間話

 〜剣城邸宅〜


 「我が君ぃぇやぁ〜・・・・」


 「こら!爺!そんな所でなに涙なんて流しているのですか!?」


 「ゆきぃ・・・・我が君がワシを置いて行ったのじゃ・・・」


 「仕方ないでしょう?その代わり家の事を守るように言いつけられたのでしょう?」


 「けどじゃ!ワシはいつ如何なる時だってお側を離れたくないと何度も何度も言ったのに・・・我が君は・・・。ワシは我が君の為ならばなんだってすると言うのに・・・」


 「ハァー。で、その紙束はなんですか?」


 「これは我が君に宛てて書いた手紙だ!1日10枚ずつ書いているのだ。本当はもっと書きたい事があるが、これ以上書けば、我が君も読むのが辛くなるかと思うてのぅ」


 「は!?日に10枚!?」


 「これでも我慢しておるのじゃ。そんな冷たい事言わんでくれ・・・」


 「奥方様。お疲れ様でございます。本日の業務終了致しました。各現場の進捗及び、各部署からの要望を纏めておきました」


 「剛力ね。ありがとう。助かるわ。っていうか、今更呼び方も話し方も変えなくてもいいわよ?」


 「いえ。そのような訳には参りません。金剛とも話し合い、剣城様の妻をいくら昔から知ってて、同郷といっても呼び捨ては違うと思いまして。そこの爺は知りませぬが、他の者にもこれは徹底するよう命令致しました。ちなみに発案は野田様と大野様からです」


 「そうなのね。まぁ分かったわ。こら!爺!そんな所では鳴き声が武田様に聞こえてしまうわ!」


 「ぬぅぁっ!?その言い方は酷いではないか!」


 「ホギャー ホギャー ホギャー」


 「ほら!爺のせいで、ナギサちゃんが起きてしまったじゃない!」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 「えぇ〜、金剛殿だったか?ワシが美濃へ来て2日と経った。外ではなんぞ皆が色々手に持って動いているが何か領内で致すのか?」


 「はっ。これはお試しではあるのですが夜市というものをしてみる試みでございます」


 「夜市?それはなんだ?」


 「織田家に連なる仕事の者は30日に一度、銭を支給しております。それは25日に。そして、7日の事を、日の日、月の日、火の日、水の日、木の日、金の日、土の日と分けて呼び名をそうしております。

 その25日以降の直近の土の日に夜市を行おうとしてるのです」


 「うむ。それは難しいながらなんとなく分かった。沢彦殿からも、既に聞いた。明日にはそのテストなる物も行われるのだ。あ、いや・・・話が逸れた。で、その夜市とは主に何をするのか?」


 「おはようございます。もうお目覚めでしたのですね」


 「奥方殿。おはようございます」


 「奥方様おはようございます。今しがた武田様に夜市の事の説明をしておりました」


 「分かったわ。金剛は本日から武田様がお泊まりになる、【4代目 岐阜ホテル】で待っていなさい。ここからは私が変わるわ」


 「はっ」


 「何も・・・奥方殿がしなくとも・・・」


 「いいえ。私の旦那である剣城様も甲斐で今頃色々と学ばせていただいているかと思います。ですので、私が武田様を美濃で色々と学んでいただきたく思います。で、これから日に2日ずつ宿を変わってもらうのですが、苦手な食べ物とかあれば事前に言ってください」


 「いや、ワシは苦手な物は何もない。寧ろ未だ慣れていない。あのうどんかと思ったらぁみぇんなる物は至高な味だった」


 「ラーメンですか?それならば岐阜城下5丁目にある14代目 麺魂に行かれると良いかと。大変美味ですよ」


 「じゅ、14代目だと!?」


 「あっ、名前はそれですが、間違いなく初代ですよ。これも剣城様が齎せた功績の一つです。それと、良ければ芝田家の家老の小川殿の手が空いておりますので、よろしければその夜市に武田様を案内人がてら連れてってもらってもよろしいでしょうか?銭の方ならば芝田家が持ちますので、遠慮なく好きにしてくれて構いません」


 「いや、持たれてばかりでは武田の名折れよ。これを両替していただきたい」


 「まぁ!?こんなに大きな・・・金ですか!?」


 「うむ。何かの時のために兄者が持たせてくれたのだ。足りるか?」


 「いや・・・足りるもなにも・・・こんなに使い切る事できないと思いますよ?」


 「なに!?」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「我が君ぃ〜・・・・」


 「家老殿は随分と殿の事を思っているのだな?だが安心しなさい。甲斐は美濃より貧しいが、それでも持てる限りの・・・ぬぅぁ!?ぬぅぁんじゃこりゃぁ〜!!?」


 「爺。ここに居ましたか。それに武田様。予想以上の来客で、警備の人間が足りず、槍持ち4人を前後に歩かせる事をお許しください」


 「いやそれは構わないが織田家は人の往来が多いとは思っていたが、こんなにも居るのか!?」


 「どれもこれも我が君の功績なのですじゃ!剛力!ワシのハルモニアのスーツを持ってこい!あれを着ていれば誰も手出しなぞ考えぬだろう!」


 「あっ!小川の爺殿様ではないですか!こっち!こっち!新しいカラメル焼き鳥を考えたのです!」


 「だ、誰が爺殿様じゃ!なっ・・・これは・・・お前は確か3代目 皇帝鳥屋だったか!?やりおったか!?」


 「し、知り合いなのか!?」


 「ほらほら!どこかのお武家さんですかぃ!?小川の爺殿様には日頃から贔屓にしていただいておりますので、あっ、これサービスです!どうぞ!」


 「さ、さぁびいすとは!?」


 「(ハムッ)う、美味いッ!!今少し甘くても良いが美味い!武田殿も食べてみよ!美味いですぞ!」


 「う、うむ・・・(ハムッ)こ、これは・・・(ハムッ ハムッ)ぬぉ!?ワシとしたことが・・・もう食べてしまった・・・見誤ったか・・・」


 「武田殿。これだけで満足なんぞしますまい?他にも美味い出店が多数あるのですじゃ!特に・・・あそこの【2代目 引っかけバー甲賀屋】の琥珀色の酒・・・ウィスキーは最高の美酒ですぞ!」


 「う、うむ。甲賀屋だな!?では家老殿にここは任せよう。これも任務の一つだからな!」

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