早くも到着
岐阜から出るまでは夕方でもそこそこ往来の人が居て、皆こちらに向き手を振る人も居たが、少し離れると道こそ平らで綺麗だが、何も無くなった。所々甲賀の人を配置はしてあるが。
"剣城っち♪小雲雀号君が何で変な格好してるか聞いてるよ♪"
"これは皆にバレない変装なんだ。上手いこと伝えてくれる?"
"オッケー♪"
「なんか小雲雀号は信長様に気付いてるみたいです」
「ふん。愛い奴め!剣城、伝えろ。岐阜に戻れば遠藤に言い、トリートメントしてやると!」
いや馬にトリートメントしてるの!?以前動物用のシャンプートリートメントは出したけども!?しかも遠藤さんにさせてるの!?
"ノア?小雲雀号に言ってくれる?帰るとトリートメントしてあげるって"
ブビィィィィィィィィィ─────!!
いやいやそんな声出るくらい嬉しいのか!?馬の鳴き声じゃなかったぞ!?
"キャハッ♪剣城っち♪言ったよ!楽しみにしてるって!あーしもしてほしいなぁ♪"
"分かったよ。帰ればオレがしてあげるよ"
ガジガジガジガジガジガジ。
"いや前!前向いて!痛っ!!"
ノアは器用に首だけ後に向き強噛みをしてきた。
「おい?剣城は何遊んでるんだ?」
「信長様、すいません。たまにされるんです。遊んでる訳ではないのです」
「ふん。まあ良い」
クソが!涎でベトベトになったじゃないか!!
"キャハッ♪剣城っち♪あーしも楽しみにしてるからね♪"
そうこうしていると関ヶ原を抜け、森の中だがオレ達が通る場所は、馬車も余裕で通れるくらいになっており、その道は伊吹山を越えるまで続いていた。
「信長様?予定ではこの辺で休憩に入ります。よろしいでしょうか?」
「貴様らに任すと言うたであろう。以後聞かなくて良い」
「了解致しました」
「金剛君!先頭に休憩にすると言ってくれる?」
「はっ!」
30分の小休止だな。もう半分くらいかな?意外にも近いんだな。いや、これは剛力君のお陰か?ノアのお陰か?
「剣城様、どうぞ・・・。えっとその・・・」
大膳君も信長さんの事は知ってるから、なんて呼べばいいか困っているな。
「貰おう。ワシは弥助だ。覚えておけ。他の者にも伝えておけ」
「すいません。事前に名前決めておけばよかったですね」
「貴様にしては珍しく抜かりおったな」
「芝田殿?我らも同じ物を貰って良いので?」
「どうぞ!どうぞ!スポーツ飲料です!かなり用意してあるので!」
オレは後ろのお菊さん、ゆきさん、小見さん、お市さんが乗ってる馬車にも合図を出す。
「お菊さん?休憩だけど大丈夫?これ皆の飲み物だから、御簾を少し開けてくれる?」
「剣城殿?助かります・・・え!?小雲雀!?・・・あにうえ?」
ヤバイ!お市さんが受け取ると思わなかったぞ!?馬を見られた!!
「お市様?梅雨前とは言え、まだ外は冷えます。中へ」
「え?あ、分かった」
なんとかお菊さんが引っ込ませたけど、危なかったな。
浅井領に入るとイルミネーションも大詰めになる。本当は小谷城まで繋げたかったが、いかんせんそこまで仲良くないし、相手の事知らないしな。
小谷城に着く前に大小の城を何箇所か見たけど、どれもこれも小さな城だったが小谷城に関しては正直、岐阜城よりも大きいと思った。
山と山に挟まれ石垣もがっちり組まれ、もしこの城に攻めるなら、かなりの人と装備が要るだろうと思う。オレも戦の本なんかを読んだから分かる。これは堅城という部類だろう。
ってか攻められない為とはいえ、何でこんな山の上に城造るんだよ!?上がるのしんどいんだけど!?
小谷城の城下に着くと、さすがに馬車という訳にはいかず、お市さん達は本物の輿に乗り城に上がっていった。
その乗り換え中も見られないようにお菊さん、ゆきさん、城の女中さん達が大きい布で隠してだ。
「浅井新九郎である!大儀である!三田村もご苦労であった」
「新九郎様!織田領は素晴らしかったですぞ!飯は見た事もなく美味い!そして酒が何より美味いのなんの!!」
「三田村!貴様は何を言っておるのだ!」
浅井さん達が身内で話してる時に、信長さんが耳打ちしてきた。
'あの後ろの歳のいった者に気をつけよ。浅井久政だ'
あの人が賢政さんのお父さんかな?確か我が儘な人だったし、朝倉寄りの人だったよな?
