ヴァルハラ宮殿のお土産
「あれ?ここはどこだ?」
うん?オレが居る?お菊さんに金剛君に鈴ちゃん鞠ちゃん奏ちゃん琴ちゃん凛ちゃんゆきさんも・・皆、泣いている?
え!?オレが居るのに何でオレが上から自分を見てるの!?
「久しぶりなんだなぁ」
「あっ!農業神様、お久しぶりです!バカンスどうですか!?」
「楽しいんだなぁ。我が兄弟も今は魂だけなんだなぁ」
「え!?って事は・・・死んだのですか!?」
「そうなんだなぁ。毒入りの水を飲んで死んだのだなぁ」
嘘!?!?マジで!?死んだの!?うわぁぁぁぁぁ!!!魔法使いのままじゃないのか!?来世では賢者になれるのか!?
「う・そ♪なんだなぁ」
はっ!?いつのまにタチの悪い冗談を言うようになったんだ!?
「パパが作った身体だから大丈夫なんだなぁ」
農業神様が教えてくれたのは、本来なら確実に死ぬ毒らしい。ただ、鈴ちゃん達がオレの口にゴム管を入れ何かで吸い上げ、体内の胃液を吐き出している。処置は間違っていないと。
仮に改造されてない体でも、この処置をしてくれてるなら死にはしなかったと。多分あれは血圧計の空気入れるやつかな・・・。凄いな。どんどん応用していくんだな。
「今は身体に二度と、この毒系統が効かないようにアップデートしてるから、意識が戻らないだけなんだなぁ」
「そうなのですね。教えてくれてありがとうございます」
「本来ならおいが降臨し、毒を盛った人間の魂魄を破壊、消滅、滅却してもまだ足りないくらいなんだなぁ。けどそれは出来ないんだなぁ」
うん!?農業神様が怒ってるの!?
「我が友(マブダチ)を害する人間は、消滅させたいくらいなんだなぁ」
いやサラリと怖い事言うなよ!?嬉しいけどもよ!?
「それより、バカンス中なのにわざわざ現れてくれて、良かったのですか!?」
「本当は300年の休暇だけど飽きてきたんだなぁ」
300年の休暇っすか!?羨ましいな!?オレも休んでみたいわ!
「今ここに現れたのもおいの一部なんだなぁ。我が兄弟が執心の者達は、本当に優秀なんだなぁ。早くジオラマを出していれば良かったんだなぁ」
確かに岐阜かあの村に、病院を出しておけば良かったかもしれないな。どっちに出すか迷ったのがいけなかったな。
「意識が戻れば使わせてもらいますね!それとこんな時ですが──」
「ホログラムで見たんだなぁ。必要な物はボックスに入れてあるんだなぁ」
「ありがとうございます!」
「おいの眷族を一人、神格を上げてくれたお礼なんだなぁ」
「あの球体様の事ですか?あの方は戦神様では?」
「彼奴は間違いなく、おいの眷族なんだなぁ」
クソ!騙されたぜ!ただ・・・あの神に助けられたのも事実だな。今後もちゃんと毎朝拝もう。
「いい仲間だ。この者達を大事にして生きるんだなぁ。そうすれば未来も変わるんだなぁ。色々と、今まで購入した物をアップデートしたんだなぁ。さよならなんだなぁ」
うん?今日は変な農業神様だな。
「あっ、忘れてたんだなぁ。ヴァルハラ宮殿のお土産を買って帰るんだなぁ。また帰ればボックスに配達しておくんだなぁ」
「あ、ありがとうございます。楽しみにしておきますね!」
ヴァルハラ宮殿・・・?不穏な宮殿の名前だな!?オーディンの宮殿か何かだったよな!?
「農業神、これで貸し借りは無しだぞ!」
「ありがとうなんだなぁ。時空神はまだまだおいには似てなかったんだなぁ。けど我が兄弟は騙されたんだなぁ」
「ふん。農業神があの人間にどれだけ肩入れし、どう足掻こうが先の世の流れは変わらぬぞ?」
「少しでも良い方向に向かってほしいんだなぁ。我が兄弟の為ならおいは、出来る事は何でもするんだなぁ」
「そこまで農業神が言うのも珍しいな。ある程度は改ざん出来よう。だが歴史の本流の根本を変えると歪みができ、世界が壊れる。よく覚えておけ」
うん?さっきまで上から見ていたけど、今は目の前に皆が居る気がする・・・・。早く起きよう・・・あれ!?身体が動かない・・・。目は瞑ってる筈だが分かる気がする・・・。
「我が君・・・・目をお覚まし下さい!!!!」
「剣城様・・・・」
「えぇ──い!!!あのバカ3人はまだ捕まらぬのか!?」
大野さんにゆきさん・・。小川さんも・・・。
「どきなさい!竹中家に伝わる秘伝の薬です!」
「竹中様、おやめ下さい!何の薬か分からない物は…」
ははは。竹中さんか。最初、敵だったのにな。何の薬を飲まされるんだ?馬糞とか辞めてくれよ?
