信長の変装

 明くる日、慶次達が帰ってきた。道中の写真を撮影するように言っていたので、出来上がった物を見る。


 「上手に撮れましたね!でもどうせなら動画にすれば良かったかも・・・」


 「なんでぇ!?写真が上手く撮れたと思えば今度は違うやつか!?」


 「いやすいません!これはこれで!ありがとうございます!」


 「大殿の城方の兵達を既に配置してある。三左衛門達、100人程残ってもらっている」


 「じゃあもう後は本番まで問題無いですか?」


 「あぁ。俺は大丈夫だと思うぞ」


 竹中さん、平子さん、中山さん、戻ってきた人達も問題無いと言った。


 「お疲れ様でした。後は本番まで休んで下さい!」


 "ノア、お疲れ様!大丈夫だった?"


 "キャハッ♪あれくらい何ともないよ!偉い人が乗るんでしょ?本番の日は、あーしが本気出すから乗り心地最高だと思うよ♪"


 ノアが言ったのはどんな凸凹道でもどんな本気かは分からないが、そのノアの本気を出せば揺れが少なくできるそうな。


 "スーパー神馬だな!まっ、当日頼むね"


 "ほ〜い♪"


 オレは皆と別れ、最後の概要を信長さんに言う為に岐阜城に向かう。今回のお土産は児玉さんの牛乳と、出来上がったカカオ豆を持ってだ。


 大野さんが選別してくれた豆だ。説明書に書いていた事で、豆を焙って外殻を砕き中身だけになっても、ハスクという皮が付いてるらしいが、そのハスクを処理しないと美味しくないらしく、専用の団扇で豆も砕いた後、扇ぐと選別できたと。


 城に到着したオレは早速、部屋に案内された。


 「入れ」


 「忙しいところすいません。近江までの道は確保致しました。道中も問題無く、私の配下と信長様の兵を配置しています」


 「よし。問題無いのだな」


 「はい。それで先行で私の馬で馬車を引きましたが、そちらも問題無いです。馬と馬車を繋げる金具に不安がありましたが、国友さんの力作だったみたいで、私の馬本人も問題無いと言っておりました」


 「分かった。では後はワシの変装だな。見てみろ!これじゃ!」


 信長さんが自信満々で出したのは、顔全体を隠す頭巾だった。頭の方には織田木瓜紋の家紋が入っているが・・・。


 「の、信長様!それは逆に目立ち過ぎるかと思いますが・・・」


 「何でじゃ!?顔が全部隠れるであろう!?ワシだと分からないではないか!」


 お気に入りを咎めたから少し機嫌が悪くなってきたじゃん!?折角甲賀の人達と同じ服装、頭巾、ドーランまで用意したのに・・・。いかん!まずは牛乳とカカオだ!


 「信長様、まずは落ち着いて土産をお飲み下さい。牛の乳と信長様が好きなチョコレートの原料を混ぜた、コーヒー牛乳擬ですが美味しいです」


 「お!?牛の乳とな?では肉の方も目処が立ったのか?」


 「いえ、肉の方はもう少しお待ち下さい。このお市様の任務が終われば、一気に色々動く予定です」


 「ふん。まぁ良い。これは・・・雑味があるがこれはこれでいけるな?」


 「本当はもっと処理工程がある筈ですが、まだ出来て間もない物なので、最初はそれで勘弁下さい」


 機嫌が良くなったタイミングを見計らって、オレはオレの配下の人達と同じ装備を出す。


 「そ、その頭巾も大変に素晴らしいですが、こちらを装備していただけませんか!?私の配下と同じ装備になりますが・・・。そちらの草の色みたいなのは、顔に塗り敵に分かりにくくする物です」


 「ほう。これが貴様の黒装束隊の装備か」


 黒装束隊!?そんな名前初めて聞いたぞ!?響きがカッコイイな!!


 「そんな感じで大丈夫です!大変よろしいかと思います!」


 「ふん。しょうがない。こちらで我慢してやるか」


 「後、御者の事ですが私の馬が小雲雀号に言ってくれるので信長様は乗ってるだけで大丈夫ですのでよろしくお願い致します」


 「相分かった」


 よし。なんとか言い包めたぞ。後は使者を待つだけだ。



 そして迎えた約束の日の昼に、浅井さんの使者が岐阜城にやって来た。総勢100人程だが。兵士の人達は選りすぐりの人達のように見える。


 出迎えは信長さん、オレ、森さん、柴田さん、木下さん、丹羽さん、池田さん。まぁ所謂、織田の有力な人達だ。


 「よくぞおいで下さった!さぁ、さぁ、まずは城に入られよ」


 「織田信長殿とお見受け致す。拙者、此度の輿入れ警護番を務める浅井家家臣。三田村国定と申します」


 姉川で亡くなった人だったかな?結構有名な人が来てくれたんだな。

その後、兵士の人達は城下の空いてる庭の所にオレがゲルテントを出し、剛力君達の力作、簡易ベッドと布団を用意してある場所に案内させた。


 なんなら、城よりこっちの方が快適そうな感じまである。


 「剣城!足軽一行全てに至るまで歓待致せ」


 「はっ。畏まりました」


 これは予定した通り、皆の前で敢えて言うと言われてた事だ。


 「織田家、芝田剣城と申します。今回、お市様の輿入れ、織田家の警護頭です。明日の出発まで皆様の歓待も申し付けられております。どうぞごゆるりとお過ごし下さい」


 「剣城?頼んだぞ。では三田村殿はこちらへ。今宵は織田家で作った澄み酒を…」


 信長さんもあんな喋り方できるんだな。ならオレにも優しく話してくれよ!?