「配下の三田村をこれ程唸らせるとは、織田様にはかなりの歓待をしていただいたようですな?それに道中、光の道を作ったとか?」
「此度の警護頭。織田家、芝田剣城と申します。後で道中の様子もお見せします。とりあえず台所をお借りしても?」
「そうであった。遅くなりはしたが、今宵の飯も用意してくれるのだったな。配下に案内させよう。配下の者は悪いが、空いてる所で休むようにしてくれるか?」
まぁ、これが普通の対応だよな。慶次さん達ごめん!帰ればスコッチ渡してあげるから!
「金剛君?この場は任せるよ。粗相の無いように」
「はっ」
オレも輿に乗って山を上がりたかったが、自分の足で上がらないといけないみたいだ。この時代の人達に驚かされるのは、例の肥料で作った飯を食べ強化されたオレより、通常の人の方が健脚な事だ。
「ハァー、ハァー、ハァー」
「芝田殿、どうされたか?具合でも悪いのか?」
いや普通に疲れただけだよ!!と言いたいけど言えないよな。
「すいません、疲れただけでございます」
ゴツンッ!
「痛っ!!」
「「「どうされましたか!?!?」」」
オレは横の変装した信長さんにゲンコツをされた。情け無い姿を見せるなと言いたいのか・・・!?しょうがないじゃん!!
「いえ、石に足がぶつかっただけです。申し訳ないです」
「織田方、芝田殿と申したか?少々鈍っておるのではないか?ワシの方が足腰が強いように思うが?」
久政か。嫌味ったらしいな。
「そうですね・・・。この祝言の成功の為、鍛錬を怠っていたかもしれません。健康で羨ましいですよ」
そうこう言ってる間に城に到着した。
城に入る前に女中さんがタライに水を入れ、足を洗ってくれたが・・・正直雑・・・。無愛想。そりゃ中年の足なんか洗いたくないのは分かるけど、せめて愛想は良くしろや!!!
「では、三田村が案内致します。どうぞこちらへ」
案内された台所は清洲の城に似た台所だった。浅井方の料理人も何人か居るけど。
「我らもお手伝い致します。どのようにしましょうか?」
「いや、貴方達の手を煩わせる訳にはいきません。ここは織田が仕切らせていただきます。私の配下のこの大野が貴方達に暇を与えます。大野さん?プチシューを。あっ、毒味で先に大野さんが食べるように!」
「はっ。さぁ、貴方達の休憩する場所に──」
よし。オレ達だけになったか。大野さんが事前に作ってくれた料理はやはりいつの時代も魚の鯛は祝い事に出されるので保守的ではあるが鯛料理を作ったみたいだ。
この鯛は本当はオレの城になる筈だった那古屋城近くの海で普通に獲れた鯛だ。
金剛君に言って硝石氷と、血抜き、神経締めをして岐阜まで運び大野さんに刺身の姿造りにしてもらったのだ。
後は里芋の煮物や牛蒡天、ウナギの酒蒸し、茶碗蒸しとか、他にも現代では結婚式に似合うのは、鯛以外ないのではないかと思うメニューだが、どれもこれも味付けはオレが出した未来の調味料じゃなく、本当の尾張の・・・森さんが作った調味料で味付けした物だ。
「飯までは聞いてなかったがそれは鯛か?」
「はい。金剛に言い那古屋で獲りました」
「よくぞ揃えたもんだ。ワシはうえでぃんぐけーきを楽しみにしておるが、それも美味そうではないか?これから焼くのか?」
「いえ、これは刺身で出します。氷で運びましたのでまず大丈夫です。血抜き、神経締めまでして昆布締めも施しておるので、臭みも無いかと思います」
「一つの料理にそこまでしたのか。岐阜に戻れば大野に褒美を取らせよう。伝えておけ」
「はい。ありがとうございます。伝えておきます。そしてこれがウエディングケーキでございます」
「おぉぉぉ!!でかいではないか!!!」
3段のホールケーキを作ってもらい、通常より砂糖ドバドバの、クソ甘い生クリームを塗りたくり、イチゴやキウイ、みかん、シャインマスカットなど果物たっぷりのケーキだ。
「今ここで一口はいかんのか!?」
いやダメに決まってるだろ!?信長さんも分かるだろ!?
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