お早い到着

 城の兵達もバタバタしだしたな。


 「剣城様。何かお考えがおありで?」


 「うん?別に無いよ?まあ強いて言うなら松平様の腕の見せ所かな?オレ達はその援護だよ。それと間違っても、織田領に一揆が向かわないようにする」


 「一揆は増えたら収拾つきませんからな」


 うん。金剛君の言う通りだ。未来の歴史本で一揆の記事を少し覚えている。どんどん回りに波及していくのが一揆だったよな。

 

 たしか加賀方面も一揆が凄かった記憶がある。何とかって武将が京の戦乱に関わって、その銭の回収を農民に押し付けたんだったっけな!?あんま覚えてないや。それに上杉謙信や柴田勝家さんも手を焼いてた筈だ。


 「先に言っておくけど、可哀想だけど宗教に狂った人を助けるのは至難の業で、指揮してる者を優先的に狙撃するけど、指揮するその者が倒れても向かってくる農民達は、遠慮しなくていいから」


 「剣城様?・・・らしくないですね?」


 「うん?ゆきさんどうした?らしくない?」


 「いつもの剣城様なら弱者にも道を照らすような方で・・・」


 「分かってるよ。いつもならそうするけど、本当に宗教絡みは難しいんだよ。岡崎で襲われた大黒剣を叩いた3人覚えてるだろう?あの3人の目を見た?あれは人間じゃない。獣の目だった。自分さえ良ければそれで良い。そんな考えにオレは見えた。そんなモラルのクソすら忘れてしまった人までは、オレでも面倒見れない。可哀想だけど分かってほしい」


 「すいません。私が浅はかでございました」

 

 「いいよ。何も無いのは可哀想だから、松平様達にも少し渡してあげようか。もし盗まれても害が少ない物がいいよね」


 「剣城様!?私達に間者を放つ者なんかに!?」


 「お菊さん?それはオレ達もだから。嘘ついて綿花を育ててもらうんだから。それに今後も松平様とは切れない縁になるから、覚えておいて」


 「・・・分かりました」


 《懐中電灯×10》¥6000


効能・・・・手持ちの懐中電灯。電池式。最初の電池はサービス。



 《サバイバルマッチ20本入り×50》¥10000


効能・・・・雨に濡れても人類の始まりの火を。風にも負けない火を。



 《ロケット花火×100》¥10000


効能・・・・普通の花火。人に向けて撃つものではない。危ない。怪我をする。



 《爆竹×100》¥10000


効能・・・・多連装型爆竹。相手を驚かせたり熊と出会した時などに。



 《スモーク花火×100》¥10000


効能・・・・カラフルな煙が男心をくすぐる。煙の吸い込みに注意。



 これくらいなら大丈夫だろう!盗まれても然程脅威ではないし、真似も絶対できないだろう。効能もあまり無い普通のやつだしな。

 

 なんなら、スモーク花火はオレが使ってみたい気もするけど。男心をどうやってくすぐってくれるのだろうか!?


 「金剛君はこの花火。分かるよね?」


 「はっ。導火線に火を点けるだけですよね?」


 「その通り。これはマッチと言って、ライターとは別なんだけど、横のこの場所に擦ると火が点くんだよ。後は懐中電灯は、言わなくても出した事あるから分かるよね?これの説明を松平様の兵にお願いね」


 「畏まりました」


 「琴ちゃんは鈴ちゃん達も来るからみんなと合流して松平様方の兵の治療を。今回はオレが居た時代にも残るくらいの一揆だから、怪我人も多いと思うから頑張ってほしい」


 「任せて下さい!!」


 「ゆきさん、お菊さんは護衛お願いします」


 「「はっ」」


 「怪しい奴が現れたぞッッ!!!40人だ!!出合え!出合え!!」


 え!?嘘!?もう攻めて来たの!?


 「どけッ!我が君がお待ちなのだ!!我が君はどこに居る!?言えッ!!」


 あぁ〜・・・・。小川さんね・・・。てか早くない!?40分しか経過してないぞ!?