 

 「さぁ、浅井方の兵士さん!こちらへ!」


 「おっ!?何だ!?」「織田に見た事ない陣があるぞ?」


 「さて・・・足軽頭の方はどちらでしょうか?」


 「あっしでございます。承太郎と申します」


 「では、承太郎さん?たかだか1泊ですが最大級のもてなしを開始致します。大野さん?よろしくお願い致します」


 城の飯は伊右衛門さんにお願いし、土産の作り方も例の書物で習得してるから大丈夫だろう。

こっちの足軽の人達は大野さん以下20名が目の前で未来の料理、焼き鳥、卵焼き、豚肉の生姜焼き、タコ焼き擬、お好み焼き擬、甘い物はプリンにカステラ、何故かデザートに入った甘過ぎる握りをバイキング方式に取ってもらうようにした。


 肉はまだオレが出した物だが、もう少しでこの時代だけでも作れるだろう。オレのジオラマの街でデザートは作り、氷を下に敷き詰めた入れ物に入れ、持って来てもらったのだ。

伊右衛門さんにも氷の作り方は言ったから、あちらでも驚かれるだろう。


 「何やら良い匂いが・・・」 「あれは氷か!?」


 「織田家の芝田殿でよろしかったでしょうか?」


 「はい。いいですよ」


 「我らまでこの様な扱いは大変に嬉しいが、些かやり過ぎの様だと・・・。もう梅雨時期手前に氷とは・・・」


 「実は簡単に氷を作る方法を発見しましてね。これは浅井様と親睦が深めれば、追々教える事になると思います。それより自慢の飯をどうぞご堪能下さい。横に居るは奇妙な出で立ちですが私の配下です。何か御用がありましたらお使い下さい。金剛君?」


 「芝田家、金剛と申します。お食事の後は汗を流していただき、シャンプーを体験していただきます。能書きを垂れても分からないと思いますので、まずは食べましょう」


 よし。とりあえず上々だな。オレ用のサウナを剛力君に作ってもらったが今日は大解放だ。臭い男の歓待は嫌だ!ボディーソープとシャンプーで体を綺麗にして、布団で寝て、噂が噂を呼びもっと人が来れば尚良しだ。


 「こっ、これは何だ!?美味い!美味いぞ!!」


 「それより米だ!白米だぞ!!それに米も甘い!」


 「この澄み酒・・・聞いた事しか無かったが本当にあるのだな・・・。これをワシが飲めるのか・・・」


 よし!飯や酒の反応も良いな!


 「織田の料理人様!!この作り方を是非に!!」


 「この様な物、見た事もありませんでした!!」


 顰めっ面だった大野さんも、美味い美味い言われ少し微笑んでいるな。けど、浅井さんの兵士の人達は肉に忌避感が無いのだな。


 「剣城殿?おられますか?」


 「あっ、遠藤さん。お疲れ様です。どうされました?」


 「お館様がお呼びでございます。ビールを一ケース持ってこいだそうです」


 あぁ。ビールか。お土産用かな?


 「おい!この黒い水、甘くて美味いぞ!」


 「なんの!なんの!こっちの泡が立っておる水も甘いぞ!」

 

 皆コーラやサイダーも喜んでくれてるな。



 《10インチモニター付きビデオカメラ》¥180000


効能・・・・本体とUSBで繋ぎ、大画面で撮影したものが見れるビデオカメラ。5800万画素。巷ではVLOG撮影や、インフルエンサー達の撮影に使われている。



 「じゃあ金剛君、後はよろしくね。それとこれで道中の撮影してくれる?使い方は説明書見て使ってね」


 「はっ。これはもしやビデオカメラでは?動く被写体をそのまま撮影できる優れ物ですよね?」


 「そ、そうだけどよく知っていたね!?このビデオカメラの事なんか書いてる本、渡したっけ!?」


 「剣城様のお部屋のベッドの下に女性の姿体の写真がありまして、菊とゆきが片付けておる時にチラッと表紙の下の方に、このカメラの事を書いておりました」


 クッ・・・!いつかお世話になった本か!?しかもゆきさんが片付けただと!?聞いてないぞ!?それに金剛君は詳しく言ってる事は、此奴もお世話になっただろ!?


 「あっ、某は中身は見ておりませぬのでご安心を」


 確信犯だな。むっつりスケベが!!!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る