剣城・・何もする事がない・・・・

 三重郡、鈴鹿郡を治めている千草さんや赤堀さんって人達までも、降伏の使者が来たらしい。降伏と言っても戦闘すらしてないのにとオレは思う。むしろ美濃との戦で北勢の人達に、挟撃されない為の作戦だった筈が、気付けば中伊勢まで進んでいるんですが!?


 「とらんしーばーでお館様にも連絡は取ってある。事情を話せば『蹴散らしてしまえ』との事だ」


 「滝川さん!?簡単に言ってますが指揮するの自分初めてですよ!?」


 「がははは!大将がそんなんでどうする?もっと胸を張って俺達を手足のように動かせば良い!現場の細かい指示は俺がしてやるさ!」


 慶次さんは簡単に言ってくれるけどだな!?心の準備が・・・。


 「見えてきた。あれが関の居城。亀山城だ」


 「滝川殿、芝田殿?くれぐれも我が関一族を・・・・」


 そう言ってくるのは昨日降伏に来た鈴鹿郡の下の方を治めている関さんの親戚の人達だ。


 「まあ、中伊勢を治めておる関殿だ。何も一当てもせずに従属は出来まい。任されよ」


 「この一当てで今後、我らの武勇が示せるかと思いまする」


 いや滝川さんの任されよって!?一族は従い、本家は戦ってから降伏する前提の戦っすか!?武勇が示せるって別に示さなくても良くない!?


 「我らは後方にて待機しておく。剣城?存分に励め!」


 「一益坊も安心して見ていろ!我が殿の必殺の剣にて一撃で終わらそう!」


 いやだから小川さんは好戦的過ぎだろ!?必殺の剣とか持ってないよ!?


 その後、本当に明智さんも滝川さんも関さんの一族やらも後方に下がってしまい、滝川さん配下の人達、約1000人程が残った。


 「この城はちゃんと石垣があるんだな。城によって変わるのか?」


 「我が殿は余裕があると見える!流石、我が殿!」


 「ははは!竹中何某の時とは大違いだな!」


 「いえ、純粋にカッコいい城だなと思っただけですよ。別に城攻めじゃないでしょ?」


 「あぁ。あそこに亀山の兵が居るだろう?あいつらと戦う事になるだろう。作戦はどうする?」


 「さっ、殿!この三左衛門に未来の軍略をお教え下さい!」


 いやオレ未来ではサラリーマンだったんだけど!?けど、降伏するって前提なら、あの兵士の人達倒してしまうのは可哀想だよな・・・。


 

 「何ぃ〜!?相手が可哀想だと!?かぁ〜・・・。うちの大将は優し過ぎるにも限度があるだろう!?」


 「本気でオレを殺しに来るなら、遠慮なく殺させてもらうつもりです。もう二度と身近な人の死を見たくないからです。けど、今回は悪いけどオレに従ってほしい。やりたい事が思い浮かびました」


 まずは国友さん作の野戦砲を兵士の上を通過するように撃ち、城門を破壊する。その後は空に向かい杉谷さんが鉄砲を撃つ。もしこれで相手が止まらない場合は、さすがに普通に戦う事を言った。


 「まあ、相手の陣に此処からでも届きそうな距離には居るけどだな・・・」


 「納得出来ないかもですが慶次さん、お願いします」


 「チッ。しょうがねーな!殿の考えだ!皆の者!隊伍を組め!剣城?俺は叔父御の隊を率いる。何かあればすぐに知らせろよ」


 「分かりました。我が儘ですいません。お願いします」


 その後、小泉さんにオレの合図で大砲と狙う所を言い、杉谷さんには上の方に向かって撃つようにお願いした。


 「腕が鳴りますな!?この小泉伝七郎、今日という日が嬉しくてたまりません!狙うには的が小さいですが、一撃で城門を破壊致しましょう!」


 「小泉殿は城門破壊、杉谷殿は鉄砲、慶次は一益坊の兵を率いる。・・・ワシは!?この小川三左衛門は何をすれば良いのか!?」


 いや少しくらい待機しててくれてもいいじゃん!?この爺さん、マジで戦好き過ぎだろ!?




 「織田の兵!!!!ここは我らが治める中伊勢!敵わずまでも一矢、我らの武勇を示さん!!!中伊勢の関!!ここに在り!!!」


 「「「「オ──────ッッッ!!!」」」



 いや普通に士気高くないか!?本当に一当てで終わるのか!?


