ス◯夫か!?

 「何かあれば外の者を使っていただきたい。くれぐれも拷問はやめてほしい。交渉に使えるかもしれないから、生かしております」


 「拷問なんかしませんよ。すいません。ありがとうございます」


 歳久さんはオレをどんな奴と見ているんだ!?拷問なんかする訳ないだろ!?


 「失礼します。入りますね」


 「き、き、貴様は誰だ!?ぼ、ぼくちゃんをこ、殺すと言うのか!?」


 オレは一瞬ビビった。仮にもここは戦国時代だよな!?仮にじゃなくマジの戦国時代だよな!?この肝付家の嫡男は何者だ!?自分の事をぼくちゃんって!?しかもこの声どこかで聞いた事あるんだよな・・・。誰だったか・・・。


 「一応、島津家の客将 織田家の芝田剣城と申します。織田と肝付は相対した事ないし、特段個人的に恨みは無いですが、志布志を落とした者として挨拶に来たまでです」


 「そ、そんな事を言ってぼ、ぼくちゃんを殺す気なんだろ!?ち、父上はとっても偉いのだぞ!?」


 今の言葉で思い出した。現代に居た時・・・というか、幼少の頃テレビで見てたドラ○モンのス○夫の声だ!ってか、あの声優の人も確か肝付って名字だったと思うが関係あるのか!?いや、肝付とか名字少ないから絶対関係あるよな!?この人は殺してはいけない人だ!


 ス○夫と言えばオレはあの声しか受け付けない。というかオレの中でス○夫は出来上がっている!


 「大丈夫!気を確かに!これ、パンケーキです!適当に食べて下さい!貴方は殺させません!子を産み子孫を増やして下さい!失礼しました!」


 声は似ててもこの人はこの時代の人。そもそもこのリアルな性格が、まんまス○夫ぽいのだが!?



 「義弘さん!!」


 「おっ、おう!?剣城君!?もう戻ったのか!?な?大した男ではなかろう?おいはあのような奴は嫌いだ!」


 「大した男でなくても、あの人は殺してはいけません!今後大変な事になるやもしれません!特に害も無さそうです!戦が終われば放逐しても問題ないでしょう!?」


 「いや確かに害は無いかもしれないが、何かあるのか?」


 「分かりません!ですが現在の肝付当主はどうでもいいですが、あの人は殺してはいけません!友としてお願いします!」


 「そ、そうか。剣城君がそう言うのは初めてだな!?約束しよう。殺しはしない!」


 ふぅ〜。これで未来のドラ○モン ス○夫は守られた!



 オレは船の上に居る。横には甲賀隊の皆と義弘さん、馬廻りの人達、そして何故か朱華さんもオレの船に乗っている。もう一つは・・・・。


 「いやいや、大船団すぎだろ!?朱華さんは最初から、あの船の人達と来てたのですか!?」


 「ふふふ!面白い事言う御人ね?そうさね!あたいは海の女!外海は海賊が多いからね?残念ながらあたいを守ってくれる旦那はいないから、屈強な男が必要な訳さ!」


 いや、それは貴方が面食いか理想が高過ぎるせいだろ!?かなり綺麗な人だから、男がかなり寄ってくるだろ!?


 昨日の内に歳久さんと義久さんに、トランシーバーを渡している。それで言われた事は、このクソ寒い中『日が昇る前に仕掛ける。勝つまで攻め上がる』と言われたのだ。


 「要は、あの浜に見える肝付の海の兵や小舟を沈めたり倒せ、と言う事ですね」


 「そうだ!剣城君!此度も頼んだぞ!」


 あっという間に話が進み、あっという間に戦が始まる。信長さんとは大違いだ。


 「隼人君?残弾は大丈夫?」


 「はっ。問題ありません」


 「慶次さん?野田さん?問題ないですか?」


 「あぁ!いつでもいける!城攻めとは腕が鳴るな!」


 いつにも増して、慶次さんはやる気が漲っているな。


 「小川さん?いや、やっぱいいや」


 「我が君!?何ですか!?最後まで、この小川三左衛門に言っていただきたい!」


 「問題ないかと思ったけど、そのピカピカに光ったハルモニアのスーツを見れば、一目瞭然だなと思ったのです。上陸前に小泉さん?あの浜の連中を一掃できます?その後、レールガンを放ち、敵を恐慌状態にして上陸します。朱華さん?明の兵は直ちにあの浜に拠点を作って下さい」


 「任せておきな!」


 「鈴ちゃん?鞠ちゃん?2人は浜に作る拠点に野戦病院的な事をしてほしい。多分今回は無傷では無理だろうから、怪我人はこっちに連れてくるから」


 「「はっ!」」


 「剣城君の配下は手際が良いな!では・・・始めようか」


 作戦は素人のオレが考えた事を、そのまま義弘さんが採用してくれた。義弘さん自身は『真正面から堂々と敵を倒すのが好きだ!』と、作戦なんかありゃしない事言ってたから、オレが考えたものだ。


 慶次さんにも聞きながらだったが、慶次さんも『それでいい。剣城も分かって来たな』と、お墨付きをくれたくらいだ。


 義弘さん達は、武に直結してる人だと思う事がある。話の中で義弘さんの想像を超える敵ならば、味方を餌にして敵を倒す《釣り野伏せ》や《捨て奸》を、敢行しようとする。


 隙あらばすぐこんな事言うから、オレは義弘さんと作戦について話すのは嫌いだ。しかもその餌となる兵も、ほぼ100%喜んで末端の兵の人達が志願するから、たまったもんじゃない。これが薩摩兵の強さの一つなんだろう、とも思う。


 オレは最初の号令をかける。


 「小泉さん?遠慮なく殺っちゃって下さい!撃ち方・・・始めッ!!!!」


 「御意!」


 ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ!


 相変わらず派手な感じはしないが、高威力な水球弾だ。敵は浜でわちゃわちゃしている。それを横目に見つつ、オレは操舵室横のモニターを見ながら、レールガンの発射ボタンを押す。


 チュドォ─────ン!!


 「それさ!それ!それはどんな兵器なんだい!?」


 「おっと?明の女?これ以上は勘弁願おうか?剣城が良いと言うまで聞くなよ?剣城は押しに弱いからな?お前達が信用足る者と分かれば、いつか教える事になるだろう」


 「チッ。秘密の多い男だね」


 いや、勝手に毒吐かれたけど言っても分からんだろう?オレもそんなに分かってねーし。慶次さんも、それらしい言い方でシャットアウトしたけど、押しに弱いって軽くディスってるからな!?


 「うむ!いつみても壮観だ!敵が一撃にて吹っ飛んでおる!頃合いだ!小舟に乗り上陸!高山に向かい肝付を滅ぼせ!薩摩兵児ッ!奮起せよッ!!」


 「「「「オォォォォ─────!!!」」」」


 義弘さんの号令で浜に上陸開始をした。レールガンのお陰か、敵は小泉さんの水鉄砲で撃ち抜かれてたり、生きてる人は腰を抜かしてたり、かなりの雑兵の人達が、恐慌状態になっている。士気なんかあったもんじゃない。


 指揮もされてる感じもしない。ちなみに船の留守番は杉谷さんだ。鹿児島に・・・薩摩に居る間はずっと杉谷さんが留守番だ。あの羨ま・・・けしからんな事してた罰だ!

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