女性の七つ道具の一つ

 やっと信長さんが帰り、今度は沢彦さんとの勉強会が始まった。沢彦さんの質問は根掘り葉掘り聞かれるので、オレが出した教科書なのにたじたじになってしまった。


 「これは未来では数字を表すのです。1234567890とあり、そこから更に上の数字は10と表し、この事を総称してアラビア数字と言います。ちなみにこの数字は私が居た未来では、この世界全てで通用する数字になります」


 「確かに覚えれば楽に数を書ける!これは中々に素晴らしいですな。0という何も意味が無い様に思う数字でも意味があると・・・」


 「そうですね。数字を表す意味では大事です。この刻の計り方も12時及び0時を基準に、未来ではこれを時間は12進法で、詳しく言えば秒などは60進法になり、表記は10進法とややこしくなりますが、一度月の下弦や上がりで日にちを決め、時間を決めれば伝達の間違いが起こりませんよね!?」


 オレは自分でも何言ってるのか分からなくなり、ごちゃごちゃになりながら沢彦さんに日にちと時間の重要性、特にアラビア数字の使い易さというか、オレが今後分かる様に是非広めていってもらわないといけないから、一生懸命に説明した。


 「分かります・・・分かりますぞ!!この愚僧でも分かる!その理論、それにこの角張った字も慣れると非常に見やすい!それに漢字も色々聞いたが、多少違う意味の漢字もあるが大体同じなんじゃな!?」


 いや沢彦さんチートか!?あの説明だけで分かるのか!?オレが逆の立場なら全然分からないんだが!?


 「元は漢字は中国・・・明から伝わったと言われているので、そんなにたまげるほど変わった事は無いと思います」


 「剣城殿!!頼む!!拙僧にもっと未来の書物を恵んではくれぬか!?」


 「え?別にいいですけど、もう今の覚えられたんですか?」


 「これから拙僧は寝る間も惜しんで体に覚えさせる所存。だがこれは6〜10歳までとこの書物の最初に書かれておるという事は更に上があるのじゃな!?」


 いやマジで沢彦さん鋭過ぎるぞ!?それにもう数字理解してるのか!?


 「分かりました。色々お渡ししますので、家の者達と一緒に勉強お願い致します」



《神様印(じるし)の中学生までの参考書セット》


《神様印(じるし)の中学生からの参考書セット》


効能・・・・見て書いて覚える。3種の神器のセットが更にパワーアップして、中学生までとお得セットになりました。


習熟度大幅up。



 何か普通の効能だな?オレはてっきり中学生レベルになれば、光速の何か作れるとかそんな能力があるのかと思った訳だが。


 とりあえず近々5人は増える筈だから各12セットくらいあればいいかな。値段は・・・¥60000だった。現代ならボッタクリもいいところだが、この能力は本物だしな。


 「とりあえずこれが後に覚える教科書…書物です」


 「すまぬ。ありがとう。これで拙僧も童(わらべ)に返ったが如く金剛殿達のように勉学を学ぼう」


 「はは。頑張って下さい!家の方は言いつけてありますので好きに使って下さい。自分は奇妙様を教えないといけないので、しばらくは城で寝泊まりしますが、たまに帰って来ますので!」


 「なんと!?奇妙様もこの書物を!?いやはや中々の神童になりそうじゃ!ははは」






 城に戻ったオレはお市さんの側女さんと目が合った。何か嫌な感じがしたので以前言ってたカメラを検索する。


《インスタントポラロイドカメラ10枚使い切り》¥3000


効能・・・・その場その瞬間の思い出をこの一枚に・・・。

手ブレ、逆光、一切しない。



 「いいのあるじゃん!!これ買おう!ポチッとな。お菊さん居る?」


 「はっ、ここに!」


 「はい!お菊さん笑って!ハイチーズ!」


 「はいちーずとは!?何で笑わないといけないのでしょうか?」


 いや真顔でそんな事言うなよ・・・。


 「これは写真と言って未来での姿絵みたいな物です!」


 それからオレは試しに外の風景を撮って出来上がったのを見せた。


 「えっ!?一瞬でこの小さな箱が絵を描いたのですか!?凄い凄い!!」


 「正確には違いますがまあそのような感じでいいです。それでハイチーズとは、この写真を撮る掛け声みたいなものです!」


 「そうなのですね。では今から──」


 「剣城殿、失礼します。お市様がお呼びでございまする」


 側女さんが呼びに来た。やっぱりか・・・。最近お市さん苦手だ・・・。しかも知らない間にお菊さん消えてるし!?


