紛う事なき公家

 とうとう公家達が来訪する日になった。出迎えは俺、慶次さん達警備班、そして何故か接待役に似合わない柴田さんだ。


 「共に仕事をする事に誇りを感じる。よろしく頼む」


 と、柴田さんらしからぬ言葉にオレはビックリしてしまう。まあガチガチに緊張してる系だとは思うが。


 信長さんは敢えて、自分は出向かないと言っていた。岐阜に居る時は対応するが、そこまで下手に出るつもりはないと。


 街道から慶次さん達、浅井、朝倉の旗印を付けた少数の兵と輿がやって来た。


 「ようこそお越し下さいました。某、城までご案内する柴田勝家と申します」


 「同じく此度、岐阜を紹介致します芝田剣城と申します」


 「くるしゅうないぞ!ほほほ!ほんに、ここ岐阜は南蛮のようじゃのう?のう?飛鳥井殿?」


 「ほほほ。正にその様。まっ、南蛮には参った事は無いのじゃがのう?山科殿?ほほほ」


 なんだこの二人は・・・・。本当に未来で絵に描いたような公家だよな!?あのちょい悪オヤジっぽい方が山科さんで、少し小太りの方が飛鳥井さんか。


 後は、浅井、朝倉の兵の人達か。


 「朝倉景隆である。此度の道中、朝倉、浅井両軍の総代である。いや実に素晴らしい場所ですな?我が一乗谷にも負けぬ町並みですな?」


 「ははは。ありがとうございます。まずは織田様にご挨拶願います。その後、疲れた体を癒してもらう為、湯治をしてもらい夜には岐阜ならではの飯を、と思うております」


 「うむ。よろしく頼む」


 この朝倉景隆って人は名前しか知らないが、朝倉と名字があるから朝倉の血筋の人かな?とりあえず城に案内しようか。


 柴田さんにお話役を任せ、オレは城に走り来訪した事を伝えた。去り際、冬も近くなったというのに柴田さんは汗ダラダラ出ていたけど。


 「信長様!公家、飛鳥井様、山科様、到着致しました!」


 「うむ!来たか!皆の者!出迎え致せ!」


 おっ!?並々ならぬやる気だな!?下手には出ないと言っていたが、やっぱ公家相手にはそれなりにするのか!?


 まずは大広間に案内した。この部屋は昨日遠藤さん含め、遠藤さん遠藤さん遠藤さんが4回も5回も、オレが出した掃除用の洗剤や木材ワックスまで掛けていた部屋だ。


 うん。とにかく遠藤さんがいつにも増して、気合を入れて掃除していた部屋だ。あっ、例の庭の梅の木は季節関係なく開花している。勿論、金色の糞の肥料のお陰だ!


 「よくぞお越し下さいましたな?岐阜城主、織田信長でございまする」


 「くるしゅうない!山科内蔵頭言継でごじゃる。信秀殿と背格好が似ておるのう?あれは天文2年の時だったかのう?あの時は麿と飛鳥井殿と参ったのじゃが・・・。そちが生まれたのは翌年だったのう?」


 「ははは。親父から聞いております。親父や平手に蹴鞠や和歌を御教授していただいたと」


 「ほほほ。今宵は昔話をしようかのう」


 「飛鳥井権中納言雅綱でごじゃる」


 「まさか権中納言様までも、またもや山科殿と来られるとは思いもよりませんでした・・・。精一杯おもてなしさせていただく次第でございまする。して、お使者殿は・・・朝倉殿の?」


 「此度の外遊、朝倉、浅井両軍総代の朝倉景隆と申します。某に気遣いは無用にございまする」


 「其方が朝倉宗滴殿と肩を並べた、朝倉景隆殿でありましたか。其方とも話がしたい!ご滞在中に如何か!?何でも鷹を育てておるとか?」


 「それは門外不出な故に、言える事と言えぬ事がございます。お教えできる事であれば・・・」


 「良い!楽しみにしている!」


 嘘!?飛鳥井って人はこんなにも大物だったの!?ただの変な公家かと思ったのに!?この使者の人もあの朝倉宗滴と肩を並べるって、生きる伝説じゃね!?そもそもあの信長さんが丁寧な言葉使ってるの、初めて見たぞ!?


 昔、山科さんと飛鳥井さんは尾張に来た事あったんだな。オレも色々話を聞いてみたいな。


 「剣城!勝家!お二人を温泉に案内してさしあげよ!お使者殿はこちらへ」


 オレと柴田さんは、今日は誰も入れないようにした今日限りの温泉に案内した。正直、城の温泉に入らせた方が早いしいいじゃん!と思ったが、信長さんがそれを許さなかったのだ。


 「この温泉はワシが許した者のみしか入らさぬ!」


 と出来た当初に言ったからだ。


 この日の為に、剛力君に拵えてもらった檜の湯船だ!タオルも通常のタオルと違い、芸術神様から買ったサイクロプスさん?が作ったか何かしたタオルだ!なんなら、あの悪魔的スパイダーさんが作ったタオルより、ふかふかで気持ち良いのだ。


 「えっと・・・従者様に洗ってもらう感じですか?」


 「いや、作法が分からぬ故、教えてもらえるでおじゃるか?」


 「特に作法というのはありません。温泉は楽にする所でございます。まず体、髪をこちらで洗います。目に入ると染みる為、気を付けて下さい」


 「うむ。どうせなら其方にお願いしても良いでおじゃるか?」


 え!?何でオレが、ちょい悪オヤジの風呂の手助けしないといけないんだよ!?


 「お〜!それは良い考えでございます!この芝田剣城という男は綺麗好きで有名な男でして、是非お二人様にもご堪能していただければ」


 おい!クソ柴田さんよ!?何が良い考えだよ!?綺麗好きは間違いないかもしれないけどよ!?逃げやがったな!?


 「ほほほ。ではお願いしようかのう?のう?芝田殿?」


 「ははは・・・頑張りますね!」


 覚えてろよ!柴田さんよ!?お市さんと結婚する話あっても賛成してやらないからな!?二度と女の相談にも乗ってやらねーよ!!酒も不味いあの90度の酒を呑ませてやる!

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