柴田勝家の新武器

 ア〜べマリィアァ〜♪


 オレが自然に如来座像に平伏していると、どこからともなく以前にも聞いた事のある、讃美歌が聞こえ出した。


 「剣城様!?これは農業神様の音ではございませんか!?」


 「う〜ん。多分そうだと思う。ほら。如来様の隣が発光しだしたよ。間違いないね」


 「な、な、何が起こっている!?おい!柴庵!すぐに上人を呼んで来い!」


 「は、は、は、はい!」


 「がははは!地球の子らよ!吾輩は戦神である!崇め!讃えよ!」


 いやいや戦神様!?そんなキャラでしたっけ!?吾輩って初めて聞いたぞ!?


 「久しぶりなんだなぁ」


 'おい!馬鹿!今照らすのだ!早く照らせ!'


 'おい!新人ッッ!お前演習して来なかったのか!?農業神様は後光フラッシュが無いと、機嫌が悪くなるのだぞ!?後で始末書じゃ済まされないぞ!?'


 'そう言われましても13階神様だって以前、言っていたではありませんか?あの人間から少しでも土産を貰えと?信仰心の厚い供物を貰えれば、もしかすれが神格が上がると'


 おいおい。ぜっんぶ聞こえてるんだが!?農業神様の後ろに居るのは・・・例の球体様か!?


 「農業神様!戦神様!お久しぶりでございます!今日は如何されました!?」


 「我が兄弟が如来の像如きに平伏していたから、顕現したんだなぁ」


 「如来の像如きですか!?」


 「がははは!如来とは悟りを求め、最終的に如来となることを指すのだ!その昔、釈迦と名乗る元人間が神格を持ち、崇められるようになったのう?そうだ。人間!お前のように神の加護を貰った者のような感じだ」


 何だろう?仏教の真髄のような・・・。


 「いつ如何なる世界でも、神を崇め救いを求める事は、人間種では仕方のない事なんだなぁ。けど、我が兄弟にはおいという神が居るのに、その偶像如きに平伏するんだなぁ・・・」


 これはあれか!?嫉妬というやつなのか!?農業神様から負のオーラが見えるぞ!?


 「剛力君!金剛君!ミヤビちゃんも!慶次さんも!六角の皆さんは口を開けるだけじゃなく、早く平伏して!」


 「剣城様!?このお方は!?」


 「布施さん!考えるな!感じろッ!!!このお方は農業神様と言って偉大な方です!」


 「「「「ハハァーッ!!」」」」


 よし!皆、平伏したな!?


 「農業神様!これ良ければどうぞ!配下に作らせたフルーツポンチになります!」


 「ありがとうなんだなぁ」


 「ぬぁ!?おい!人間ッ!!吾輩には無いのか!?吾輩は先日の供物と同様に、キャラメルフラペチーノなる物を──」


 「剛力君ッッッ!!!!!!急げ!!やられてしまうぞ!!?」


 「御意ッ!!・・・・お待たせ致しました!」


 いやいや、早過ぎだろ!?


 「がはは!これじゃ!この白いクリームと苦い水が中々に美味いのだ!礼を言うぞ!」


 すぐに上機嫌になる。チョロい。


 「あのう・・・貴方が・・・いや、貴方様が剣城がたまに言う戦神様でしょうか!?武の頂に君臨する神とお聞きしておりまするが・・・」


 「おい!盟友の兄弟!此奴は誰だ?全くドワーフのような顔付きの男だ!」


 「あっ!え!?あぁ、柴田勝家様と言ってお味方で、かなりの武勇に優れた方です!オレの上司です!」


 「うむ。其方の上司とやらなら、無下にはできんのう。吾輩は次も同じ物を所望する!おい!人間!名を勝家と言うそうだな?何じゃ?問うてみい!」


 「直答ありがとうございまする。ある時から森殿・・・某の隣に居る男の槍捌きが格段に上がりました。以前は10合突き合えば某でも3本は勝てたましたが、最近では勝てませぬ。このままではいかんと思い、是非一手、御教授を願いたく・・・」


 「ふん!すぐこれじゃ!ドワーフと似たようなもんじゃ!吾輩を見ればすぐに武を教えろ教えろと!そして捧げる供物は槍や剣、斧ばかりじゃ!つまらん!盟友よ?構わぬか?」


 「傷付ける事はおいが許さないんだなぁ。ハッッ!!!」


 〜時間が止まる〜


 農業神様が発声すると農業神様とオレ、戦神様、柴田さん以外の時間が止まった。


 さっき柴田さんが言った、森さんの槍が上手くなったのは以前、農業神様に稽古つけてもらった時の事だろう。


 「こ、この感じは!?剣城!?どうなっている!?」


 「案ずるな。吾輩達だけの空間じゃ。ほう?人間にしては中々に修練を積んでおる。一突きだけ教えてやろう。どこからでもかかって来い!」


 「いや・・・そういう訳には・・・」


 「柴田様!戦神様が教えてくれるというのは多分かなり珍しいです!この機会を逃してはいけません!」


 「そ、そうか。ならば・・・遠慮なくさせていただきましょう」


 「がははは!面白い!本気で吾輩を討つ勢いじゃな?嫌いじゃないぞ?人間ッッッ!!!」


 ビシュンッッッ


 ズゴォォォォォォォォ─────!!!