 "お菊さんごめん。また後でね"


 "了解です"


 お市さんの部屋に行き、予想通りこの間の続き。本の事やカメラの事を聞かれて、さっき買ったカメラで一枚撮ってあげると、狂喜乱舞してるところに信長さんがドシドシ足音を鳴らしながら、襖を思いっきり開けて入ってきた。入ってきた瞬間、拳骨された。


 「貴様!楽しい事をしておるではないか!?ワシより先に市の映し絵を描くとはのう?」


 「いや!これは!!ずみばぜん・・・。お市様に頼まれまじで・・・」


 俺は拳骨の痛さもあったがわざと演技風に言った。こうなる事が分かってたからである。どうせこの後、信長さんも映せとか言うんだろ!?


 「お兄様!これは私が剣城に無理矢理お願いしたのでありまする。なので叱るならこの市を・・・」


 いやお市さんどうした!?てっきりこのまま放置されると思ったのに俺を庇うのか!?いきなり女見せるじゃねーか!?


 「市!お主がこの剣城と遊ぶのは構わんが、これからは未来の物を使う時はワシに言うてからじゃ!」


 やっぱお市さんに甘々だな。そう言うとそこから撮影会が始まり、この一つじゃ撮れなくなったので追加で5個程購入して、色々な撮影が始まったが急に信長さんが市さんの部屋なのに、お市さん達を下がらせた。


 「これは未来では高価な物なのか?こんなワシ自身を自分で見たのは初めてだ。こんな鮮明な絵も見た事ない」


 「説明をどうすれば良いか分かりませんが、そこまで高価じゃありませんよ」


 「5個程、都合つけられるか?」


 あの実のお陰か、この時代に慣れたからか分からないが、これも何となく先が分かった気がする。


 「敵方の偵察ですか?この写真に収めて持ち帰ると中々に状況が分かりますね?」


 「ほう。貴様も戦の“い”の字くらいは分かってきたようじゃな」


 「何となくですが。はい、どうぞ!使い方はここを押すだけです。すると横から絵が出ます」


 「敵方に取られるとマズイからな。貴様の物じゃがワシが使っても良いか?」


 「大丈夫です。存分にお使い下さい。それに仮にそれを取られても10枚までしか使えませんので、然程気にしなくて大丈夫だと思いますよ」


 「ふん。抜かせ!前までピーピー泣きよったくせに偉そうに!だがよく使い道が分かったのう。そこは褒めてやる。また何かあれば渡せ。それなりに対価は出そう」


 そう言って追加で買ったやつを持って退出した。俺も一緒に自分の部屋に帰ろうとしたら、そう簡単に帰してくれないのが織田家、我が儘姫No1のお市さんである。


 夜までこれはどうじゃ?ここはどうじゃ?と色々写真を撮らされた。途中、化粧直しをするとまで言い出したので、この時代で合っているかは分からないが、白塗りに鉛が入ってるとか何かの漫画で見た事あったので、化粧品を出してあげた。


《ファンデーション》¥500


効能・・・・普通のファンデーション。シミやソバカスを一塗りで消せる、女性の七つ道具の一つ。肌荒れやニキビなどにも良い。



《グロス》¥500


効能・・・・普通のグロス。潤いのある唇に一塗りでなれる、女性の七つ道具の一つ。唇荒れにも良い。



 女性の七つ道具て何ぞ!?初めて聞いたぞ!?


 

 一つ一つは安かったので全部買ってあげようかとも思ったが、また色々説明するのが面倒臭いし女性に化粧・・・。もとい、性格が面倒なお市さんに化粧はしてあげられないので、渡すのをやめた。


 それでオレが軽く説明しながら、ファンデーションだけ手に塗ってあげようとしたら、お市さんが引き攣った顔になったので、オレは半泣きになりながらカメラの使い方だけ教え、退散した。オレもお市さんの良い匂いにドキドキしたのに・・・。


 その日の夜。お菊さんに愚痴を溢してお市さんがお市さんがと言ってたらお菊さんも一言『・・・分かる気はします・・』と。


オレ泣いていいすか!?




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