斎藤龍興の最後

 「おかえり!早かったね!お疲れ様!見た感じは大丈夫そうだけど怪我とか無い?」


 「はっ。少し抵抗されましたが然程でしたので。共の者は隼人が射殺しましたが、斎藤龍興は捕獲致しました」


 捕獲致しましたって・・・。害獣じゃないんだから。

てかまだ中学生くらいの歳の子供じゃない!?こんな子供があの小見さんを幽閉してたの!?どんな中学生だよ!?


 「斎藤龍興さんで間違いないかな?」


 「ひ、ひ、控えろ!我こそはみ、美濃、斎藤家当主。ささ、斎藤龍興ぞ!」


 こんな顔になって、言葉もしどろもどろになってもまだ虚勢を張るか。可愛気が無い奴だな。泣きながら謝れば命だけはとか思ったけどな。


 「この状況でよくそれだけの事が言えるな?僕?まあその気概は嫌いじゃないぜ?ははは」


 煽りが上手いな慶次さんは。


 「お前らこそ俺にこんな事してただではすま──」


 「ごきげんよう。龍興様」


 「たっ、竹中!助けてくれ!」


 「はて?私はもう斎藤方ではないですよ?」


 「なんだと!?」


 「私は散々諌めておりましたが、女に遊興にと溺れる貴方に、ほとほと愛想が尽きました。後はご自分でどうにかなさいませ」


 「とりあえず剛力君は少し休憩して、青木さんがノア達の家作ってるから手伝ってくれる?帰ってきて早々ごめんね。夜にまたすき焼き出してあげるから」


 「本当ですか!?絶対ですよ!?絶対にすき焼きですよ!?」


 そんなに、すき焼きが気に入ったか。剛力君は一番頑張ってくれたから、嫌と言うまで食べさせてあげよう。


 「信長様、失礼します」


 「殿っ!?」 「龍興様!?」 「若ッ!?」


 「配下の者が長島に辿り着く前に捕まえました。城の人の反応を見ると本物のようです」


 「おっ、お前ら!早く俺を助けろ!目の前に織田が居るだろう!早く斬れ!」


 「「「「・・・・・・・・・・・」」」」


 「どうした!?お前達!?今頑張れば稲葉や安藤が駆け付けてくれる筈だ!!」


 「ワシらがどうかしましたかな?」


 「安藤!?良かった!早く縄を解いてくれ!?そして織田を討て!」


 「それは無理なお願いですな。我らは織田に降りました。もう貴方の事は聞き入れられません」


 「ぴーぴー煩いのう。まだ元服済ませたくらいの童ではないか。ワシはこんな奴にしてやられてたのか!?」


 いや何故にここで信長さんは不機嫌になる!?ここは俺に労いの言葉でもいい場面じゃない!?


 「こっちじゃ!こっちで龍興の声がしやるッッ!!」


 「小見様!?まだ完全に回復された訳では──」


 「「「!?!?!?!?」」」「小見・・・様!?」


 「義母殿!?」


 信長さんまでビックリしてるわ。オレ?そりゃオレもビックリして、自然と剛力君の後ろに動いてしまったよ?いやぁ〜我ながら危機察知能力が凄いね!?オレじゃなきゃ分からなかったよ!


 「龍興ッ!!お前は妾に何をしたッ!?」




 「剣城様、すいません。あの人の声が聞こえると急に起きて動き出しまして・・・」


 「それで身体の方は?」


 「咳が多いのは、埃っぽい場所だったからだと思います。癌の可能性もありますがレントゲン、MRIなど無いため分かりません。足や手が細かったのは、純粋に運動不足による筋力低下だと思います。薬ではどうにも出来ませんでしたので、剣城様がお出しした栄養ドリンクを処方致しました」


 「了解。ありがとう。お疲れ様。一人残して後は休んでていいよ」


 「了解です」


 いやマジで栄養ドリンク凄過ぎだろ!?さっきまで細かった手足が、まあまだ少し細いけど動けるくらいになったのか!?目も見えるのか!?