 「さっ、我が殿も言葉戦いに負けぬよう、腹から声出して言い返しなされ!」


 そう言えば相手の人の声・・・。この距離なのに、近くに居る様な位に聞こえたんだけど!?誰が喋ったか分からないけど、めっちゃ声デカくないか!?オレはあんな大声出せないぞ!?


 「ふふふ。三左衛門さん?私をみくびってもらっては困るのだよ!ふはははは!」


 「おぉぉぉ!我が殿が覚醒なされたか!?」


 「剣城様、御免!(バチンッ!)」


 「なっ、菊!何をする!?今我が殿の良いところだったものを!?」


 「あっ、お菊さんすいません。また内なる自分が・・・。」


 オレは我に戻りすかさずGarden of Edenを起動する。



 《ハイパワー拡声器》¥15000


効能・・・・選挙や戦、歌を歌う時、緊急時など誰かに自分の声を届けたい時に是非使ってほしい逸品。

F分の1の揺らぎの声で相手に自分の声を忘れさせない。



 最初の項目にあった拡声器を買ったけどF分の1とは何ぞ!?あれか!?相手に安心感を与える現代の有名歌手とかが持っている声の質ってやつか!?



 「お菊さんごめんね。小川さんも見苦しいところをお見せしました」


 「なんの!なんの!とうとうワシを三左衛門と、名前でお呼びになって頂いたのかと思いましたぞ!?どうかこれからも、三左衛門と呼び捨てでお呼び下さい!!」

 

 いや名前呼びはやめておこうかな。



 「聞けッ!関の者共よ!ってデカ!?金剛君!?オレの声デカくない!?」


 「剣城様!声が入っております!!!」


 クッ・・・・。オレとした事が拡声器のスイッチ入れたまま自分でも驚いてしまったじゃねーか!?



 「何だ!?あの声は!?」


 「織田には雷のような声の持ち主が居るのか!?」



 「小泉さん、杉谷さん、口上の途中に合図します!呼び捨てで呼びますが構いませんか!?」


 「なんの!なんの!そんな事気にせずお呼び下さい!小泉、いつでも準備大丈夫です!杉谷もいつでも大丈夫です!」


 「ありがとうございます!ではお願いします」


 俺は気を取り直してもう一度言った。


 「フッフッ・・・テスっテスっ・・・。聞けッ!!関の者共よ!我が織田軍は貴様らを一撃で冥府に送る武器を持っておる!!死にたくなければ早急に降伏し、この中伊勢を明け渡せ!!杉谷!斉射!!!続いて小泉!撃てぇぇぇッ!!!!」



 バンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッ!




 ドガ──────────ンッ!!!!




 「我が亀山の城門が・・・見た事もない物で・・・」


 「たたりじゃ!!!」 「妖怪じゃぁぁぁ!!!」


 「まっ待て!!本当に一撃の武器を持っていようとは・・・。だがわざわざ中伊勢を代表して我らが一当てすると言って、このまま何もせず降伏は出来んッ!中伊勢の関、ここに在り!!!突撃ッッッッッッ!!!!」



 「かなり綺麗に決まったけど、相手突撃してきたんだけど!?」


 「がははは!敵さんあれで突撃とはやるじゃねーか!!剣城!下知を!!」


 「小泉さん!相手とぶつかり合う前にこの焙烙玉を!!俺も向かいます!!」


 「御意」


 「ははは!我が殿もやる気が出ましたかな!?安心しなされ!この小川三左衛門!殿に近付く者を一刀の元、冥府に送りましょうぞ!!」


 「あ、うん。小川さんお願いします。金剛君もよろしく!」


 「お任せを」


 「滝川軍!!!突撃ッッッッッッ!!!」


 

 その後は俺も一緒に槍を持って関の兵の元に向かう。横で小川さん一族がこれでもか!?ってくらい奮戦し、金剛君も頑張ってくれてるお陰か、オレには誰も近付いて来ない。その中、泥だらけの人がオレに近付いてきたが・・・・・。


 プシュンっ。



 オレに近付いて来てる筈が気が付くと倒れていた。


 「隼人!ないすだ!!!」


 「おう!」


 金剛君と隼人君のやり取り・・・カッコイイ・・・。てか、オレ何もする事なくない!?まあまあの覚悟でオレも前線に来たんだけど!?前の撤退戦の時みたいな緊張も無く、敵を倒そうと程良い高揚感もあったのに・・・。




 「退けッ!!退けッ!!!」



 それから20分程経つと明らかに倒れている敵が多く、関の人達は壊れた城門の方へ戻っていった。


 うん。オレ何も出来なかったね。これは部下が優秀だと褒めるべきか!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る