 「は!?え!?本殿が!?」


 戦神様・・・この神はダメだ。さっき受けてやろうって上から目線だったのに、気付けば柴田さんが突きを出す前に、戦神様から仕掛けてるんだが!?しかもその戦神様がどこからともなく出した、一目見ただけで分かるヤバそうな槍を、軽く薙ぎ払いしただけで本殿がブッ壊れたんだが!?


 「ありゃ!?アースガルドと勘違いしたようじゃ!許せ!がははは!」


 あぁもう!マジでこの戦神様は駄目だ。ここを拠点にして、これから勝龍寺に攻め入ろうかと思ったのに、セルフ本陣破壊してどうしてくれるんだよ!?


 柴田さんも呆気に取られてるんだが!?


 「まぁいい!続けるぞ!来い!勝家ッ!!」


 いやいや、まぁいい!じゃねーよ!?どうしてくれるんだよ!?


 「クッ・・・届かなくともこの一突きだけはッッ!!!」


 ブォォンッ!!


 シュ


 柴田さんの突きもかなりだが相手が悪過ぎる。神相手に勝てる訳がないんだよな。軽く避けられたな。


 「やっぱりな。おい!勝家!人間にしては中々な良い筋じゃ!だがお前は槍よりこっちの方が向いている!貰っておけ!エルダードワーフが吾輩に捧げた、供物の一つじゃ」


 ゴロン


 「こ、これを某に頂けるのですか!?」


 「うむ!久しぶりに面白かったぞ!それで自分自身を鍛えてみせよ。またいつか稽古をつけてやろう」


 「ありがとうございまる!!」


 「我が兄弟、申し訳ないんだなぁ。盟友が壊してしまったんだなぁ」


 「はい・・・どうしましょうか・・・。農業神様も知ってるかとは思いますが、ここを拠点にして戦いを始めようと、思っていたのですが・・・」


 「お前達!すぐに修復するんだなぁ」


 「え!?修復ですか!?ただでさえ、2柱のマナを抑え込むのに苦労しているのに──」


 「やれ」


 うわ・・・ブラックだ。紛う事なきブラックだ。農業神様も中々にヤバい人?神?だ。


 ギュゥゥゥゥ─────ン バァァァン


 「はぁー はぁー はぁー 農業神様!修復終わりました!!」


 いやいや、一瞬で元通りになってるんだが!?


 「よくやったんだなぁ。じゃあおいは帰るんだなぁ。我が兄弟はこれからも、おいだけを思ってほしいんだなぁ。バイバイなんだなぁ」


 「え、あ!はい!オレの神様は農業神様だけです!これからもよろしくお願いします!!」


 「ありがとうなんだなぁ!盟友!帰るんだなぁ」


 「はぁー はぁー あ〜べまりあ〜」


 あぁ・・・球体様が小さくなってる・・・。可哀相だ。確か食べ物で神格とか言ってたよな!?


 「球体様!これを皆でどうぞ!オレが前に暇潰しで作った、ベビーカステラです!」


 「恩に着る・・・」


 「さらばなんだなぁ〜・・・ハッ!!」


 

 〜時間が動き出す〜


 「あれ?どうなってるんだ?」


 「何かあったのか?」


 「権六?その斧はどうしたのだ?そんな武器持っていたのか?」


 「何だ!?これは!?このような斧なんか持ってないぞ!?」


 分かった。例の忘れさせる発声だったのか。確か前に、森さんも同じようにされていた事だ。


 「柴田様!それは柴田様に天から与えられた武器ですよ!」


 「なに!?天からだと!?そうか!ならばワシが使ってやろう!おっ!?槍よりしっくりくる!うむ!三好の兵はこの斧で屠ってやる事にしよう!瓦割りと名付けよう!」


 よし!なんとか誤魔化せたぞ!


 「こっちです!上人!今しがた発光が・・あれ!?何もなってない!?どうなっている!?」


 「おい!雲水!どういうことだ!?何もなっていないではないか?」


 「いや、さっき確かに・・・芝田殿!?さっき発光していましたよね!?他の方も!?」


 「え?何のことです?」


 「はて?そんな現象は起きていませんが?」


 オレだけ覚えている。けど、雲水って人には悪いが惚けさせてもらわないと。


 「織田軍を迎え入れる役は早かったか。まぁいい。御座の間に皆をお連れしなさい」


 「上人!本当なんです!本当なんですよ!!」


 「あぁ!もうしつこいぞ?織田軍の皆々様方、煩くて申し訳ない。さぁさぁ、こちらへお越し下さい」


 雲水さん、済まない。


 上人に案内され後ろを着いていく途中に、ミヤビちゃんが珍しく現れ耳打ちしてきた。


 "あの方が農業神様だったのですね!実は自作ですが村にある木像を真似て作った物を、持ち歩いているのですよ!"


 オレは耳を疑った。ミヤビちゃんは農業神様の技?魔法?が効いていない!?

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