 「答えろ!妾に何をした!?」


 中々口を開かないので、オレが小見さんに聞いた事を皆の前で伝えた。龍興はオレが話し出すとモゴモゴ言ってたが、不破さんが足払いして黙らせた。


 「城の落城がこれ程嬉しいとは思わんかった!龍興様。いや、龍興!ワシはお前に仕えていた事を、これ程後悔したことはない!」


 「拙者もそうだ!よりにもよって美濃の母上を・・・。グスン」


 「織田様!?某は斬首になっても結構!ですが是非某が龍興の処刑を・・・」


 皆が龍興を非難すると、信長さんがスッと手を横に上げる。すると自然に皆静かになる。


 そうだよ!これだよ!これ!オレも以前こんな風にしたかったんだよ!それを小川さんがやる気と間違えたんだよな!?


 「ワシはこの童を毛程も思っておらんかったから、捨て置けと配下に伝えておったが・・・・。そうもいかんなったようじゃ」


パタンっ。パタンっ。パタンっ。パタンっ。



 「いやじゃ!!俺は死にとうない!織田殿!この美濃は織田殿に渡す!どうか俺は、俺は・・・・」


 「いい加減にしやれ!事ここに至って我を突き通す場面ではないッ!剰え家の者がこんな状態になっておるのに、自分の事だけかッ!?」


 「家臣が死んでも俺が残れば斎藤は残る!俺が生きるのは至極当然な事!母上は分からぬか!?」


 「気安く母上と呼ぶな!以前はお前を血こそ繋がってないが、我が息子と思っていたがお前とは他人じゃ!」


 まぁ、これ程まで清々しく自分本位の事言えるのは、ある意味才能だな。




パタンッ!!!!




 「剣城、義母殿に刀を。義母殿?持てますかな?」


 「婿殿。心配無用。この芝田殿のお陰でだいぶ体はようなりました」


 「然様ですか・・・・。我らは別室にて。皆の者!下へ降りろ」


 「嫌じゃ!嫌じゃ!死にとうない!稲葉!何とかしてくれ!」


 「・・・・・・・・・」



 オレも皆と一緒に下に降りようとしたら『貴様は最後まで見届けよ』と言われ、居るように言われた。いやいやいや!?オレ居たくないんだけど!?なんならオレが一番の部外者なんだけど!?


 3人になった最上階・・・。オレは濃姫様から貰った短刀を小見さんに渡した。


 「これは・・・・」


 「この戦に出る前色々とありまして、濃姫様・・・。帰蝶様で宜しかったですかね?帰蝶様に頂きました」


 「うっ・・・・・・グスン。これは道三様が帰蝶に渡した守り刀・・・。妾が旦那、道三にお渡しした物とそっくり・・じゃ・・・。うわぁぁぁぁん」


 「母上!?二度と我が儘言いません!どうか・・・」


 オレは何も言う事ができず、見守る事しかできなかったが小見さんは一頻り泣いた後・・・静かに立ち上がり、短刀を鞘から出し静かに龍興の首を一突きした。


 オレは無言で龍興に頭を下げ、小見さんの方へ寄ると手で制される。


 「此度の斎藤家の仕置き・・・。妾の一命にて収めて戴きたい。婿殿にもそう伝えてもらいたい。芝田殿には迷惑をお掛け致しますが、どうかよろしくお願いお頼み申す」


 いやいや!?無理無理無理!ここでこの人に死なれたらオレ濃姫さんに拷問されてしまうよ!?ちょっと受けてみたい気はするけど・・・。ゲフンゲフン。


 「この城の仕置きはもう決まってるみたいですよ。とりあえず下に降りましょう。貴方を死なせてしまえば、私が斎藤の人達に殺されてしまいますよ。ははは」


 笑いで誤魔化したが、本当にこの人の慕われ様を見れば、不破さん辺りはマジでオレを殺しにきそうだ。


 その後、オレの説得が功を奏してか血が付着した短刀を返してもらい、オレはお菊さんに洗ってもらうように言い、下の信長さんの元に向かう。結局、城の人達は誰も龍興を後追いする人が居なく、全員助命された。北側から攻めていた森さん、北西方面から攻めていた木下さんが合流したのは夕方過ぎだった。


