デレる滝川一益

 その日の夜、初めて滝川さんに呼ばれ家に向かった。

 

 「はぁ〜・・・・」


 えっ!?呼んでおいて溜め息ですか!?


 「まあ、なんだ。上がれ」


 「失礼します」


 滝川さんの清洲の家はまあまあ大きかったが、柴田さんや森さんに比べて使用人がかなり多く居た。


 「単刀直入に言おう。慶次からも言われたが斎藤にも恐らく武田にも貴様の事、同盟の事がばれたやもしれぬ」


 「はい。なんか慶次さんが叔父御にも言ってくれると聞いて突然信長様から、お菊さんを滝川さんが護衛にしてくれたんですよね?」


 「はぁ〜・・・・」


 また溜め息!?


 「そうだ。慶次から聞いた。奴が珍しく他人に熱心なようで聞けば貴様だったんでな。ワシはむしろ間者に貴様が殺されてしまえと思っていたがお館様のお気に入りの貴様が死ねばお館様の天下が遅くなる。

 よって、護衛をつけた。あれは甲賀の里で親を亡くした草じゃ」


 「そう言えば滝川さんって忍者の里、甲賀の出身だったのですよね!?甲賀と伊賀なら伊賀の方が未来では少し有名かもしれませんが歴史探求者なら甲賀も捨て難いですよ!!!!!」


 滝川さんと話する機会が無かったから思わず興奮してしまう。


 「なっ、何を言っておるのだ!?忍者とは透波や乱波の事か?それに伊賀の方が有名だと!?ふんっ!笑わせる!甲賀の方が優れておる!そりゃ伊賀の方が交通の要所に近いから甲賀より発展はしておるが、そう変わったもんじゃない!」


 甲賀に誇りを持ってるんだな。


 「はい!それを滝川さんが面倒見ているのですね?伊賀は松平さんの家臣、服部半蔵さんとかがかなり有名ですね!後は北条の風魔小太郎とかが有名ですかね!?」


 「貴様は未来から来たというのは真だな。我らですら北条の風魔は名前しか知らなかったぞ。それと伊賀は銭で動くからの。

 我らも銭で動きはするが甲賀の人間は敵以外の農民は手に掛けたりはせぬ。

 じゃが我らは一括りにされ周辺からは蔑まれる。甲賀の草も全員が全員ではないにしてもだ」


 「忍者は大変ですよね。でもそうでもしないと暮らしが成り立たないのも駄目ですね。私が殿なら喜んで全員と言うか、日の本の忍者全員雇いたいくらいですよ!」


 「そう言いつつ貴様も我らを蔑ろにし、ちっぽけな銭しか渡さず使い潰すつもりだろう。

 菊にも余計な事は話さずに、不本意ながら貴様の護衛を命に賭しても果たすよう申し付けておる。それも給金は鐚銭数枚程でだ」


 「えっ!?命かけてるのにたったそれだけですか!?なら私からも給金渡しますよ!私は正直この時代でお金はあまり使わないので、信長様からの普段の給金とそういえばこの前も何貫か貰ったのと、この前も目録だけでまだ貰ってなかったか!?」


 そう言ってボックスに入ってるお金が何貫かすらも分からんけど、半分を滝川さんに渡した。


 「これがどのくらいの価値でどのくらい過ごせるか分かりませんが、とりあえずこれでいいですか?また褒美を貰ったらお渡ししますし、ご飯が食べられないのなら何かお出ししますよ。

 米、野菜は量産できだしたのでやっぱ甘味・・・、以前、滝川さんが食べたチョコレートなんかは如何で・・・・」


 「黙れっ!!!!貴様はそうやって何も知らない様に上辺だけ言い繕って、中身は他人と変わらんのだろう!?確かに銭はお館様並みに出しておるが」


 「じゃあこうしましょう!今、信長様が私に清洲の家を作ってくれています。家ができたら使用人は全員甲賀の人にしましょう!勿論、給金も払いますし、ご飯も私が持ちますよ!その代わり慶次さんも家に来て欲しいです!」


 「そんな事できる訳ないだろうが!第一、お館様ですら乱波者は嫌っておるのだぞ?」


 「信長さんが難色示したら私が信長様の甘味を出さない様にすればいいだけです!ダメでしょうか?」


 「ほんと貴様という奴は・・・。よかろうよ。貴様の家なら普通は4人程、下男、下女が居てもおかしくないくらいの家じゃ。菊と慶次を入れて後2人面倒頼まれてくれるか?」


 たった2人!?なんなら10人くらい来るのかと思ったんだけど・・・。外に小さめのプレハブでも置いて布団でも出したら5人くらい寝れるかな?


 「後5人程多くしてくれて構いませんよ?私の技で簡易的ですが寝られる場所を用意できるので」


 「それはちゃんと雨風凌げる場所なのだろうな?」


 「勿論です!あの村にも木下様が連れて来た人達が寝てる所あるでしょう?あれの小さいやつを出しますよ」


 「何!?あれは木下が建てたのじゃなく貴様が用意したのか!?」


 「はい。私の技で出しました。さすがにあそこまで大きいのは銭が少々掛かりましたが」


 「う〜む。では後5人程頼まれてくれ。・・・・・・時に・・・貴様はお館様が咳病の時に出した寝る時に下に敷いてる物は出せるのか?それとその・・・ちょこれーととかも・・」


 おい!あの滝川一益さんが少しデレ始めたぞ!?これは録画案件か!?


