公家の部屋作り
次の日。オレは早速、剛力君を呼び出し登城した。
「この部屋にございます」
「うん。遠藤さんありがとうございます。後はこっちでやらさせてもらいます」
公家に寝泊まりしてもらう部屋だ。まあ馬鹿でかい城の中でも広い部屋だ。
「さて・・・剛力君はどう考える?」
「一乗谷は京文化が混ざり合った、今や京に負けない地だと思います。公家達が住まわれている家なんかもそうでしょう。そこで某は逆を突きましょう」
「逆?」
「えぇ。身に付ける物から調度品なんか、全てを機能重視で揃えれば良いかと思います」
剛力君が言ったのは、『手を拭くタオルから着替えまで、全て手触り肌触り機能重視で揃えよう』との事だ。そして『部屋に置く箪笥や花差しに至るまで芳香剤の体を成す物が良い』と。
そうと聞き、オレは剛力君に言われた物を買う事にした。どうせなら芸術神様に聞いた方が早いまである。オレはすかさずヘルプボタンを押した。
〜時間が止まる〜
「こんにちはなんだなぁ」
「農業神様こんにちは!実は芸術神様に──」
「あら?人間君?こんにちは?また私から買い物してくれるみたいね?嬉しいわ。既に私の眷族に用意させてあるわ」
そう言われて光の球体?が色々宙に浮かせて持って来た。
「これよ?この造花はアースガルドに生えている世界樹、ユグドラシルからしか咲かない花を造花にした物よ?それを天界にのみ生息する、サイクロプスが作った花蜜の匂いを纏わせているの」
いやいやサイクロプスってあの怪物だろ!?マジで居るの!?
「サイクロプスさんですか!?」
「あら?失礼な?差別はいけないわよ?それにみんな勘違いしてるけど、サイクロプス種は非常に勤勉で優秀な優しい一族よ?手先も器用でなんなら私の眷族で1番多い種よ?」
「失礼しました。謝ります」
「まあいいわ。二度と言わないでね?それで次はこれよ?」
渡された物は服とかタオル、絨毯、そして立体的に見える中世の町並みの模型に、屏風、蝋燭、茶道セットだった。
「我が兄弟が求める物を全て集めたんだなぁ」
「ありがとうございます。説明お願いできますか?」
説明されたのは・・・うん。普通のままだった。
「あら?何を期待してたのかしら?これでも貴方が居る世界線ではまだ見ぬ不思議な物よ?そうね・・・蝋燭に関しても光源が明るく、中々消えにくいのよ?茶道セットなんかも、これから来ると思う人間の権力者には、喉から手が出るくらい欲しがると思うわよ?」
「あ、ありがとうございます。ではこれはそのまま使わせてもらいます!代金の方は?」
「茶道セットだけ一つ¥2000!後は¥1000でいいわよ?服や絨毯なんかはアラクネ一族の糸から作り出したから、間違いないわよ?」
またファンタジーな人の名前が出たな!?
「分かりました!ではクレジットから引いておいて下さい!ありがとうございました!」
「いいのよ?随分と私の宮殿の倉庫が片付いているから、この調子でどんどん買っていってね?」
「ではさよならなんだなぁ」
〜時間が動き出す〜
「剛力君?これ見てくれる?」
オレはさっき買った物を剛力君に見せた。ご丁寧に説明書まで入っている。まあ使い方は全て分かるけど・・・けど!絨毯よ!これめちゃくちゃ気持ちいいんだけど!?
「剣城様!この絨毯はどうやって作られたのですか!?」
「いやオレも分からん!けどこれ気持ち良いね!?」
何て言えばいいか分からないが、物凄くフカフカで気持ちいい絨毯だ。物の配置なんかは剛力君に任せオレは城を後にした。別れ際に金色のみの折り紙と糊が欲しいとの事で、5000円分の折り紙とスティック糊を渡した。
なんとなく、想像はできるけど。多分金の部屋ではないけど何か折り紙を貼り付けて金の部屋でも作るのかな?
それから5日程して部屋が出来たとの事で、確認でオレと信長さんで部屋に入った。
「なんだ!この部屋は!?」
うん。オレもその感想だ。
「はい。まずはこの岐阜の町並みを要した模型を置き、隣の寝屋には金の屏風を置きました。そして、一乗谷にも負けないように連歌、茶道を興じる部屋と、遊びの一つとして双六を作りました。そしてその双六での勝者を、あの模型の色が変わる特色を活かして、最終的に予め決めた色が多い者が勝ちとし、褒美としてこの茶器のセットをと考えております」
いやもうむしろ剛力君が接待役でよくねぇ!?オレはそこまで考えてなかったよ!?
「その前に何か良い匂いがしておる!なんぞこれは!?」
「私が説明します。この何気ない造花が匂いの元です」
「うむ。たしかにこれから匂いがしておる!」
「これは特別な匂いを染みこませた造花です。そして寝る時には、この蝋燭を光源としてもらいます。一度私も試しました。中々明るいのですがどことなく優しい炎に思い、眠くなります。そしてこの襖を開けた庭を」
「うん?何も無いではないか?」
「これは公家が来る前日に私が梅の木を植え、1日で咲かせて見せましょう。梅を肴にしてのんびり過ごしてもらおう、と思っております。飯に関しては城の料理人にお任せします。今や私より素晴らしい物を作るでしょう。酒も豊富に造れだしています」
「素晴らしい!公家が去った後もこの部屋はこのままにしていよう!良い!剛力!よくやった!」
「はっ!ありがたき幸せ!」
「ってか剛力君!よくあの模型の色が変わるとか分かったな!?」
「え?普通に説明書に書かれてありますよ?その為の双六も付属していましたよ?」
そう言われこの二つを見たが・・・農業神様!芸術神様!ハメやがったな!!
双六は双六だが駒が騎乗した人を形にしているが家紋の付いた旗を持った駒だ。
「これって稲妻菱紋だよね?この家紋の持ち主って山科言継って人だよね!?」
「そうなのですか?某は公家の事までは知らなくて・・・」
なんか昔現代にいた頃にテレビで聞いた事がある。山科言継って人は、酒と女と双六博打がかなり好きだったと。その人、山科家家紋の駒があるって事は来るんだよね!?ってかそんな大物が京じゃなく越前に今は居るの!?他に誰が来るんだよ!?
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