童にやられる剣城
「殿!島津が!島津が攻めて来ました!」
「何!?何だと!?志布志はどうなったのだ!?」
「それが・・・後詰に行った兵からは・・・」
「チッ!すぐに兵を集めよ!返り討ちにしてくれるわ!」
「肝付の兵は弱過ぎる!」
「いや、流石の薩摩兵児もあの船から砲撃されれば、いくらか危ないぞ?」
いやいや危ないじゃなく死ぬだろ!?どう考えてもそうだろ!?
「我が君?此度も筆頭家老のワシを盾にお使い下さい!」
「いや昨日から思ってたんだけど、オレは一度も小川さんを盾に使ったつもりはないよ!?けどいつもありがとうございます。今回はオレが先頭に立ちましょう。予は常に諸子の先頭に在り!」
「おっ!剣城君もやる気が出たか!おいも負けてられん!薩摩を出れば歳が違えど、皆おいの下だ!おいの背中を追い掛けて来い!目指すは高山城!」
いや、いちいち毎回カッコいいな!?様になるとはこの事か!?
それからオレの嫌いな山登りである。こんな事ならノア嬢に乗ってくればよかった・・・。
「ハァー ハァー ハァー」
「出たぞ!こっちだ!覚悟せい!」
パンッ パンッ
「剣城様!敵兵排除しました!」
「隼人君、悪い。ありがとう。ハァー ハァー」
「剣城君の配下は優秀であるが、剣城君は今少し鍛えた方が良いと思うぞ?」
言われなくても平時では毎朝、未だに素振りはしてるわ!何で本当にこんな山の上に城を建てるんだよ!
三河の一揆なんかを経験した後だからか、城攻めだがこんなに兵が少ないのか?と疑問に思う。国としては大隅は小さいのだろうか?戦と言えば基本万人が動くかと思ったが、そうでもないみたいだな。
そもそもが、貴久さんのお姉さんか妹さんが嫁いでるんだよな?大丈夫か!?
「何としても止めろ!」「父ちゃんの仇!覚悟せよ!薩摩人め!」
見れば小学生くらいの子まで参加してる。しかもこの子、栄養失調なのかかなり細い・・・。さすがにあの子はオレは倒せないな。けど槍は本物だろ!?
「掛かれッッ!!」
パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ
ズシャッ グシャ ズシャッ グシャ
敵の勢い虚しく野田さん、隼人君の銃撃で敵を足止めしてすぐさま島津兵が斬りかかる。瞬殺だった。残るは子供だけだ。
「おい!童!薩摩にも大隅の兵に父親が殺された童は沢山居る。おあいこじゃ!それでもおいたちに立ち向かうか?童だろうがその気概は嫌いではない!」
「だ、だ、黙れ!父ちゃんを返せッ!!」
ドンッ
「殿?どうしますか?童でも槍を持っています」
「童だろうが武器を持っているなら兵児だ!殺す!」
いやいや義弘さん!?そんな不名誉な事するなよ!?
「ちょ!義弘さん!ここは任せて下さい!君はお父さんがこの島津の人達に殺されたの?」
「そうだ!グッ・・・槍を返せ!」
「剣城君?童だろうが武器を持ってれば──」
「黙って下さい!オレは貴方をそんな人にしたくない!義理堅い漢と見ていたいんです!誰でも殺して終わりではいけないのです!」
「あぁ〜。義弘殿?剣城は地元でもこんな感じなんだ。悪いが任せちゃもらえないかね?」
「うむ。すまぬ。剣城君がおいをどんな風に見ておるかは分からぬが、期待を裏切るところだったのだな。些細は任す」
分かってくれたか。けどこんな事やってるのは甘々なんだろうな。分かってても目の前で義弘さんが、いくら敵とはいえ敵の子供は斬らないでほしい。オレの我が儘だがそんな義弘さんを見たくない。
「オレはここら辺の出身じゃないけど、君みたいな子はいっぱい居ると思う。悔しい気持ちも分かる。オレも少し前に親しい人を亡くしたから。けどその人は今ここに・・・この'おいちゃん!'このおいちゃんが元々敵だったんだ。けど話し合えば分かる。そう思わないかい?」
「なっ!剣城殿!私はまだおいちゃんではないぞ!!」
「とまあ、こうやって話し合えば仲良くなれる事もある」
「黙れッ!クソおっさん!!」
子供がオレの事をおっさんと呼んだ瞬間、お世辞にも刀とは言えない包丁をお尻の方から出して、オレは瞬間的に肩を刺された。
「剣城ッ!!!」「剣城君ッ!!」「我が君ッ!!」
「クッ・・・大丈夫!大丈夫だから!これで気は済んだかい?」
オレは島津兵の1人が刀を抜き、この子供を今にも斬りそうなところを、斬られた反対の手で制した。慶次さんもロンギヌス槍を子供に向けているが、首を横に振って拒否する。肩だから治療すれば大丈夫な筈だ。というか神様印の薬ですぐに治る!
「おい!童!このおいの友達の剣城君じゃなければ今頃、童の首と胴は繋がっておらぬ」
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜」
やっぱ言うて子供だな。最後の義弘さんの言葉怖すぎだろ!?オレまで泣きそうだよ!?ってかいってぇ〜・・・。
「我が君!例の薬です!腕を失礼しますぞ!かぁ〜っ!!ペッ!!!」
「は!?小川さん!なんで唾付けるんですか!?きったな!いってぇ〜!」
「がははは!気付け薬みたいなもんですぞ!痛みに弱い我が君ですからな!がははは!」
いやいやマジで汚いんだけど!?なんか糸引いてるんだけど!?
「流石、筆頭家老殿!剣城君の事をよく知っている!」
いや義弘さんも何褒めてんだよ!?慶次さんもそこ頷くな!!こんな事なら鈴ちゃん連れてくればよかったよ・・・。
ゴンッ!
「義弘殿?この童、我らが貰い受けても?どうせ母親もおりますまい。見るからに痩せこけている。何日も食べていない証拠だ」
「うむ。敵に情けをかけるのも並大抵ではできぬ。特に島津兵児はそれに関しては何もできないからな。そちらに任そう」
さすがにオレを刺して来たけど、放置できないよな。
「自分に立ち向かって来た者を、例え童だろうと許そうとするとは・・・。それでこそ剣城様です!」
「いや鈴ちゃん!?いつの間に現れたんだよ!?」
「トランシーバーにて剣城様が怪我をしたと聞きました!さあ手術しましょう!私に任せて!!」
「いやいや大丈夫!大丈夫だから!例の薬でもう治ったから!!」
「チッ。その気を失ってる子が、もっと深く包丁を刺せば良かったのに・・・」
はっ!?鈴ちゃん!?手術したいからってなに毒吐いてるんだよ!?
「とりあえず、鈴ちゃん?この子を後方に。目が覚めれば問診して何か食べさせてあげて」
その後もオレ達の神速は止まらず、あっという間に高山城が目の前に見えるくらいまで、駆け上がった。ここも残念ながら石垣が無い山城だった。まあその為か、簡単に攻め上がる事ができたんだけど。
「慶次さん?城攻めはもっとこう何て言うか・・・わちゃわちゃしてると思ったけど、楽勝じゃない?」
「まあ、この程度の山城程度ではな?そもそも俺達は海から来てるから、そう思うのだろう。あれは反則に近い。それと何て言っても島津兵の士気の高さと練度の高さだ。中々に手強い。肝付の兵も悪くはないだろう。装備もしっかりしている。だが島津兵には及ばない」
「確かに義弘さんの馬廻りだけでも、怖い者知らずですからね」
「ふぅんッ!!」
ズシャッ!!
「あのような力だけの一刀に見えるが、踏み込みが鋭い。俺も敵にはなりたくないものだな」
慶次さんがここまで褒めるのも珍しい。確かに肝付の兵もそれなりなんだろう。けど島津兵の方が一手も二手も上だ。
「剣城君!父御の兵の声も聞こえておる!もう少しだ!遠慮せず戦い抜いてくれ!」
いやいや、遠慮なんかしてねーよ!?あんたらが強過ぎて、する事が無いんだよ!!
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