観音寺城の戦い

 2日目にしてオレ達は勝ちを確信した。いや、むしろ最初から勝ちは確定レベルだったけど。


 まず瓶にオイルを入れた矢を城壁に射る。その後は火矢で攻撃をしたのだが、見事作戦的中。


 「我が君!見て下され!敵は火を消すのに精一杯ですぞ!!」


 「いやいや、小川さんって夜勤組でしょ!?寝なくていいんですか!?」


 「なんの!なんの!栄養ドリンクを頂戴したのですじゃ!」


 いや、答えになってないんだが!?


 「まぁ無理はしないように!この分なら明日にも総攻撃かな?」


 2日目終了時点でオレが居る観音寺城からは、50名近くの城兵が投降してきた。夜闇に乗じてだ。オレは夜は寝るタイプだ。だが、この兵達の投降が疎らだから、その度に起こされる。


 「またですか!?慶次さんは!?」


 「前田様ならもう就寝されました」


 「1番隊の隊長がオレより先に寝るって、どういうことだよ!?小泉さん?悪いけど、敵の兵は一つに纏めておいてくれます?さっきトランシーバーで『明日早朝に総攻撃を掛ける』って言われたから」


 「殺してしまった方が早いと思いますが?」


 「いや殺さないから!反抗的な人達は要らないけど、なんとか逃げ出して来た人達でしょ?即席の味噌汁でも飲ませてあげて!オレは寝る!」


 「御意」


 こんなんじゃ明日は大変だ。


 「剣城様!構いませんか!?」


 「あぁもう!寝れやしない!もういい!黒川さん!どうしました!?」


 「あ、いや・・・申し訳ございません。投降してきた者の1人・・・布施公雄と申しまして・・・六角家、年寄衆の1人だそうです」


 「ふーん。その年寄り衆の人が足軽か何かにでも変装して、投降してきたんだ?」


 「はっ。それで、六角は城を放棄して逃亡するようだ、と話しております」


 「はぁ!?すぐに会う!」


 布施公雄・・・歴史好きなら知ってる人も居るかもしれないが、オレは分からない。まぁ年寄衆というくらいだから、それなりに六角家で権力のある人なんだろう。そんな人まで投降されるなんて、六角家はもうバラバラ過ぎだろ!?しかも逃げるだって!?


 「こんばんわ。お初にお目にかかります。織田軍の芝田剣城と申します。一応この軍の責任者の1人です」


 「こんな刻に申し訳ない。中々城を抜け出せなかったのですじゃ」


 「まぁいいですよ。眠れなかったですし。小泉さん?温かい物を用意してあげて。あと、着替えも用意してあげて」


 「そこまでしなくとも──」


 「大丈夫。この人は絶対に大丈夫。オレが責任持つから」


 布施公雄・・・見た感じ、年齢は50代後半だろうか。とにかく、ヤツレている。それに色々な猛者を見たり、それなりに戦をしてきたから分かる。この人は文官向きの人だろう。それなりに名のある人だろうけど剣ダコも無いし、なにより細い。


 「味噌汁・・・」


 「えぇ。戦場ですし、まぁ他にも色々食べ物はありはしますが、まずはそれで勘弁して下さい。飲みながら教えて下さい。逃亡するかもと聞きましたが?」


 「はい。殿と・・・あっ、いや・・・」


 「呼びやすいようにどうぞ」


 「申し訳ない。殿と大殿はそれぞれ甲賀郡、愛知郡に逃げるよう、算段しておるようです」


 「三雲なんとかって人はどこに居ます?」


 「剣城様!?」


 「小泉さん。気にしないで。オレも約束は守るから」


 「三雲は大殿を甲賀郡に逃げる先方になるかと・・・」


 「道は分かります?」


 「恐らく・・・南下するでしょうが、最初は北の猪子山から迂回して南に周り、八幡を抜け甲賀に向かうかと」


 「何でそんなに詳しいのですか?」


 「殿達は以前もこの道を使いました。ですので間違いないかと」


 要はこの六角は逃げ癖があるのか。まぁいいや。ハズレならハズレでもいいし、当たりならここで甲賀隊の皆は三雲や山中だっけ?因縁は終わる筈だろう。


 「小泉さん?決着をつける準備は?」


 「はっ!十二分に!」


 「了解。立場上、オレはこの場所から離れられないから、甲賀隊100名選抜して猪子山に向かってくれる?後は任せる」


 「構いませんので?」


 「大丈夫ですよ。特に望月さんは必ず連れて行くように。小川さんは暴走しないように!小泉さんのチェーンメイルでしたっけ?その西洋の甲冑。多分、敵の攻撃は受け付けないとは思うけど、気を付けて下さいね」


 「ありがとうございます!では早速、先回りして参ります」


 この布施なんとかって人が嘘を吐いてる、とは思わない。六角はこの歴史から消えてもらおう。

 


 それからオレは眠る事なく、ミヤビちゃんと雑談しながら朝を迎えた。望月さん達甲賀隊は色々な装備を持ち、六角が逃げないように先回りをしに行った。というか、既にこの観音寺城の主は居ないかもしれない。城から奇声も何も聞こえないのだ。


 空が白みだした午前5時・・・信長さんのトランシーバーの声が聞こえた。


 『全軍に告ぐ。遠慮は要らん。徹底的に勝て』


 この言葉が聞こえると、トランシーバーのスピーカーが割れんばかりの、声が聞こえた。それはオレ達の軍も同じだ。


 「「「ウォォォォォォ────!!」」」


 「敵の準備が整うまでに落とします!第一陣はオレを先頭に!第二陣は池田様!後はお願いします!」


 「チッ!ションベンタレが一丁前になりやがって!抜かるなよ!見事、この城を落としてみよ!」


 池田さんから褒め?かどうか分からない声を聞き、出陣した。戦神様から貰ったイージスの盾という、かなり大きい盾を持ってだ。持ってくれているのは剛力君だが。


 「突撃ッ!!!城門に国友大筒MK-2をぶっ放せ!!!」


 「1番隊!構えッ!!撃てッッ!!!!」


 慶次さんのリズムのよい掛け声で、一斉砲撃が始まる。


 ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ


 「門は壊れた!!城に雪崩れ込め!!行けッ!行けッ!!」

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