即日落城

 「続けぇぇぇ〜〜!!え!?あっ!?え!?」


 「芝田様!?これは!?」


 「おーい!剣城!これはどういう事だ!?」


 颯爽とオレが先頭で観音寺城に突撃した訳だが・・・。うん。城兵はブルブル震えている。


 「ど、どうした!早く此奴を討ち取れ!!」


 「おい!剣城!あの後ろで1人士気が高い奴は昨日、一昨日とお前に弓を射った奴だぞ?討ち取るか?」


 「まぁ、あの人だけやる気ありそうですし、1人くらい討ち取らないと、後で信長様に怒られそうだしね」


 慶次さんはこの圧倒的な戦には、既に興味が失せているようだ。馬上にてこの時代の人では珍しい、ブラックコーヒーを飲んでいる。大体の人は甘々にして、砂糖ドバドバミルクコーヒーを飲む人が多いのに、だ。


 「池田勝三郎恒興、只今参上ッ!!六角の兵めッ!!そこにおったか!!死ねいッ!!」


 ズドンッ


 「「「「「・・・・・・・・」」」」」


 オレ達第一陣が城門突破して間も無く・・・いや寧ろ2分と経っていないし、なんなら号令掛けてもないのに、第二陣の池田さんの突撃だった。オレも含め、慶次さん、オレの側近として残った甲賀隊の黒川さん率いる300名、信長さんが与えてくれた兵の人達、皆、呆気に取られた。明らかにオーバーキルだ。


 「グッ・・・な、なんのこれしき・・」


 「チッ。ワシとした事が抜かったか。まだまだ鉄砲は慣れぬな。誰ぞ!ワシの刀を!うむ!これだ!誰かは知らぬがその旗印は重臣だろう!首は頂くぞ!死ねい!」


 グサッ  ポトッ


 「おい!剣城!勝ち鬨だ!勝ち鬨を上げよ!」


 「え!?あ、はい!えいえいおー!えいえいおー!」


 「「「えいえい!!オ──ッ!!」」」


 とりあえずオレが勝ち鬨を上げると、皆も続いてくれる。オレもやる気になったところで、美味しいところを池田さんが掻っ攫っていった訳だが・・・。


 「遅い!突破してからいつまで待たせるつもりだったのだ!ちったぁ〜いい激を飛ばしたかと思いきや、すぐにこれだ!何の為にワシがお前の下に着いたか、分からんじゃないか?ん?まさかワシを手ぶらで帰すつもりだったのか!?ん?」


 池田さん的には、2分にも満たない時間は長いらしい。この辺が信長さんとそっくりだ。


 「すいません!助かりました!流石、池田様です!誰かは分かりませんが、この討った者は慶次さんが言うには、先日オレに弓を射った奴だそうです!」


 「ふん。他愛ない。この期に及んで言葉闘いの相手なんぞ興味もない。箕作城も既に落ちたらしい。他の者より手柄が無いと舐められてしまうからな。久々に前戦を張ったが大した事のない六角兵よのう。おい!剣城!後は任せる!お館様をお呼びする準備をせい!」


 「あ!残りの兵の人達はどうしましょうか!?」


 「うん?そんなのワシの知った事か!大将はお前だろうが!好きにせい!」


 面倒臭い事だけオレにさせるのかよ!?もう勝ち確定ぽくなってるけど、まだ城の中、掌握してないんだぞ!?


 

 「クッ・・・最後の一兵となろうとも少しでもお前達を道連れに──」


 「あ、外の足軽の人達は皆、投降しましたよ?今頃、味噌汁とか飲んでるんじゃないかな?誰かは知りませんが城詰めだったのでしょう?それなりに有名な人じゃないんです?」


 「おーい!剣城!このおっさんも口で『最後の一兵まで』って言ってるんだから、あの世に送ってやれよ?しっかし、観音寺城とは何も無い所なんだな」


 「いや慶次さん!それは失礼だから!で、貴方はどうします?最後まで戦うと言うなら、オレが相手になりますが?あ、ちなみに昨日だったかな?偉そうに弓を射った人・・・足軽の人が言うには、吉田重政って人なんでしょう?あの人が先に待ってますよ」


 「な、な、何と!?吉田を討ったというのか!?」


 「だから言ったじゃないすか。オレは早く城を綺麗にしないといけないんです。将軍が待っているんです!やるのかやらないのかどっちですか!?」


 オレはこの誰なのか名前すら聞いていないおっさんに、戦神様のサブスクリプションで貰った蛇剣という、蛇のようにうねってる剣を片手に持ち、問い掛ける。


 「いや、ここはワシが六角家を裏切れば──だが殿はワシに後を任せて甲賀に──このまま待っていても何も──」


 長い!長過ぎる!この人は剣を突きつけられてる事が、分かっているのか!?大概、疲れてきたぞ!?


 「あぁ〜もう無理!この剣、重いんだよ!?黒川さん!この人連れてって!反抗するようなら殺して、従うようなら他の人と同じように!切腹するというなら端の方でさせてあげて!残りの甲賀隊の人達は全力で掃除!拭き掃除!バフ掛け、ワックスも!あと、芳香剤も忘れないように!」


 「「「「はっ!」」」」


 斯くして、戦闘開始即日に観音寺城は落ちた。こちらの損害は0。これは数字だけの意味でもなく、本当の意味で0。怪我人すらいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る