 「まず己ら元斎藤家の者に伝える!夜までに城を清掃しろ!」


 汚い物が嫌いな信長さんらしい最初の仕事。


 「その仕事が終わればお前達が今まで食した事がない物を食わせてやろう。食欲が無くとも食いたくなる物だ。剣城ッッ!!カレーを作って参れ!」


 いやまたカレーかよ!?しかもオレが作るのかよ!?あぁ〜、あぁ〜、あぁ〜!到着したばかりの森さんですら顰めっ面になってるよ!?オレもカレーは飽きたし・・・・。すき焼き食べたい・・・。


 「信長様!?もしよろしければまだ食べた事ない、古今東西嫌いな人を私は聞いた事がない、すき焼きなんかいかがですか!?先日配下と食べると好評でして──」


 「貴様は分かっておらぬようだな?カレーの最初の事を忘れたのか?」


 いや、いきなり紫のオーラを発せられているのですが!?


 「ワシが食す前に配下と食しただと!?剣城ッ!そこに直れッ!貴様はワシがどれだけ食に………………だからお主はそんな腹で………………少し誉めたくらいで………………いつどこでどうやって作ったのか…………………お前達だけで楽しみやがって………………分かったなら今すぐ作ってこい!!!」



 いや長かった・・・。30分くらいは説教されてたんじゃないのか!?城の人もビックリしてたじゃないか!?こんな時こそ小見さんは助けてくれよ!?なに横でのんびり抹茶ミルク飲んでるんだよ!?


 その後は急いでタブレットを起動して、宝物庫から貰った唯一つあった金塊を売却に掛ける。


 《金の延べ棒10kg》買取金額¥700000000(金1g¥7000)


 たっか!!!ヤバっ!!!やっぱ金は裏切らないんだな!?オレは速攻で売り払って未だ到達していない残金億を夢見る。いかん!いかん!そんな事じゃなく早くすき焼きセットを!!


 《すき焼きセット4人前×100》¥1000000


 《第3のビール金色麦芽10ケース》¥50000


 《オレンジジュース2ℓ×10》¥3000


 クッ・・・・!ここでまたゴーストバナーか!?しつこいぞ!?

え〜と、なになに?芸術神フェア売り切れ御免セール!?


 オレは軽くスクロールして流して見てみるが本当に色々な物があった。ワイングラスだろうが人の顔の形をしたグラスとかもあるし、西洋の街のような絵などもあった。やはり驚くのはその金額だ。全部500円とか1000円なんだけど!?あっ!?どうせならあの食器セット大量購入してあれで出してみるか!?たまには農業神様にも恩返ししないといけないしな!農業神様は芸術神様が好きとか言ってたから喜ばれるだろうな!


 《芸術神見習いが作った食器セット×200》¥100000





 これだけあれば大丈夫だろう!見た感じ主要な人の数よりは多く注文したし、余れば収納ボックスに仕舞っておけば今度食べれるし、酒も大丈夫だ!酒が飲めない人にジュースがあるし!食器はこのままこの城で使えばいいし!よし!頑張って作ろう!ってかそう言えば慶次さんがオレと気が合う人が居る、とか言ってたよな!?まっ、明日でいいか。


・・・・・てか酒池肉林の極意聞くの忘れたじゃないか!!!!!!!!








〜神界芸術神宮殿〜


 「芸術神様!ご報告です!!!!」


 「煩いわね!誰よ?」


 「私です!農業神様の眷族の!」


 「ふん。貴方なんか知らないわよ?」


 「え!?先日頑張ってバナーを作った・・・」


 「あぁ〜!貴方ね?ごめんなさいね?私カッコイイ男前以外はすぐ忘れちゃうの。それで眷族君?どうしたのかしら?」


 はぁぁぁ〜・・・。芸術神様はいつ見ても綺麗だ・・・。


 「後光フラッシュ!!!」


 「うっ、うわぁぁぁぁぁぁ!!芸術神様お控え下さい!許して下さい!!!」


 「貴方。今、変な事考えたわね!?」


 「申し訳ありません!!はぁー、はぁー・・・・」


 「分かればよろしい。それで何かしら?」


 「例のバナーからの注文が殺到しております!250点程注文が入りました!!!!!」


 「え!?そんなにも!?どこの誰が購入したの!!?今すぐ教えなさい!(ブヲォン!)」


 「芸術神様!すぐ言いますから権能をお控え下さい!!!!!」


 「あら!?ごめんなさい?興奮してしまいましたわ」


 「えーと・・・場所は地球の…。時間軸は…」

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