和平の使者
相手が退いていき、オレ達も退いて最初の所に戻ってきた。
「芝田殿、見事!!」
「剣城!やりおったか!!」
「あっぱれ!あっぱれ!」
トランシーバーで褒められたけど、いや最後の人誰だよ!?
「剣城様!お願いしたい事がございます!」
緊迫した顔で鈴ちゃん達がオレに話し掛けてきた。
「どうしたの?」
「敵方もあの砲撃を見てからの突撃は見事です。その後、慶次様や甲賀衆の見事な陣形突撃で、敵の雑兵も苦しんで居る者が多数居ます。是非私達で野戦治療を施したいと思うのですが・・・」
滅多に居ない患者さんが欲しいって訳か!?人体実験か!?
「ちゃんと治療してあげるなら許可します」
「やったぁ!!!剣城様から許可貰った♪奏、琴は急いでトリアージ!私と鞠と凛は急いで野戦病院の準備するよ!!」
いや女の子衆のやる気はなんだ!?そんなに治療したいのか!?でも5人じゃ出来る事も限られるからな。こんな時こそ大膳だ!!
「大膳君!!!それに手の空いてる甲賀衆の人!先着15名!!!」
「はっ!」「某が!」「いや、我こそ」「いやここは某に」「私こそ殿に呼ばれて…」「俺の方が」
「はい!そこまで!!!」
いや先着15名と言ったけど40人くらいが手上げてくれたんだけど!?甲賀衆の人達は凄い働き者だな。後でちゃんとお礼してあげよう。
「はい、ここから前の15人は鈴ちゃん達の手伝いをして下さい!褒美はそうだな・・・。後で考えるけど食べた事ない物渡すからよろしく!!」
「おぉぉぉ!!剣城様!約束ですよ!!!」
「某はかすていらが食べたく──」
「はいはい!また後で出しますね!戦の後なのにすいません!お願いします!」
「剣城様!俺は以前料理本で見たビーフストロガノフを食べてみたく──」
「大膳君?状況を考えたまえ!!今はまだその時ではないであろう?」
「そうだ。大膳!お前はまだ足りん!早く鞠達を手伝え!」
いやそこまで強くは思ってないけど、金剛君も大膳君に当たり強くない!?
「金剛君も手伝う?」
「いえ、某は剣城様の護衛です。盾となり矛となる存在です」
「そうなの?まあ分かったよ。ありがとね」
「滝川殿?芝田隊はいつもああなのですかな?」
「いや、某も初めて見たが奇妙な感じが致す・・・。おおよそ、上と下の者が居る場所とは程遠いと思う」
「私もそう思いますが、それが芝田殿の良いところなのかもしれませんね。敵方の治療をするようですな。おや?関殿も使者かと思えば、当主本人が来たようですな」
「関成重である!此度の戦の責任は某ただ一人である。どうか敗戦の将が言う事ではないが、家督を子の成政に譲り、某は切腹にて収めてほしい。以後、中伊勢の関一族は織田家への永遠の忠誠を、血判にて誓う」
「関殿。久しぶりであるな」
「あ、明智殿か!?何故そこに居られる!?」
「今は私は越前、朝倉殿に仕えておる。織田殿には少し'誼'があってな?」
「そうであるか。それは良き事。元は共に斎藤家に仕えた者、ここはどうか明智殿からも滝川殿に──」
「ははは!関殿の度胸は凄いのう。某は味方であるが、あの砲撃を見た時は恐れが出てきたものを、檄の一つで兵を動かすとは天晴れである!」
「あ、ありがとうございまする。では某の考えでよろしいと?」
「いや、実を言うと此度の戦は某は何も指示していない。それにお館様も某に全てを任すと言って頂いてな?今からお主がやられた芝田剣城を呼ぼう」
オレは特に働いてないけど、甲賀衆の人達を労い野田さん達、輸送班に持って来てもらった、村で育てたシャインマスカットを、甲賀衆や慶次さん達と皆で食べていると、益重さんに呼ばれた。
いや、お歴々が勢揃いなんだが!?敵が退いたからオレ達も退いたけど間違えたか!?
「貴方様が芝田剣城殿ですか?」
凄い疲れた顔の、汚れた甲冑着た人が喋ってきた。
「はい。私が芝田剣城です」
「その声は正に・・・・。某は先の敗戦の将、 関成重である」
あぁ、この人もあの口上の人か?いやあの突撃は凄かったな。悉く小川さん金剛君に遮られてたし、一人は申し訳ないけど隼人君に肩撃たれて倒れてたけど。
「どうも。それでこれからどうしますか?一応死んでしまってる人も居るかもしれませんが、私の配下の者に治療をするように言ってあります。勿論、継戦するならば治療は即終了となります」
「剣城?良い顔になった。一端の将の顔だ。そのまま続けよ。この戦の沙汰はお主が決めよ」
え!?いやいや渋い顔して『お主が決めよ』とか言われても、何をどう決めればいいか分からないんだけど!?
