大吟醸を飲み干しやがったのは誰だ!?

 「朝から何の騒ぎだ!?」


 「いえ・・・それが北伊勢の代表の者が我らに恭順をと・・・」


 「は?我らはまだ使者すら出しておらぬのだぞ!?」


 「滝川殿、御免・・・。寝起きに失礼致しまする。我らの同胞がどうか滝川殿にお目通りをと・・・。話を聞いてもらえると助かるのだが・・・」


 「矢部殿がそう言われるなら仕方あるまい。して、誰が来ておるか?」


 「それが・・・北勢の家の者全てでございます」


 「は!?」










 「がははは!壮観壮観!さすが我が殿!我らを見ておるから、睨み返すだけで目を逸らしおるぞ!!なんとも愉快!愉快!」


 おいこの血気盛んな爺さんを止めてくれよ!?ってかこれは何の騒ぎだ!?何でこんな正装の男ばっかりこの城に来るんだ!?


 「何か分からぬが苦情でもなさそうだな」


 「慶次さんでも分からずですか?」


 「いや。この相手方の様子を察するに、普通なら和平の使者みたいだな」


 「和平の使者て・・・。そんな織田に従え!の一言で従うもんなんですか!?」


 「いや、そんな筈はないが・・・」


 慶次さんですらビックリしてるんだが!?マジで何が起こったんだ!?


 「剣城様!朝からすいません!お待たせしました!国友様と息子の芳兵衛様から、追加物資と手紙を預かっております」


 「大膳君お疲れ。大野さんと一緒に少し休んでおいて」


 「御意」


 え〜と何々?やっと楷書を覚えてくれたからオレでも読めだしたな。


 『そろそろ戦場の前線に着いた頃だと思う。俺が開発した準青銅砲を使い、驚いているところであろう。だが敵方はその威力を知り守りに入っているだろう。その敵方を崩すため新たなる玩具を開発した。敵を一網打尽にして国友大筒砲の名を轟かせるべし! 国友善兵衛』



 『春風舞う今日この頃、絶好の戦日和と存じております。剣城殿にとっては赤子を捻るくらいだとは思いまするが、更なる正義の鉄槌の為に開発しました。"父"には負けない砲撃ではありませんが、焙烙玉を作りました。名前はまだ付けておりませんが、是非剣城殿が試し、相応しい名を頂戴致しとうございまする。試作な為まだ十程しかありません。使い方は別紙にて小泉殿にお見せ頂きたく候。 国友芳兵衛』



 いやいや、全く戦闘してないし、なんなら大砲も一発しか撃ってないんだが!?敵は威力を知りって敵にまだ遭遇してないんだが!?こんな新式二つも見たら、また皆が撃ちたい撃ちたいって言うじゃないか!?ほら見ろ!小泉さんなんか早速、別紙の使い方の紙を見てるじゃねーか!?



 「おい?剣城?何が書いてあるんだ?何か新しい物か?」


 「ははは・・・。国友さん親子の新式の何かみたいです。国友さんの方は発射台を作り砲身を長くした為、威力、射程が劇的に上がってるみたい・・・」


 「おっ!また凄いの作ったな!!これも早速試してみようぜ!」


 ほら慶次さんが1番ウキウキしてるじゃん!!


 「んで、こっちの芳兵衛君の方は焙烙玉・・・。手榴弾・・・か?小泉さん?使い方、分かりますか?」


 「はっ。この油と火薬を染み込ませた麻に火を点け、敵に投げ込むだけのようですが、この筒の中身が特殊らしく、木片やら鉄屑を混ぜて配合しているらしく、近距離で食らった敵は木っ端微塵だ、と書かれておりまする」


 いやマジであの2人すげぇ〜わ。どんどん開発していきそうだな!?この調子ならマジでエンジン開発とか最終的にしてくれそうだな!?けど肝心の燃料が無いんだよな。確かサツマイモを燃料に変換させる方法が・・・いや、やっぱ分からん!これも何か本でも探してみよう。とりあえず今は、この見たくてウズウズしてる人らをどうにかしないと。



 



 「お目通り感謝致しまする。我ら員弁郡を統治している上木家、白瀬家、高松家の血判状でございまする。どうか我らも織田様の末席に加えて貰いたく・・」


 「いや、待ってくれ。どういう事だろうか?お使者殿?そりゃ員弁郡に恭順して頂ければ大変助かるが、血判状とはほぼ降伏に近いではないか!?」


 「我が殿はでかい銃の前で足軽を何人揃えようと、意味が無いと申しております。どうか我らの願いを聞き届けてもらえぬでありましょうか」


 でかい銃?でかい銃とはなんぞ!?ワシはそんな物持ってきておらんぞ!?剣城か!?いやさすがの彼奴でも、ワシの許可無しに何か細工はしないだろう・・・。だがこの手を逃す訳にはいくまい。


 「お使者殿。員弁郡の考えはよく分かり申した。我が殿も大変喜びになるであろう。この後友好の儀でも行いたいが、他にも面会したい者が居る故に、本日は我が尾張で"生産"開始されたばかりの物を、土産として渡そうと思う。御当主と御堪能されよ」


 「はっ。過分な配慮ありがとうございまする。何かあれば一声掛けていただければ我らの員弁郡、総出で一騎当千の働きをお見せ致しましょう」


 「はは。それは痛み入る。では後日、お館様からの書状にて」


 「はは。御免」


 「益氏!!員弁郡のお使者殿に、だいぎんじょうとちょこくっきー、ばたーらすく、砂糖、塩を用意してあげよ」


 「殿・・・・。だいぎんじょうは・・・」




 「なに!?用意したのがもう無いだと!?誰だ!!?誰が飲み干しやがった!?ワシ自らが手討ちに致す!!剣城を呼べ!!」



 



 益氏さんに呼ばれて急いで俺も登城したけど・・・。


 「機嫌が悪い。注意せよ」


 何で不穏な事言うの!?何で機嫌悪い時に呼ぶんだよ!?


 「失礼します。剣城です」


 「入れ」


 信長さんに負けんくらいのオーラが出てるんですが!?

 

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