聖剣エクスカリパー2

 オレは芳兵衛君のラボに来ている。例のプラチナだ。


 信長さんにお願いお願いして、本当に1箱貰ったのだ。目方に乗せ重さを計ると、ピッタリ30キロだった。


 大小様々なカケラだがかなり嬉しい。


 「これが硝酸を作る触媒になるのですか?」


 「そうなんですよ!昔この世界に来る前にアニメで見た事があったのですよ!ハーバーボッシュ法というやつでですね・・・」


 ハーバーボッシュ法とは何か。


 オレは思い出す限り、ボールペンと紙を用いて芳兵衛君に説明する。例のドクター的、石のアニメをイメージしてもらいたい。


 まず、1000度に耐えられる容器を作らないといけないが、これはすぐにクリアできる。芳兵衛君パパから、大砲の鋳型を回してもらえばいい。


 「窒素と水素を化学反応させて合成すれば、アンモニアはできたような・・・ただ、高温高圧な環境も必要だった気がする・・・そのオレが見てた物では、尿からアンモニアを作ってたと思う!」


 「え〜と・・・それは、NH2CONH2⇔HNCO+NH3の化学式で、1molの尿素からHNCO+H2O⇔CO2+NH3で、2molのアンモニアを得られる・・・」


 また出たよ。言い出しっぺのオレが分からず、芳兵衛君はすぐに分かるやつだ。


 「多分そんな感じだと・・・思う」


 「はい!それにしてもこの図解は面白いですね!酵素を取り入れるのに空気を送り込む・・・タービンのようにすれば出来そうですね!出来上がったアンモニアを酸化させて、一酸化窒素を作る・・・ふむふむ・・・4NH3+5O2⇔4NO+6H2Oか・・・」


 「芳兵衛君?芳兵衛く〜ん?」


 あ、だめだこりゃ。いつもの発作だ。こうなれば周りが見えていないわ。


 オレは、プラチナを全部は使わないようにだけ言って、この場を離れた。落ち着けば、ゆきさんに指輪を作ってあげたいからだ。



 〜岐阜城 大広間〜


 「うむ!うむ!苦しゅうないぞよ!面を上げて良い!」


 「はっ。義秋様におかれましてはーー」


 「あぁ〜、良い!良い!上洛するに至っての挨拶であろう?其方は何を持って来たのだ?ん?」


 ''信長殿?この方で大丈夫なのか?"


 "面白いであろう?頭がこんな奴ならば、すぐに倒せそうと思わぬか?"


 "いや、当初は絵空事かと思うておったが、まさか此程とは・・・"


 "貴久殿も機嫌の良い時に、九州探題を賜ると良い。名目上だけでも威力は発揮するであろうよ"


 "信長殿・・・其方は・・・"


 「我が父よ!見てくれぃ!越前の公家だそうだ!この者が是非、京の元の所領を三好から取り戻してほしいとの事じゃ!この者は先が見えておる!予が望むものも分かっておる!」


 「ははは。御冗談でしょう」


 「言葉の例えじゃ!信長殿は我が父と思えるくらいじゃ!なぁ?構わないであろう?ムホホホホッ!おい!女!暫し待て!な?後で楽しもうぞ!よし!次じゃ!」


 

 〜岐阜城 城下 剣城邸〜


 「おっ!今日は塩サバですか!?」


 「へぇ〜!どうも木下様が北畠様に言葉包みに出向いた折に、伊勢海老のクリーム煮を作る為、釣りをしていたところ獲れたそうです」


 「へぇ〜。また美味しそうな料理を考えたな!木下様のところの料理人も凄い人なんだな」


 言葉包み・・・これは木下さんに付けられた作戦名みたいなものだ。口の上手い木下さん。六角と同じく沈黙していた北畠家だった。滝川さんが文を出そうが信長さんが文を出そうが色良い返事はなかった。


