棚から牡丹餅?

 〜勝恵の説得が功を奏した日の夜中〜


 「いや。何でこんなに皆、勢揃いなの!?」


 「ははは!そりゃ明の大船にしか付いてないような物なら、見物もしたくなるさ」


 「某、鉄砲はよく見ておりまするが、大砲なる物は初めてでございまする」


 「我が殿がお許しになられた武器を確認するのも配下の務め!さ、殿!遠慮なく発射しなされ!」


 大砲だからやっぱそれなりに音は鳴るよな?けど、滝川さんの言質は取ってあるからな。『言ってなかろうが!』とか言われても、こっちは5人程が聞いてるからな。間違っても長島方面じゃない方に撃たないといけないな。






 「おい!殿に織田方を調べて来いと言われたが、あれは何だ!?片岡殿は分かるか!?」


 「分からぬ。それにあの黒い異様な者達は何だ!?桑名は従う事になったが、我が員弁の者は滝川がどんな者か分からぬ」


 「あれは鉄砲が大きくなった物か!?」


 「何か準備しだしたぞ!?」


 「南部殿、萱生殿?我が員弁は織田殿に従おうと思う」


 「高松殿は何を言ってるのだ!?臆したか!?」


 「見た事ない物を目の当たりにして驚いておるのは誠だ。あれは恐らく鉄を火薬にて撃つものだと思う」


 「だが、一当てもせず従う訳には・・・」







 「小泉さん?発射の方角大丈夫?」


 「はっ。長島を大きく外しております!合図をお願い致しまする」


 「あんま大きな声で言えないけど、まず間違いなく日の本で初めての大砲だと思う。これがどれ程の威力か、各々ちゃんと見ておくように!」


 「「「「はっ!!!」」」」


 「小泉さん。・・・・・・・3、2、1、撃てッ!!!!!」



ドゴォォォォォォ─────ンッ!!!!!



 ある程度は予測してはいたけど、思ってた程ではないな。もっと凄まじい音が鳴ると思ったけど、令和に居た時の花火大会と同じくらいの音なんだな。


 「おぉぉぉぉ!!!!!」


 「がはははは!!!これを向けられたら足軽は為す術がねぇ〜な!」


 「矢盾程度では防ぎようがないぞ!?」


 「殿!!如何だったでしょうか!?少々不満気に見えまするが!?」


 「うん!?いやいや、小泉さんありがとう。ご苦労様!私が思ってた程の音じゃなく昔、家の近所であった花火大会くらいの音で拍子抜けと言うか何と言うか・・・」


 「花火大会・・・ですか?」


 「剣城様!?花火大会とはあの夜空に大きく広がった花の様なやつですか!?」


 「鈴ちゃん!流石だ!そう!それだよ!あれもまあまあの音が鳴るけど似たようなくらいだった」


 「ははは!さすが我が殿!これくらいでは満足していないと!?これでも城門くらいは一撃に破れるであろうが、これは帰って国友殿や倅殿に、更なる威力の物を作ってもらわねばな!?がははは!」


 いや小川さん?満足してない事ないよ!?なんなら威力に関しては申し分ないと思うよ!?恐らく伊勢湾だろうと思うけど、着弾したら夜でもはっきり分かるくらい波紋が出てるよ!?


 「一発撃ってどんな威力か分かったですね?」


 「あぁ!これを早く本物の戦で使いたいぜ!」


 「ふん!ワシのこの、はるもにあ甲冑ならあんな大砲は効かんがな!?がははは!」


 いや、小川さんはオレの家の武器庫から引っ張り出して、ゲームでよく聞く名前の何の素材で出来てるのか分からない甲冑着てるけど、さすがに大砲は弾き返せないんじゃない!?







 「おい!あれはいかん!!あんなの我が城に撃ち込まれたら、一撃で殺られてしまう!」


 「籠城しようがあれじゃ意味が無い!」


 「上木殿も白瀬殿も顔を見れば分かるが我と同じ意見か!?」


 「・・・・あぁ。あれを見て正気ではおれん。萱生殿の朝明郡は分からぬが、我ら員弁郡は織田殿に従う」


 「・・・・・萱生家も従う」


 「おい!萱生殿!?お主が抜ければ朝明は──」


 「南部家も従う・・・。梅津家は一当てしてからとか言うておるが、あんなの相手に一当てどころか、一発で壊滅的になってしまうぞ?」


 「いやしかし・・・。せめて我らの武勇を示してからでも・・・」


 「富田家も従う」「・・・我ら浜田家も同じだ」


 「あぁもう!分かった!我ら梅津家も従う!明朝に桑名に向かおうぞ。手土産は何が良いか各々考えておけよ!?くれぐれも抜け駆けはしないように!!」


 「後、某は一応三重郡の千草殿と赤堀殿とは旧知の仲・・・。この事を知らせようと思う。もしかするとどこぞで我らと同じ様に、見ておるやもしれぬが・・」

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