「がははは!殿!ここは降伏を許さず、関殿には最後の一兵になるまで、戦い抜いてもらいましょうぞ!!」
いや、小川さんいつ現れた!?それに何が最後の一兵までだよ!?もうオレは戦いたくねーよ!!関さんも顔引き攣ってるじゃん!?
「滝川様、本当に宜しいのですね?」
「あぁ。ここで三左衛門の言う通り戦うならそれで良し。好きに致せ」
「そっ、それはどうかご勘弁を!!関家にはもう戦える士気が──」
「あっ、このバトルジャンキーは放っておいて結構ですよ。お菊さん?小川さんは疲れてる様だから、向こうの皆の所で安定作用のある、村で作ったウエハースでも食べさせておいて!」
「ばとるじゃんきー!?」
「はっ。了解致しました。小川殿。さっ、あちらへ」
「殿!それはあんまりです!ワシはばとるじゃんきーなんかじゃ──おい!菊!何をする!?」
「配下の者が騒々しくてすいません。滝川様に任されたなら私の考えを」
オレはすぐに頭の中で考えた事・・・。それはこの東海道の要。亀山城の改修工事、京へ向かうまでの拠点としての亀山宿などの建設、海が近いから海産物の養殖及び生産、それに隣の六角への備え、それに南に居る北畠の備えをしたい事を言った。オレの秘密はさすがに言わなかったけど、揖斐川はウナギが多いと聞いたし、長島の備えも必要だ。それに船も造りたいし。
「いや揖斐川や長良川にウナギは沢山居るが、そんなにあれが重要と?」
「ふふふ。関様はまだ堪能した事はないと?」
「な、な、何ですか!?」
「ではこの後、そのウナギをご用意致しましょう」
「芝田殿?是非にそのウナギの時は私もお呼ばれしたいですな?」
明智さんか?こんなにこの人食通だったのか?細い人だけど結構色々食べてたよな?まっいいか。
「分かりました。明智様もご用意させていただきます」
「ではそのウナギ料理の後、某の切腹でよろしいでしょうか?」
「うん!?何で切腹するのですか!?」
その後、色々言われ『この戦の責任が』とか、『やはり敗戦の将たる者の務め』とか言われたけど、断じて切腹はしなくていいと伝えた。なんなら『この辺一帯をこれからも纏めて欲しい』とも言った。
「なんと寛大な心をお持ちで・・・。某、この様な方に今まで出会った事なく──」
なんか、きな臭くなってきたぞ!?少し太田牛一さんと同じ臭いがするぞ!?
「とにかく、この亀山の城と周辺の城に織田の兵を常駐させ、お館様が美濃を取り次第、この周辺を発展させます。治安も安定させないといけないので、これからは今までにないくらい忙しいと思って下さい。それに息子さんでしたか?息子さんもこの事業に乗るように言って下さいね。拒否するようなら・・・分かりますね?」
最後の言葉はあまり使いたくないけど、一応木下さんと発声練習、口上練習した一つの威圧だ。優しい笑顔、優しい雰囲気のまま、どうなるかをわざと言わずに、相手に諭す様に問い掛ける言葉だ。よく信長さんが使ってる技と一緒だ。
「き、肝に銘じておきまする。正確な取り決めは亀山の我が城で・・・。城門が破壊されていて無様で申し訳ないですが・・・」
「剛力君!野田さん!青木さん!出番です!城門を直してさしあげなさい!褒美は・・・パウンドケーキ、各々大を一つずつでどうでしょう!?」
「はい!喜んで!!!!」
青木さんの大学生のようなノリの言葉、頂きました!どうもありがとうございました!
「では亀山城の案内お願いします!それにしてもカッコイイ石垣ですね!どうやって組み上げたのですか?」
「芝田殿もこの石垣を分かっていただけると!?これ、実は──」
「初めての取り決めなのに優秀な方ではありませんか?滝川殿。あの芝田殿はどこの者ですかな?あんな凄い物を開発、運用する方が無名な筈ありませんよね?」
「明智殿?それより先は'今は'まだ聞かない方が身の為ですぞ?秘密が知りたければ、早くに織田家に来る事を進言する」
「怖い怖い。滝川殿もあの芝田殿の取り決めの時は、興味津々で聞いておりませんでしたか?」
「お戯れが過ぎますぞ?言葉遊びも大概にして下され。某は剣城が何をしようとしておるか、それがお館様の得になる事かを考えていたまで」
「では、そうしておきましょう。では我らも向かいましょうぞ。ただ北伊勢の筈が中伊勢まで来てしまいましたな?六角が黙っていれば良いですがな」
「うむ。分かっておる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます