だ!」
「あぁ!利家さんですか!!!どうもどうも!!」
思わず握手してしまった。
「慶次とまつが世話になった。慶次はあんまり礼儀がなってない奴だが、頼りにはなる奴だ。これからも使ってやってくれ」
「いえ、私の隊の一番の稼ぎ頭ですよ!あっ、お近付きに・・・お菊さん?利家さんにチョコレートとコーラ渡してくれる?」
「女の護衛とは珍しいな。これはちょこれーとか?まつから送られて食べた事がある。すまん。それとこの黒い水は?」
「飲めば分かります!信長様が一瞬でハマった飲み物です!」
「なに!?殿が!?ならば我も飲まねばなるまい!」
オレは蓋を開けて飲ませてあげた。
「うっうっ・・・。これは・・・ちょっと失礼・・・。(がぁぁぁぁ────)」
巨大なゲップいただきました!
「いやこれは失礼。口で暴れる水は初めてだ!美味いな!可成兄貴にも聞いたが美味い酒なんかもあるんだろう?」
「ありますよ!また今度お渡ししますね?『勝手に渡すな』って信長様に言われてるんです」
「そうか。すまんすまん。じゃあまた今度の楽しみにしておくよ。なんか困った事があれば我に言ってこいよ?じゃあな!」
慶次さんとは違う大きな人だったな。あの人とは仲良くしておこう。たしか義理堅い人だったよな!?
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