島津家の九州探題
「こんばんわ。どうしました?」
オレの私室に義弘さんを呼んだ。小見さん達は部屋で起きているとは思うが、スッピンだろうしリラックスタイムだろうからだ。
「うむ。夜分遅くに相すまぬ。実は父御が悩んでいてな」
聞けば、義秋さんの手土産を明から買い漁って、鏡や茶道具、絵画など色々持って来たそうだが、茶道具は一定の興味を持っているが、あまり反応はよろしくないそうだ。
そもそもは鉄砲を持ってこようとしたが、先に到着した義弘さんから、薩摩鉄砲は遅れている。贈り物にりならないと聞いたらしく、持ってきていないそうだ。
そして、パオンや砂糖なんかも候補に挙がったが、これも義弘さんが却下。まぁなんならパオン・・・まぁパンだな。岐阜でパン屋さんが軒を連ねているレベルだし、砂糖は消費者じゃなく今や生産者だからな。
聞けばたまに、堺の商人までもが買いに来てるみたいだしな。
「何か良い方法は無いか?いや、剣城君からすればこんな些末な事と思うやもしれんが、島津家では九州探題の言を貰わぬと・・・」
「まぁ、その気持ち分からなくはないですよ。そうですね・・・実は丁度いい物があるんですよ。これです!」
\バァァァァン/
オレはさっきまで見ていた聖剣エクスカリパー2を、義弘さんに見せた。
「な、何じゃこの刀は!?いや・・・南蛮の刀か!?」
「おっ!さすが義弘さん!南蛮の刀で間違いないですよ!日本名で剣です!見たまんま実戦には不向きですが、煌びやかな装飾もしてあるし、あの義秋さんなら喜ぶんじゃないですか?」
「こ、これを・・・」
「まぁいいですよ。もし他の人が『欲しい』って言ってもあげようか、と思ってましたし。オレそもそも剣、苦手なんですよ」
「いや、たまに鍛錬しておるのを見ても、中々に剣城君は筋はいいと思うぞ?いや、話が逸れた。この恩は必ず!父御も喜ばれる筈だ!光明が見えたとな!ありがとう!剣城君!ありがとう!」
義弘さんはオレを抱きしめて、背中をポンッポンッと叩き帰っていった。
いってぇ〜!背中痛っ!義弘さん、力強すぎだろ!?
次の日。オレは義弘さん配下の新納さんって方から、義秋さんが例のエクスカリパー2を受け取った、と聞いた。そして、女以外の贈り物で1番の喜び様だったと・・・。
「良かったですね!じゃあ九州探題は大丈夫な感じですか?」
モグモグ
「はい!これも剣城様のお陰と、大殿も殿も申しておりました!」
「ははは!良かった良かった!あっ、食べます?みたらし団子ですよ」
モグモグ
「御相伴に預かります。うむ!甘い汁が美味いですな!」
「将軍は『これは味が濃い!』と言ってましたからね」
「好き嫌いが激しい将軍ですからな。あっ、これはこれは岐阜の母上様!」
「いや、良い。妾はちと買い物に出掛けようとしているだけじゃ」
岐阜の母上様とは小見様の事だ。本来なら簡単に外出なんてできる人じゃない筈だが、斎藤家の人達も多いここなら、護衛さえ付けていれば大丈夫だろう、との事で信長さんが許可しているのだ。
専ら毎朝、濃姫様の所に行き、孫を今か今かと待ち望んでいるようだ。
護衛はお菊さんだ。他にも見えない所に、相当数な甲賀の一族の人達が居るらしい。
「あっ、お菊さん。久しぶり!」
「お久しぶり・・・って事もありませんよ。私も家に寝泊まりさせていただいております」
「え?そうなんだ?知らなかったよ!」
「がははは!そうやって言って、我が君は分かっている事を然も知らない振りして、上手いですな!」
いや、知らない振りして何か得あるのかよ!?全く知らなかったけど!?
いつもの日常を過ごしてると、これも毎度の事ながら、遠藤さんが走ってオレの所へやって来た。
「あっ、遠藤さん!おはようございます。どうしました?」
「お館様がお呼びです。全て道が見えたとの事です!」
オレはやっとかと思った。
金剛君始め、望月さん達、オレの配下はいつでも出立できるように、準備はしてある。
「了解です。登城します」
城に登るといつもの大広間だ。上座に将軍が居て、1番近い所に信長さんだ。その向かいに・・・。
「何故いつもいつも貴様なんじゃ!」
「まぁ良いではないか。佐久間殿」
そう。佐久間さんだ。このところ嫉妬丸出しの人だ。それを諌めてくれるのは森さんだ。
「将軍と、お館様の、おな〜り〜」
普段こんな音頭は織田家では取らない。だが将軍を気分高揚させる為に、遠藤さんが取り入れた一つだ。
迷わず上座に義秋さんが座る。ちなみにメンツはいつものお歴々の人達だ。所謂、織田軍オールスターズだ。
信長さんが義秋さんに頭を下げた事で、皆も頭を下げる。
「うむ。苦しゅうない!面を上げよ。まずは御父上の信長殿から、此度の予の上洛について申す」
珍しく義秋さんが真面目モードで言った。
「道が見えた。此度の上洛について、東は上杉家、徳川家。西は島津家、毛利家の協力の元、我が織田家を旗印にし上洛を開始する。道中、大和の松永軍と合流する手筈となっておる」
「お館様!?上杉家と毛利家にはいつ、連絡を取り合ったので!?」
「ふん!そんなのは予の一声じゃ!予が上洛するのに兵は多い事に越した事はない!三好何某等は阿波の平島公方・・・予の一族の義栄を将軍にしたと聞いておるが、断じて許さぬ!」
何だよ!勝手に義秋さんが声掛けしてしまったのか!?上杉も毛利も要らないんだけど。
「ふん。将軍が天の声を上げ、上杉家も毛利家も兵を出すとの事。明日には上杉家から500の兵が参る。毛利家も京に向かい上がってくると言っておる。つまり、大和、近江、備中と兵を分散する事になる」
「六角家はどうなさるので!?」
「将軍の道を遮る者は敵だ。六角には要職に就けると言っても返事を返してこん。つまり敵だ。まずはワシ自ら兵を率い南近江を攻める。将軍には岐阜城に待機してもらい、安全を確保してからお越しいただくようになる。出発は3日後。皆の者、準備急げ!」
「「「「オォォォォ─────!!!」」」」
「おっと・・・言い忘れておったが、第一陣は剣城!お前じゃ!」
は!?マジかよ!?何でオレなんだよ!?
「は、はい!」
「ふ〜む。頼りない返事の奴だな?うん?其方は確か・・・」
「はい。先日配下の──」
「あぁ〜良い良い。予は意味の無い事を喋るのは嫌いだ。とにかく励め!恥ずかしくないように致せ」
クソが!マジでクソが!いつか絶対に逆に恥かかせてやんよ!
退出間際、佐久間さんはオレを見てニコニコ。森さんや木下さん、丹羽さんなんかは生類憐れみの顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます