芸術神降臨

 オレはこの城の料理番の人と伊右衛門さん達と、城中の鍋という鍋を片っ端から持って来て、城の竈門、外で焚き火をして、すき焼きを作る。正直下品だとは分かってるし、失礼だとも分かってるが火口が足りねーんだ・・・・。


 「第一陣は信長様にお出しして下さい!順番は信長様、森様、丹羽様、柴田様、木下様、佐久間様です!その後に城方の人達にお願いします!」


 「はい」


 「相変わらず剣城は凄い料理を知っているな?これは匂いだけで分かる。米が進むやつだな!?」


 「そうですね。私もこのすき焼きはかなり好きですよ!大鍋で作りお椀や皿に盛り付けて出しましょう。とてもじゃないけど鍋が足りません」


 「分かった。それよりこれは古今東西、嫌いな者が居らんというのも頷ける。どれ、味見をば・・・・。うっ、美味いッ!!!これは美味い!!!!!!今まで食べた肉で一番だ!それにネギ!このとろっとした汁に合う!!」


 「一応4人前ずつですが小分けしてるやつなので、その食べた物は伊右衛門さんや他の人の物なので、食べていいですよ!では私は持っていきますので、後はよろしくお願いします!」


 「織田の料理番様・・・・。我らもお手伝いを・・・」


 「あぁ〜、斎藤方の料理番さん、すいません。気付きませんでした。この伊右衛門さんって方が頭なので、この人に指示を仰いで下さい!」


 「おい!何かあればワシに聞け!この方は今後お前達の殿になる、織田のお館様直属の料理ご意見番だぞ!?気安く喋るでないぞ!?」


 いや気安く喋ってくれていいよ!?そんな偉い人間じゃないからね!?


 


 「お待たせしました!本来は鍋でお持ちしたかったのですが、全員の分は足りなく──」


 「御託はいい!早う用意せいッ!」


 余程腹が減ってるのかな?剛力君は8人前渡しているから今頃、外で食べてるかな?


 「貴様ッ!!!美味いではないか!!!カレーと同等・・・。いや、カレーよりは少し劣るが、勝者が付けにくい美味さではないか!!!」


 「喜んでもらえてなによりです」


 「醤油の中に甘さを感じ、酒の風味もあるかのう?ワシはこの汁が好きだ。皆の者も温かい内に食せ!可成!お主の配下に醤油を作った者がおるだろう?この汁も作れるか聞いておけ!」


 いや信長さん鋭くないか!?何の味付けか分かるのか!?


 「はっ。・・・・美味い!剣城!?これは何ぞ!?これ程の極楽を感じる物は!?米が止まらんではないか!?」


 「本当だな!?自然と米に手が進んでしまうではないか!?」


 他の皆良い反応だな。あぁ〜あ、斎藤の将の人達は恨めしそうな目になってるよ・・・。早く出してあげよう。


 「酒も置いております。ご自由にどうぞ」


 「うむ」


 オレはそれから、せっせと皆にすき焼きを配り食べ方を言い、竈門と往復を繰り返す。


 「よし。これで皆に行き渡ったな。あんなに人の死を見たのに平気だな。この時代に順応しだしたことかな?お菊さん居る?」


 「はっ」


 「小見さんはどんな感じ?」


 「もう一度栄養ドリンクを飲んでもらい、粥と白湯をお出しして今は落ち着いております」


 「分かったよ。竹中さん達は?あれから見えないけど?」


 「竹中様は外で我々とすき焼きを食べた後、家中に沙汰を伝えてくるとの事で、杉谷様を付けております」


 「了解。小見さんには余りの布団とジャージでも渡して、楽に過ごすように言っておいてくれる?チョコとか甘い物も忘れずにね!」


 「畏まりました」


 「ゆきさん居る?」


 「ここです」


 「おっ!?ビックリした!ゆきさんも中々やるな!?お菊さんより分からなかったよ!?」


 「菊は剣城様が驚かないように注意しているだけです。私はまだあそこまでの技量が足りず、申し訳ありません」


 いや技量でどうにかなるもんなの!?忍者はやっぱ凄いな。


 「ゆきさんはこの戦の事、色んな人に聞いてメモしといてね?明日にでも信長様に言って、甲賀に行く許しを貰うから。大膳に補給の事、言っておいてくれる?」


 「・・・ありがとうございます。了解致しました」



 この日の夜は、どの城に誰を配置するかとか決めるらしく、オレも呼ばれなかったのでタブレットを起動して、ノアの金額を支払おうと思い、ヘルプを押す。



〜時間が止まる〜


 「やぁ、我が兄弟!喜んでくれたんだなぁ?」


 「こんばんわ!農業神様!あっ、これどうぞ!さっきの補給で私の村で作ったイチゴチョコパンケーキ擬(もどき)です。ドライイースト渡すの忘れていたので硬い生地ですが、それなりに美味しいですよ。農業神様のお陰で村で色々作れ出しました!」