「仕えて間もないですが、某の忠誠は見紛うことなかれ。殿が彼岸に旅立つ時は某もお供致します」
ははは!今度は切腹お兄さんの小七郎さんか?まだ何も仕事してないのに、切腹なんかしなくてもいいよ?
「一応胃液しか出ないところまでは処置しました。後は剣城様の体次第です」
「なにを!?鈴!他にもまだ出来る事があるだろう!!?」
隼人君が珍しくいっぱい喋ってるな!皆、動画で撮影しておくべきだろう?
「剣城様・・・。まだ私の作った物見てもらってません・・・。グスン・・・」
加藤さんか?久しぶりだな。
「剣城殿が倒れたとは本当か!?剣城殿!?」
国友さんに芳兵衛君か。あんな焦った顔しなくていいのに。
「騒いでおるから急いで参ったが・・・菊殿?拙僧が調合した薬を与えても!?」
普段ポーカーフェイスの沢彦さんが慌ててるや。皆から調合された薬飲まされる・・・。薬漬けになってしまうじゃん!?まだ竹中さんのよりはマシな気はするけど・・・。
「「「慶次!?」」」
「すまぬ。腐っても上忍だ。二人逃した。ノア嬢のお陰で大河原だけ捕縛した。肩を外してある」
「貴様!鉄斎ッッ!!己は何をしたか分かっておるのかッッッ!!!!!!!」
ゴンッ!
「一撃で我(われ)の頭蓋を割るか・・・。なんちゅう力だ?どうせ我(われ)は使い捨てだ。殺れ」
あぁ、この人は小川さんの下につけた人か・・・。この人がオレに何かしたのか・・・。何だろう?オレも激昂するところだけど、何故か全然腹が立たない・・・。むしろ水を渡してきたゆきさんに変装した女の方が、殺したいくらいだ。
ゆきさんとの違いに気付けないのは申し訳ない。ゆきさん・・・。ゆきさん・・・。ゆきさん・・・。
「ゆき・・さ・ん」
「「「「「「剣城様!!!!!!!」」」」」」
「はい!ゆきはここに居ります!!」
「なに!?櫁と深見草の混合毒から目を覚ますだと!?」
「あんた!私を舐めるんじゃない!剣城様の技術を吸収した私にかかれば、草鳥頭(とりかぶと)の毒すら解毒できる!」
「小娘が偉そうに」
オレの技術って・・・オレは本を出しただけなんだけどな・・・。鈴ちゃんは頼もしくなったな・・・。
「そんな小太りの男一人に、皆は何を騙されている!?」
「私にとっては私を捨てた、父、母よりも・・・・大殿よりも大事な人です!草だった私達を無条件で雇ってもらい、ご飯も家もこんな上等な服も用意してくれました!」
「ふん。ただの銭持ちの奇特な男だろう」
「違う!ワシを見ても分からぬのか!?生い先短いワシを重臣としてくれたお方じゃぞ!!私利私欲のお方じゃない!このお方こそ命を賭けるに相応しい」
「お主は分かるまい。俺を大身でと馬鹿にしよったな?」
「青木か・・・」
「六角なんかより、剣城様にもっと早くに仕えたかったくらいだ。ここは毎日が楽しい。生きる希望が無かった草の者が、今や喜んで畑仕事、草毟りをしておる。剣城様はその事にすら、銭を払おうとしてくれるくらいだぞ?」
熱弁ありがたいけど、あれは雑草だと思ったら意外にタブレットが買い取りする様な珍しい草だったから、悪いと思ってこの時代のお金を渡したんだけど・・・。
早く起きたいのに・・・身体が動かない・・・。
「思い残す事は無いな。背後関係なんぞどうにでもなる。お前は毛程も残してやらん!」
「一蔵!待て!俺が殺る!」
「慶次様・・・・。義父上に・・・」
「奥方に言われちゃ仕方ねぇ〜」
ブォンッ……ガキンッ!
「「「「!?!?!?!?!?」」」」
「「「「ノア嬢!?!?」」」」
「ノア嬢!?こいつは剣城様を…」
「なんだ?松風?……………うんうん。そうか」
いや慶次さんはいつから松風と会話できるようになったんだ!?
「なんとなくだが、ノア嬢はこいつの処刑に賛成していない。剣城が望んでいないと言っているみたいだ」
「だがしかし・・・」
「目が覚めてからでも遅くはない。だが拷問はさせてもらう。一蔵殿!堅牢な牢屋を作るぞ」
確かに処刑なんか見たくないよ。目は未だ開けれないけど何故か分かる・・・。ダメだ。睡魔に勝てない・・・。
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