 「布団ですか?出せますよ。チョコレートも出せますよ」


 《布団セット》¥10000


 《チョコレート詰め合わせ》¥4000


 「はいどうぞ」


 「!?!?ワシはまだ頼んだ覚えはないぞ!?それにいつ見てもあのご老体は気味が悪いな」



 えっ!?いや今絶対欲しいって流れやったでしょ!?もう購入してしまったぞ!?それにホログラムの事か?あれは慣れてもらうしかない。だって消せねーんだもん。


 「とりあえず購入してしまったので受け取って下さい。対価は今回はいいですよ」


 「そうはいかん。対価はちゃんと渡す。あの村の見回りついでに取った物だ。あの村長が言うには未来では価値があるそうだな?」


 そう言って下男さんがカゴ5杯くらい入った松茸を持ってきてくれた。


 「えっ!?こんなに沢山、松茸生えてたんですか!?私が半日探しても少ししか見つけられなかったのに!!」


 「ふん。我らの里は山の中なんでな。こんな事くらい造作もない」


 それだけで、こんなに差が出るの!?めっちゃ警戒心あった滝川さん、かなり優しいやん!!!

オレは松茸を全部売りにだした。鑑定金額もビックリ!刀以外で久々にこんな金額見たよ!



 《天然松茸80Kg》紛う事なき天然松茸。煮て焼いて香り良し。


 鑑定金額¥8000000



 たっか!!高過ぎ!キロ単価10万もすんの!?松茸ヤバ過ぎ!それからオレは買い取りしてもらった後、横に椎茸の原木というのを見つけて気になったのでクリックしてみると、


 《簡単栽培椎茸の原木》¥10000


 美味しい椎茸が定期的に水をかけるだけで1ヶ月後に生えてくる。3回収穫可能。


 購入を押したら・・・・。


 出たよ!久々の広告!!!えっと何?Garden of Edenの副社長考案、農業神が愛用するバイク!?!?はっ!?農業神が副社長!?出てるのゴッドファーザーじゃなくあの農業神様なんだが!? これ明らかに農業と関係なくね!?しかもこれオレ用の広告じゃね!?


 『ガソリンを使わないマナを使ったどんな悪路も絶対転けないバイクなんだなぁ。ガソリンが発見されてない時代でも使えるんだなぁ。価格は振幅シフトキーイングなんだなぁ』


 じゃねーよ!最後の価格表記意味が分からないんだが!?そう言って最後の映像が終わると・・・・・・・デカデカと、



 ASK!!!




 結局ASKの事かよ!!!!!!何でカッコよく言ったんだよ!オレぁ初めて聞いたよ!!!



 「なんぞ貴様はワシが好意で松茸を取ってやったのが不満なのか!?」


 「あっ、いや、すいません!私しか見えない映像で凄い物を見たので慌てただけです。松茸ありがとうございます!めちゃくちゃ値段良かったです!それとこれをとりあえず一つですが試しにどうぞ。定期的に水をかけるだけでいいです。1ヶ月すれば椎茸が出来ます」


 「何!?椎茸が出来るのか!?それは本当か!?」


 それからこれは3回収穫出来て、もし本当に簡単に出来るのなら、甲賀の人用にまた用意する事を伝えた。滝川さんが珍しく喜んでいた。


 「貴様の事を信用しなさ過ぎていたようだ。これで本当に椎茸が出来るかは分からぬが、里の者に銭が渡れば乳飲み子を亡くしたり口減らしをしなくて済む」


 あっさり凄い事、戦国時代の闇を聞いて悲しい気持ちになった。


 「今すぐは無理ですが甲賀に限らずこの日の本から子供の死亡、口減らしなんかをさせない様に私は出来る事を精一杯いたします」


 「ワシも疑うだけじゃなくこれからは貴様をちゃんと見るように心掛けよう。だが!貴様を完璧に許した訳ではないからな?疑う事があれば即刻斬るぞ?」


 いや、チョコ食いながらですか?まぁ少しは進歩したかな!?徐々に信頼上げていこう。そう言って滝川さんの家を後にした。








 「菊。居るか?」


 「はっ。滝川様、ここに」


 「全面的に信頼しとる訳ではないがあいつをしっかり守ってやれ。お主も聞いてたと思うが少ないが受け取れ」


 「そんな滝川様、勿体のうございまする」


 「良い。それに彼奴が自分から言うた事じゃ。数人の親が居ない甲賀の者をあいつに面倒見てもらう。菊に人選を任す。面倒を見ると言うても護衛の任も入っておる。可哀想だが童はやめておけ」


 「はっ!かしこまりました」


 本当に変わった奴だな。ちょこれーとは本当に甘いが彼奴も敵に対して今後こんな甘い奴では困るぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る