未来の農学者達の血と涙と情熱の結晶その名はコシヒカリ

 「剣城ぃ!!ここはどうなっておる!?みかんの木が生い茂っておるかと思えば竹みたいなのも生えておるが!!それにさっき食べた赤色の実もそこらじゅうに生えておるぞ!?」


 「はぁ〜・・・。私が苗や種を村長に渡して村の人に育ててもらってるのですが思った以上に成長が良いようで」


 これは本格的に早目に人を増やさないとヤバイぞ・・・。イチゴも然りパイナップル、バナナの木まで南国ですか!?ってくらい生えてるんだけど。 植えた以上に実がなるのってどういうことよ!?神様パワー凄過ぎだろ!!


 「木下様、それに剣城よ。これだけで驚く事なかれ。こちらにも来て下さい」


 また別の所に案内されたらこれは見事!!!と言わんばかりの稲穂が生い茂っていた。いや、現代アニメ、風の谷のナウ○カの一部分。


 "その者 青き衣(ころも)をまといて 金色(こんじき)野に降り立つべし"


 この画面がオレの頭の中に映った。

 現実は八兵衛村長が捕まえてきたニワトリを抱えて居るんだけどな。それにかなりドヤ顔だし。


 「剣城よ。もう何も言うまい。これ程の稲穂見た事が無い。しかも時期ももう外れておるのにこの稲の力強さ。早速、明日には人を連れて来よう。農民100人程、其奴らが住めるように簡単な小屋を作る人を50人程連れて来る」


 「あっ、家の方は皆と同じ大部屋で良いなら少しの元手が要りますがすぐ用意できます。とりあえず蔵に入ってる果物を城に持って行きましょう!」


 「あい分かった。ワシは荷車と、運搬する奴を連れて参る」


 「さて。八兵衛村長?蔵の中にある果物を村の人達に渡しますので分けて貰ってもいいですか?」


 「それはありがたいが全部献上しなくても織田の殿様には怒られないのか?」


 「いや、さすがにこんなにあったら怒られないでしょう!?それにこれだけじゃなくもっと種類も増やしますし、果物じゃなく腹が満たされる作物も渡します!また例の金色のニワトリの糞様の鶏糞肥料もお渡ししますのでお願いします!」


 八兵衛村長はめっちゃ、面倒臭そうな顔をしてたがオレは気にせず、


 《キャベツ》

 《レタス》

 《大根》

 《ピーマン》

 《大蒜》

 《ブロッコリー》

 《林檎》

 《ぶどう》

 《スイカ》

 《マンゴー》

 《アスパラ》

 《トマト》

 《キュウリ》

 《トウモロコシ》

 《枝豆》

 《大型プレハブ》



 これらの苗や苗木を惜しげもなく購入した。金額は合計で¥550000程掛かった。正直誰が誰のお金か分からなくなってしまったが言わなかったらバレないだろう。

 別に無駄遣いした訳じゃないし。

 ただまたお金が厳しいぞ。森さんとかから貰った刀売って金を作るか!?


 「おいおい、こんなに沢山ワシらだけではどうにもならんぞ!?それにこの大きい家はどうした!?」


 「明日、木下様が人手を集めてくれます。その人達が雑魚寝できる様にと・・・。それに脱穀の方もなんとか簡単に出来る方法を考えてみますので、ニワトリを世話する人だけ選んで残りの人は植える場所を拡張する様にお願いします」


 「それは分かっておるが・・・。今はまだ大丈夫だと思うが、このまま拡張して目立ってしまえば、いずれ賊や今川の間者や、よその家の間者にばれてしまうぞ?」


 「その件に関しては柴田様と話しております。何人か警備の人も常駐してくれるかもしれません」


 「それと、こんな稲穂を見て、またか!?と思うかもしれませんが今の稲穂の作業や、これからの脱穀や、乾燥作業が終わってからで構いませんのでこの種籾も育ててくれませんか?」


 《新潟県産最高級コシヒカリ種籾10kg》¥45000


 以前、植える物を探してる時に横に関連商品で見たのを覚えてた種籾を八兵衛村長に渡した。・・・いや、託した。種籾の分際でと言えばこの種籾に失礼か。種籾の時点で効能が書かれていた。それをオレは見逃さなかった。



《新潟県産最高級コシヒカリ種籾》


 効能・・・・その種籾を育て出来上がった米を一口食べるとあまりの美味しさに舌がとろけてしまうであろう伝説の米。未来で『コシヒカリの父と呼ばれる石墨慶一郎氏』が品種を確立させ、そこから数多の農学者の血と情熱と涙の結晶の種籾。この米を食べ続けると筋力、俊敏力が上がっていく。最大2倍。


 もうね、これを見た時からオレは感じていたんだ。感じたんだ!種籾がオレに輝けと囁いてると!


 「剣城は相変わらずだな。なんつーか、もう1人の自分だったか?」


 ハッと我に返った。


 「八兵衛村長、すいません。この種籾に充てられ我を忘れてました。この種籾はそりゃもう伝説の種籾なのです。石墨慶一郎氏が作ったこの種籾、米の中で自分は1番好きです。

 これを育てられるのはこの日の本でこの村だけですよ。これを育てたら間違いなく信長様からの褒美が貰えます。もし貰えなくても自分がお礼をします」


 「その石墨何某が作ったのか・・・。たしかに普通の種籾より、色、ツヤ、形が大きい様な気もしないでもないが・・・・。剣城がそこまで言うなら育ててみるか。これも明日には出来上がってるのか?」


 「はい。恐らく出来上がってると思います」


 「おーい!待たせたな!戻ってきたぞ!・・・っておい、また凄い種と苗木だな。これも育てるのか?それにこの大きな家はどうした!?」


 そこから一つ一つ説明してプレハブの中にも入ってもらい、何とか70人程は寝れそうなので残りの人は村で分散して寝てもらうようになった。

 最後に例の農学者の結晶最高級コシヒカリの説明をして、蔵の収穫物を荷車に乗せて柴田さんも呼んで城に向かう。


 「では八兵衛村長、よろしくお願いします!また明日来ますので、明日はお酒もお渡ししますので楽しみにしてて下さい!」


 「あ〜。気を付けてな。いい加減、馬に乗れるようになって柴田様、木下様に迷惑かけるなよ」


 そう言われ村を後にした。


 「柴田様。例の贈り物、渡しましたよ。また後日返礼するだそうです。あと、八兵衛村長の子供の件、ありがとうございました」


 「シッ!声が大きい!お市殿は喜ばれておったか!?」


 「喜んでいたと思いますよ」


 本当の事、返礼が面倒臭い言ってましたよ。とはさすがに言えんよな。


 すると嬉しいのか急にスピード上げて走り出しオレは必死に柴田さんの背中にしがみついた。


 くそっ!思春期の中学生かっ!!もっとスピード落としてくれよ!!振り落とされそうだよ!!そう思いながら柴田さんの温もりを感じながら城に戻っていった。

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