島津義弘の漢気

 船に乗ってくれとの事で、これまた縄ロープから入り込んだ。もっと乗りやすいような造りにしてくれよ!と思う。


 そして船内に案内されたが、なんと言っても汚い!臭い!獣臭がするのだ。案内する人も少し臭い。


 「どうぞこちらになります」


 「お!?剣城様!?」


 そこには杉谷さんが女を横に座らせて、酒らしき物を飲んでいた。横には色々な箱が並んでいる。ただ一つ・・・何でこの女は杉谷さんの股を触っているのだ!?許さんぞ!!!


 「杉谷さん・・・・まだ独身だったと思うけど・・・」


 「い、いや違うのです!これは違うのです!明の者達が──」


 「岐阜に戻れば岐阜城20周、速足で・・・腕立て100回・・・懸垂200回・・・」


 「勘弁して下さい!申し訳ありませんでした!!!」


 「なんだ?歓待されておったのか?」


 そこから長い長い杉谷さんの言い訳が始まった。明の意図を知ろうと思ったや、オレの期待に応えたいが為の行動だった、とかだ。


 「チッ。どうせオレなんか・・・」


 「剣城様!?ゆきには黙っておきます!おい!明のはおゆー!この方は1番偉い方だ!上質な女を用意してさしあげろ!」


 「ほう?お前は国に女を残しておるのか?おいは妻以外の女を抱く奴は嫌いだ!抱くなら妻に迎えいれろと思う。そうは思わんか?尾張の剣城君?」


 これはあれか・・・試されているのか・・・。全部杉谷さんのせいだ。そうだ。間違いない!

 

 「杉谷さん?オレはゆきさん以外興味ないのだよ!義弘さん!?本当にそうですよね!嫁さん1番ですよね!」


 「確かにだな。おいも4人の妻に愛されておるのだ!ははは!」


 は!?4人の妻だと!?クソが!!!ファッキンサノバ島津!


 「えぇ〜・・・よければこちらへお座り下さい。お近付きになりたく、配下様をお呼びしたのです」


 「お近付き?何か物を買って欲しいのかな?」


 「いえ、むしろ逆にございます。そちら様のあの船・・・お名前は存じ上げませんが、鉄の船とお見受け致します。それをどうやって動かしているのか、教えていただきたく・・・勿論、ただとは申しません!」


 「見る分には構わないけど多分、分からないと思いますよ?」


 「見ても良いと?それに分からないと!?」


 絶対に分からないだろう。オレも分からんし。エンジンなのか、ヒヒイロカネが放つ謎の成分で動いてるのかも、分からないし。


 それからこのハオユー?って人がチャーハン擬なんかを食べさせてくれた。普通に美味くない。さっきのさつま汁の方が何倍も美味い。


 「どうも貴方様達は、我らの飯がお口に合わないようで・・・急な催しだった為、申し訳ない。つきましては後日、もう一度歓待させていただきたく。その折には我らの主にもお会いしていただき・・・」


 「お前等の主とは誰だ?」


 「えっと、貴方様は?」


 「おいか?おいは・・・舟渡しの忠平だ!」


 何で幼名を使うか分からないけど、素性を隠して偵察か!?その割に偉そうだよな!?ただの舟渡しが誰だ?とか聞く訳ないよな!?


 「朱華様という方にございます」


 「知らんな。今度会えばよろしく言ってくれ!その時の舟渡しもおいが致そう!じゃあな!はおゆー!」


 「暫く私もここに滞在する予定です。また機を見てお話ししましょう。では失礼致します。あっ、ご飯美味しかったですよ?これをどうぞ。醤油です。もしかすれば坊津の町にて売ってるかもしれませんが、炒飯にこれを適量入れると味が昇華しますよ?」


 「これは・・・・いやいただきましょう。必ずや会談を・・・」


 何でそんなオレ達に興味あるんだろう?船が珍しいのは分かるけどそんなにか?


 「あれは何だったのだ?」


 「うん?醤油ですよ?島津様は知ってませんか?」


 「そんな他人行儀な呼び方はやめてくれ。義弘で良い。それにあれは初めて見た」


 「なら義弘さんって呼ばせてもらいます。これ良ければあげますよ。飲み物じゃないですからね!?飯に少し味を付けたい時なんかに使って下さい!たまりとも畿内では言ってますよ」


 「味噌のあれか?」


 「ほら、知ってるじゃないすか?まあこれは更に濾して火入れしたり、出汁を混ぜたりした物です。オレの殿の織田信長様って方は台所衆の人に、『必ず飯にこれを入れるように』って言うくらい好物ですよ」


 「ほうほう。これまた兄者達に自慢できるな!とりあえず明日迎えに来るから、内城に一度来い!でもよくよく見ると誠、この船は凄いな。鉄も然り、これだけの物を造るとは・・・尾張は栄えているのだな」


 えぇ。これはとあるスーパーにて特注なのですよ!なんと言っても、行き先と時間が指定できるのですよ!そして海を割るレールガン!水鉄砲が装備されてるのですよ!なんて言えないよな。


 「えぇまぁそれなりにはですね。まだ途上ではあります。ここ九州程ではありませんが、尾張も敵がそれなりには居ますからね?」


 「おい達を知ってる口振りだな?まあ良い!ではまた明日な?」


 何だろう。どうしても島津義弘は尊敬してしまう。漢気溢れる何かを感じる気がする。ただ・・・4人の奥さんは許せないけど。



 「鈴ちゃん?鞠ちゃん?あのチャーハンは不味かったよな」


 「あれなら私が作った方が美味しく作れますよ!」


 「確かにな」


 「・・・汁も塩の味しかしなかった」


 「まあ鞠ちゃんの口にも合わなかったんだな」


 「剣城様?アイスが食べたいです」


 「オッケー!呑兵衛の馬鹿野郎共は明日まで寝させて、オレ達だけで食べよう」


 この後、竹中さんだけ目を覚まし、後は全員寝たままだったがバニラアイスを食べ、海の上で初日を終えた。




 「「「「申し訳ございませんでしたッ!!!」」」」


 「いやもういいよ?大野さんに関しては、やっぱ凄い人なんだなぁと分かったし」


 「え?」


 「いや、明の人達が作ったチャーハン食べたんだけど、大した事なかった。ってか不味かったんだよ。それで大野さんが如何に美味い飯を作れる人なのか、と再理解したのですよ。それに比べて・・・はぁ〜・・・・」


 「な、何だよ!?」


 「いや慶次さんが潰れてしまうとはね?あれだけ豪語してたのにね?はい。ウコン飲んで。皆も飲むように!」


 「がははは!確かに美味い酒であった!だが些か、岐阜の酒の方が美味かったとは思うがな?」


 「ほほほ。皆、情けない!私は一人、自力で起きましたよ?ほほほ!」


 いや竹中さんも同じ部類だよ!!


 「まあもうこのウコンがあるから、潰れたりしない。しかも、もしかすれば島津当主と飲むのだろう?」


 「そうなんだよ。だから皆もウコンを持っておくように!聞けば昨日の倍以上は、最低飲まされるらしいよ?」


 「倍ですか・・・」


 「望月さんは無理して飲まなくていいですよ?代わりにジュース出すのでそれを飲んで下さい!無理して飲ますのはパワハラですからね」


 まあ島津さん達はパワハラ凄そうなイメージだけど。



 「おーい!迎えに来たぞ!!」


 「野田さん?上げてもらえます?」


 「御意」


 さぁ内城だっけかな?島津貴久さん・・・どんな人だろうか。桜島も気になるな。噴火とか怖いけど見てみたいな。

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