 痺れを切らした信長さんが直接説き伏せる。さもなくば、伊勢を織田家で平定するとまで言っていたが、上洛前に無駄に兵を減らすのは勿体ない、との事で木下さんが抜擢された訳だが、これをたった半日で説き伏せたのだ。


 その時から、木下さんが他国に行く事を言葉包みと言うようになった。このところ、色々な方面で活躍する木下さんが少々台頭して来た事で、佐久間さんや池田さん、丹羽さんなんかは機嫌が悪い。まぁ、この件に関しては義秋のせいでもあるだろう。


 日中は蹴鞠や短歌を読み、それを佐久間さん達に披露しているからだ。信長さんは『出仕表を作らなければならない。佐久間達に見せるといいでしょう。短歌に興味があるようです』と生け贄にしているからだ。


 

 「塩加減が完璧じゃん!」


 「まぁ!本当に美味しいですわね!」


 「「「・・・・・・」」」


 「あれ?皆、食べないの!?」


 「え?あ、いや。一緒に食べるのは・・・」


 「いいから!いいから!義弘さん仕えなんでしょう?いや、別に義弘さんじゃなくても気にしないし、食べましょう!」


 オレの家に3人泊まりに来ている。どうやら、義弘さんの悪友?みたいな人達らしく薩摩ではそこそこの有力な人の息子さん達らしい。今は義弘さんの与力とまではいかないし、小姓までではないらしいが寝食を共にしている、彦太郎さん、太郎兵衛さん、貞孝さんというらしい。


 実に礼儀のある人達で、3人で1部屋だが常に貸し出した部屋が綺麗だし、オレがアイスやお菓子を持って赴けば、必ず皆が正座して待っているのだ。


 「では、お言葉に甘えまする・・・う、美味いですな!」


 「誠・・・これは・・・美味い!」


 「ははは!金右衛門さん!美味しいって!」


 「はっ。ありがとうございまする」


 

 この夜、ネットサーフィンならぬ、Garden of Edenを開けると、メッセージの項目が点滅してる事に気付く。


 すかさずタップすると、メッセージと一緒に映像が流れた。


 『がははは!サブスクリプション1発目だ!景気良く、いいのをワシが選んだ!是非役立ててくれ!ちなみに我が盟友に頼み、返信システムを構築してもらった!何かしら感謝があるなら、ボックスの横のチェックを入れて返信を押すと、それがワシに届くようになる!甘味なら更に喜ぶぞ?がははは!』


 あ、うん。甘い物を強請るんですね。戦神様は甘い物が信長さん並に好きなんですね。


 オレは以前、金右衛門さんが『おやつの時にでもお食べ下さい』と作ってくれていた餡子餅をチェックして返信した。


 そして、届いた武器を確認する。


 《聖剣エクスカリパー2》


 ・その手に持つ時、真価を発揮するであろう。その名も聖剣エクスカリパー2。ゴテゴテの装飾がされており、目立つ。実戦には不向きな剣だが持つ者を魅了する剣。



 「おいおい!大膳が前に選んだ剣のパート2かよ!?実戦に不向きじゃダメなんじゃない!?」


 「剣城様?その剣は!?」


 「ゆきさん持ってみる?なんか持つ者を魅了するんだって」


 「え?いやです。私は目立ちたくありません」


 「だよね〜。まず、何か訳分からんくらい装飾されてあるのが気になるし、明らかにこれのせいで重たいし。まぁこれはボックスの肥やしだな」


 「クスッ!たまにそれを持って指示すればいいんじゃないですか?」


 「へぇ〜?ゆきさんもそんな事言うんだ?このっ!このっ!このっ!」


 オレがゆきさんとイチャイチャしてる夜の22時に、金剛君から声が掛かる。


 「剣城様、お休みのところ申し訳ありません。義弘様が来訪です」


 「え!?こんな時間に!?」


 「はい。出直すように言いましょうか?」


 「いや、起きてるし会うよ」


 こんな時間に普段来る事なんて無いから、急ぎの用事か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る