ウナギ到着
なんとか強権を発動して、取れたウナギと清洲のウナギを交換してきてもらった訳だが・・・。この清洲のウナギは何ぞ!?何故金色(こんじき)に発光しておるのだ!?神々しさまで感じるウナギだな!?
「一番乗りで帰ってきた三左衛門です!殿、清洲のウナギ衆。頭領が言うには養殖の書物を読み、試行錯誤しておったみたいです」
小川さんがウナギ衆の人に聞いたのは、餌を当初は鮒や鯉の切り身、ミミズや手長海老などを与えていたが、食べない個体も居たみたいで、オレが出したウナギの習性について書かれている、未来の某大学が監修してる本を渡したんだが、鶏肉なども食べると書いていたらしく、例の金色のニワトリの切り身・・・カレーを作る時に余ったやつを餌にしたら・・・こんな風になったらしい。
「これはこれで凄いけどだな・・・。まっいいか!とりあえず捌きましょう!褒美は夜にでも皆に出しましょう!さっ、最後!頑張りましょう!」
それからオレ達は仕事だけはデキる男、大膳が清洲から持ってきた、森さんが作った現代ほどは黒くない醤油と、不純物が少し多い砂糖を持ってきたので、この二つと以前オレが出した味醂を使い、甲賀の人達が捌いた後の骨を水で洗い、血を綺麗に洗い火起こしした炭の上で骨を焼く。すると骨から脂が滴り落ちてくると、それを尾張醤油、砂糖、味醂とで混ぜ、後はとろみがつくまで待つだけだ。
「殿!!!!!非常に美味そうな匂いがしております!!某もう我慢できそうにございませぬ!!是非味見は某に!!!」
「何を言うておるか!?味見はこの小泉家と古今東西昔から決まっているのだ!!!」
いや小泉さんどうしたんだ!?古今東西昔からなんか決まってないすよ!?
そんな中、黙々と身と皮目の間に器用に串打ちしてくれてるのは、大野さん一族だ。あまりこの大野家当主、大野喜左衛門さんとは話す機会が少ないけど、何も文句を言わず引き受けてくれる頼もしい人だ。できれば一族からご飯屋さんなんか引き受けてくれたら、助かるんだけどな。
その後、出来立てを食べてもらいたいから丁寧に、芸術神様達が作ったお椀に盛り付け、外で作っていたから城に持って行こうとしたが、滝川さん達が逆に外までやって来た。
「こんな美味そうな匂いがする物が、不味い筈がないよのう」
明智さんがぼそっとオレに言ってきたが、やはり明智さんはグルメだな。細いけど食べる事が好きなんだ。
「さすがに外で食べるのは悪いので、中に持って行きますよ!」
「いや構わん。関殿も外で良いと言っておられる。無論ワシもここで構わん」
そんな簡単な感じでいいのか!?普通決め事って、畳の上で偉い人が集まって決めるもんじゃないの!?まあ本人達がいいならオレは別にいいけど。
その後は出来た順に渡し、滝川さん、明智さん。勝恵さんはウナギの匂いは好きだが、やはり食べられないみたいで、城の料理頭の人が精進料理を作って持って来た。
いつか精進料理も作ってみようかな。この時代なら食べる人多そうだしな。
その後はまあお決まりの言葉だった。美味いだのこれ程とはなどよく聞く言葉だ。オレは自然とドヤ顔になり勝ち誇ってしまう。滝川さんもこれには喜んでくれたようで特にお椀なんかも褒めてくれた。
「この雅な椀はどうすれば・・・・」
「この様な絵付け・・・。松に竹に梅か・・・。さぞ高名な絵師の方が描いた物なのであろう・・・。それにたまりの中に甘さもある。そしてその汁とうなぎと米の調和が素晴らしい。そこに金の松の絵が描かれ・・・これ以上無いもてなしである!殿!?」
「右衛門!静まれ!味は言わずもがな入れ物にまで拘った逸品・・・。この関家、これからいつまでも織田様に忠誠を誓いまする」
右衛門って人は関さんの側近か!?めっちゃ味付けが的確過ぎる!この人を飯屋にスカウトしようか!
「よく短時間でここまで揃えたものよ」
「本当に芝田殿、美味しい飯をありがとう。さて、私は越前に戻るとしましょう」
「明智殿?もし其方が織田に与するつもりなら・・・早い方が良いであろう」
朝倉か・・・。やはりこの世界線も足利義昭を担ぎ出して上洛するのかな?その渡りをつけるのが明智さんかな?朝倉も今動けば強いままで居られるんだけどな。福井県・・・。越前・・・。カニが食べたいな。いつか行きたいな。
その日の夜。約束通りオレは甲賀の人達に、バームクーヘンやティラミスやら鮭とばやら、色々強請(ねだ)られ労いの言葉と共に渡して1日が終わった。
次の日。早朝から明智さんと勝恵さんが帰るとの事で、お土産に色々渡した。
《ガラスコップ×2》¥300
効能・・・・ガラス職人が手作りした割れにくい普通のコップ。
《大容量日本酒4ℓ》¥2980
《焼き菓子詰め合わせ》¥1500
《最高級抹茶粉末》¥6000
効能・・・・神界の有名茶畑、神界天国園の抹茶。キメ細かい泡、砂糖なくしても甘い茶に仕上がり、茶人が点てた物を飲むと虜になる。
「越前は公家が多いんですよね?このお茶なんか喜ばれると思いますよ」
「さすが芝田殿ですね。越前の事もお調べか?勿論ありがたく頂戴致します。ではまた'近い内に'語らいましょうぞ。御免」
なんか近い内にを強調してたけど・・・。そろそろ織田に来るのかな?
それから数日の間は滝川さん達は書状を纏め、オレは甲賀の人と、壊した城門の修理や城下の壊れかけの家を修繕したり、村から春野菜の種、ニラ、新じゃが、トマト、レタス、そら豆などを村々に回り渡し、甲賀の人を一つの村に3人程残し、3日程集中的に村の人に育て方を教えて過ごした。さすがに肥料は渡せないから自然に育ってくるしかないけど、特にジャガイモなんかは腹持ちが良いし、とりあえずは大丈夫だろう。それと鈴ちゃん達が治療してた人達は実験・・・じゃなくちゃんと治療してもらったみたいで、何人か死んでしまった人も居るみたいだけど、大体は大丈夫だと聞いた。
「どんな治療したか分からないけどいい経験になった?」
「はい!これでどんな時でも大丈夫だと思います!」
「そうです!もし今後剣城様に何かあっても絶対死なせません!私達に任せて下さい!それにまだまだ欲しい物もあります!」
意欲が半端ないな。
「また要る物は、清洲に帰った時にでも紙に書いて渡してほしい。さて、野田さん達の村人の畑講習が終わったら蟹江に戻り、今度こそ海に行こうかな?」
「剣城様は次は何を考えてるのですか?」
「そりゃあれだよ!魚に塩に養殖とかも──」
「剣城様。お館様から伝令・・・。失礼しました。とらんしーばーから伝令です」
滝川さんの小姓さんかな?
「はい。それでなんと?」
〜躑躅ヶ崎館〜
「歩き巫女からの情報によりますと、織田は北伊勢を攻め始めるようです」
「ほう。それは何日前の事だ?」
「10日程前の事です。巫女は急いで甲斐に帰陣したようですが、やはりなにぶん道が険しく時間が掛かってしまいます」
「それは仕方がない。だからワシが手塩に掛けて育てた、情報を集める部隊が歩き巫女だ。松平の坊ちゃんの方は?」
「はっ。そちらも動き始めたようです」
「う〜む。武田もそろそろか・・・・・。(バチンッ!)王手だな。秋山!手緩いぞ」
「申し訳ございませぬ。降参でございます」
「お館様はどう見られてますか?」
「まあ力技で落とせぬ城があり、支城から攻略するのは時間が掛かり銭も掛かるが、確実ではある。織田が裕福だから出来る事であろうな。まぁ、まずは北伊勢は成功であろう。全軍を持ってして稲葉山城は後30日であろうよ」
「30日ですか!?あの尾張のうつけが!?」
「ワシは織田の小倅を評価しておるよ。行商人が尾張の米を持って来おったわ。甲斐の米より白く甘く、行商人はどこの寺の物か打ち明けなんだが、澄み酒も持ってきおった。ワシはあれにも織田が絡んでおるのではないか、と思うておる」
「先日頂いた澄み酒ですか!?あれも織田が!?」
「確信は無いが自信はある。何か引っかかる。織田とは今は敵対関係ではないが、いずれぶつかるやもしれぬ。それまでにワシらも海を。今川を屠るぞ」
「はっ。川中島での戦で少々兵が──」
「分かっておる。あの馬鹿上杉が大胆な作戦を立てておる、と分かっておったら勘助を死なさずに済んだものを。だがしょうがない。武田からとは隠蔽して松平を妨害しろ。侵攻を遅らせろ」
「北条はどうされますか?」
「北条に使いを出しておる。上杉には暫く大人しくしてもらおう。彼奴に構っておる暇は無い」
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