 「ありがとうなんだなぁ。後で食べるんだなぁ」


 「それであの神馬の支払いをと思うのですが・・・」


 「あれは個人的にカリクローにお願いしたから、お金はいらないんだなぁ。けど、ちゃんと世話してあげてほしいんだなぁ」


 「え!?それは申し訳ないのですが・・・」


 「気にしなくていいんだなぁ。それなら今開発中の船や、我が兄弟が必要としてる書物なんかを買ってほしいんだなぁ」


 「買います!是非買いますよ!今お金に余裕あるので日々のお礼の気持ちを込めて、2000万円先払いします!もし足りないようならまた支払いますよ!」


 「嬉しいんだなぁ。ならこれは受け取っておくんだなぁ。開発費や広告代に使うんだなぁ」


 「それと芸術神様の商品もかなり好評なので、また買わせて頂きますね?お礼言っておいてくれますか?」


 「分かったんだなぁ」


 

 「お退きなさい!後光フラッシュ!!」


 「うわぁぁぁ!芸術神様!今は農業神様がお話中です!」


 「あら?農業神?久しぶりね?」


 「おっおっおっ、どどど、どうしたんだなぁ!?」


 綺麗な女の人だけど、さっき見えない所から声だけ聞こえたけど、あの人が芸術神様かな?やべ・・・。手土産なんも無いぞ!?


 「農業神!代わりなさい!」


 「い、い、今はおいと会話中なんだなぁ」


 農業神様が狼狽えてる!?


 「ふ〜ん。農業神が手を加えてる人間と話をさせてくれれば、今度ユグドラシル5つ星ホテルのディナーに付き合ってあげてもいいんだけど?勿論、貴方の奢りよ?」


 「許すんだなぁ」


 いや農業神様?貴方ATMになってませんか!?チョロ過ぎやしませんか!?


 「貴方が私の眷族が作った物を買ってくれた人間ね?芸術を分かる人間かと思えば冴えない顔ね。ガッカリだわ」


 出会って10秒で貶された件。


 「顔はすいません。どうしようもありません。けど私は感謝しております。私は芝田剣城と申します。これからも良い物があれば、購入させていただきますね」


 「ありがとうね?我が宮殿の倉庫にまだまだ色々あるの。私の眷族の子達が可哀想だから色々買ってあげてね?服なんかも色々あるからね?貴方ももう少しオシャレすれば、男前になるんじゃないかしら?ここをこうやって…」


 ヤバイ!めっちゃ良い匂いがするんだが!?綺麗だ・・・。綺麗過ぎる・・・。


 「後光フラッシュ!!!」


 「うわぁぁぁぁぁぁ───!!!!」


 「ごめんなさいね?人間?私、穢らわしい考えが分かっちゃうの」


 いや一瞬、目の前が光で見えなくなり頭が浄化され、秒で賢者モードになったような気がする・・・。


 「じゃあ人間君?いや、芝田剣城君?よろしくね?チュッ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。



 「「農業神様!!!抑えて下さい!!!」」


 「我が兄弟は・・・我が兄弟はまだ、おいですら投げキッスされた事ないのに・・・・」


 いやあの投げキッスで怒るの!?オレのせいじゃないだろ!?


 「農業神様!すいません!!オレに良い考えがあります!!」


 あれは昔、親父が遅くなると言い、帰ってくるとベロンベロンに酔って帰って来て、お袋がカンカンに怒り、次の日謝る時に花束を渡し、『この花より君の方が綺麗で霞んでしまうが受け取ってほしい。すまなかった』と臭い言葉を言って、オレは子供心だがこんな物で許す筈がないと思ったが、お袋は嬉々として許していた。芸術神様に通用しないかもしれないが、やってみる価値はある筈だ!


 オレは農業神様にオレの作戦を伝え、試してみる価値はあります!と言った。


 「そんな事した事もなかったんだなぁ。流石、我が兄弟なんだなぁ。早速試してみるんだなぁ。さよならなんだなぁ」


 「あっ、ちょっと待って下さい!あの缶飯のハズレって・・・」


 「ハズレを食うと酸っぱいんだなぁ。見た目じゃ分からなくて大変なんだなぁ。こればかりはどうしようもないんだなぁ。許してほしいんだなぁ」


 そんなもんなの!?事前に分からないもんなの!?まあ安いからいいけど。


 「分かりました!ではまた!」

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