上洛戦
「で、あるからして我が足利家が日の本を統べるのが、至極当然で──」
それにしても長い。本当に長い。オレが拡声器を渡して行軍前の訓示を言うのがいいと思い、義秋さんに渡した訳だが喋る喋る。多分今まで出会った人の中で一番喋る。
「我が君?さすがにこれは間違いだったのでは!?」
「小川さん!滅多な事言うもんじゃないすよ!足利家の当主!征夷大将軍になる方ですよ!?」
「ふん。心にも無い事を言うんじゃない!くぁ〜!あくびが出るぜ」
「いやいや!慶次さんだって、あの人を敬っていないんじゃないですか!?」
「うん?当たり前だろう?あんな酒に溺れて、蹴鞠や女にうつつを抜かす男が、日の本を統べられる訳ないだろうが。オレは剣城の一番隊の隊長だから。政(まつりごと)は俺にゃ~分からん!」
散々な言われようだ。しかも、この前義弘さんにあげたエクスカリパー2を掲げて話してるし。
「予はここで吉報を待つ!六角を倒し予の上洛を見事達成させよ!さすれば褒美を出す!それと、予はこれより義昭と名を変える!覚えておくように!」
なんぞ!?ここで名前変えるのかよ!?まぁ何でもいいけど。
義昭がそう言うと、信長さんが少し苛立ち顔を見せながら拡声器を取った。
「聞こえるか?ワシだ。まずは剣城軍を第一陣とし、進発せよ。その後、島津軍に続き木下軍、滝川軍と続け」
「「「「オォ────!!」」」」
やっと長い長い訓示からの解放だ。士気を上げるつもりだっただろうが、あれなら逆に士気が下がってしまう。
進軍は実に大所帯となった。まずオレの軍だけで甲賀隊およそ300名は居る。オレだけの隊としては少ないかもしれない。だが、信長さんが『好きに使え』と兵を1000名渡してきたのだ。
それを纏めるのが・・・。
「何故じゃ!?何故ワシが・・・乳兄弟のワシが貴様の麾下なのじゃ・・・」
「いや、なんか、すいません。戦になれば池田様にお任せ致しますので・・・」
「当たり前じゃ!最近ち〜とばかし名が売れたからといって、戦(いくさ)のいの字も分からん男に采配されてなるものか!」
「がははは!池田の兄貴もそう言うなって!そんな事言ってると、飯が池田の兄貴の分だけショボくなってしまうぜ?」
そう偉そうに言うのは慶次さんだ。意外にも池田さんと交流があるらしく、言葉こそこんな感じだが意外に慕っているのだ。
「(チッ)まぁいい。変な命令するなよ!?疑問があればすぐに聞く!理論だっていれば死地にだって赴いてやる!それと飯には毎度、鮭を所望する!」
「分かりましたよ。池田様、宜しくお願い致します」
サーモン大好き池田さんだ。酒は言わずもがな。この人は多分、岐阜城周辺で一番サーモンが好きな人だ。
道中もこれまた実に簡単だ。史実だと大激戦になるであろう関ヶ原を抜ける。道はなにを隠そう、自称我が家のスーパー家老及び、スーパー筆頭家老らしい小川さんだ。
「がははは!我が君と肩を並べられるとは実に気分が良い!六角の叔父貴に我等を軽視した事を後悔させてやる!おい!剣城軍!凱旋だ!がはは!」
確かに甲賀に向かっているが、まずは浅井さんが治める佐和山城に向かう。小川さん達は過去の任務の時よく通った道だからか、かなりこの辺は詳しい。
オレからすれば木、草、森と全部一緒に見える。
そしてオレ達は関ヶ原を抜け、少し南下する。
「懐かしいな。久しくこの道は通っておらんかった」
「慶次さんも懐かしく思うんだ?」
「そうだな。最近はめっきりだからな。それと、これよりこの辺は六角の目が届く所だ。気を付けておけ」
「分かりましたよ。まぁ何かあってもさすがに、この大軍を前に何も出来ないでしょ!?」
「まぁそれもそうだな。だが、こんな時こそ何かあるもんだ。まぁ気を付けておけ」
慶次さんの言葉で一層気を付けて行軍していたが、その心配は要らなかった。静かなもんだ。六角のお庭みたいな所だろう。だが安全に近江まで来れた。ここで浅井軍と、ちょっぽしの朝倉軍と合流して佐和山城に入城した。
気合いの入り方が浅井家と朝倉家は対照的だ。
この佐和山城はその名の通り、佐和山にある山城だ。史実なら石田三成が大改修を行い、『三成に過ぎたるもの』の一つと言われる城になる所だろう。
それでも、今のところ信長さんに心酔している浅井さんも、負けていないと思う。織田家から色々な防衛設備を購入して、勢いこそ無くなったが六角家が未だ存在している為、それを監視する大切な城だ。琵琶湖も目と鼻の先だし。
とにかくここで今一度、全軍集結してからの軍事行動になる。
一応事前に聞いているのは、第一陣はオレ。
だが、この六角家討伐戦は支城3つ全てを同時侵攻すると、行軍前に聞いている。この大軍を上手く使わないと一部の者は鬱憤が溜まり、悪さをしてしまうかもしれないからだ。
観音寺城、箕作城、和田山城とあるが、素人のオレが考えた作戦でも、こんな大軍が居るなら落とせそうな気すらする。
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