 「松平はワシを邪魔だてするかッ!?何人(なんぴと)たりともワシの我が君への進軍は止められん!!!」


 「松平の兵隊さん?すいません。通してあげてくれますか?私の兵です」


 「はっ!申し訳ござらん。貴方様の配下は大変に力が強く・・・」


 「ごめんごめん!怪我とかしてないですか?」


 「大丈夫です。では!」


 「我が君ッ!!!」「殿ッッ!!」「剣城様ッ!!!」


 熱い・・・。熱過ぎる・・・。昨日、一昨日くらいにバイバイしたばかりじゃないか・・・。


 「何の騒ぎだ!?」


 「松平様、すいません。私の配下が到着したようです」


 「真っ黒・・・それにその御老体の出立ちは・・・」


 「ふん!ワシは御老体ではない!体こそ些かくたびれ始めておるが、まだまだそこらの青二才には負けんッ!」


 スパコンッ!


 「小川の爺ッ!!誰に口聞いてるか分かっておいでですか!?この方、安祥松平家9代当主!松平家康様ですよ!!」


 「おっ!?菊!?今の動きは中々だな!?ワシでも見えなかったぞ!?いやぁ〜!そうとは知らずすまない!松平殿!?ワシらが来たからには安心して下せー!なんせ我が君は数々の必殺の剣をお持ちの方ですからな!がははは!」


 「あっ、あぁ。そうであるか。よろしく頼む。ま、まずはこちらへ」


 いやあの松平さんですら引いてるぞ!?小川さん・・・。どこもかしこでも必殺の剣とか言ってくれるけど、オレそんなに考え持ってないすよ!?引き立ててくれるのは嬉しいけど、物凄くプレッシャーなんだけど!?

 

 それに若い者には負けんとか啖呵切って言ったのに、最初(はな)っからお菊さんにやられてませんか!?


 「集まったのはこれだけか・・・・」


 「申し訳ございませぬ。我が兄は一揆側に・・・」


 「構わん。家成の忠誠は本物だ。こんなワシだがこれからもついて来てくれるか?」


 「はっ。どこまでもついて参ります」


 外の兵隊は1000人くらいかな?少ないな。


 「剣城殿?それに配下の者も、三河の為に済まぬ」


 「いや乗りかかった舟ですからね。それにオレ達も事業をする上で、一向宗はどうにかしないと難癖つけられて、また繰り返されるのはごめんですよ」


 「分かった。ワシの配下の事だが・・・気にしなくて良い。存分に働いてくれ」


 「いや、私は謂わば松平様の与力みたいな者です。松平様が主となり動かないといけません。この地は松平様の領土ですよ!」


 「そうだがどうやって鎮圧するか・・・。ただ倒すだけなら農民如きに負けはせぬが・・・」


 少し未来の覚えてる事をヒントに出してみるか。


 「事ここに至っては中途半端な考えは捨てて下さい。まず農民と一向宗を離す事が大事です。農民と松平様の家臣の方は、寺に金を借りてるから逃げられないのです」


 「そこまで調べてるのか!?・・・・つまり?」


 「食い物は私の配下に言い、たちまちですが早急に米をあるだけ持ってくるように言ってます。農民はこれでどうにかなるでしょう。一向宗の方ですが、仮に松平様がこの一向宗を壊滅させたとしましょう。借金から解放されますよね?」


 「だが他の者から借りておる奴も居よう?」


 「全部は私は言いません。最初に言ったように、中途半端では駄目とだけ言っておきます」


 「………銭の貸し借りを無くして…ここで施しを与えれば……徳政令か」


 うん。やっぱ天下人さんだわ。史実通り徳政令に行き着くんだな。微かだがオレも覚えててよかった。


 「よし!考えが纏まった!剣城殿!礼を申す。この恩は必ず」


 その後は、まずはオレが出した懐中電灯や花火の使い方を皆に教えた。


 「こっ、これは何だ!?」


 「光っておる!!炎でもないのに光っておるぞ!?」


 やはり驚いているな。未来の装備万歳だな。驚け!慄け!我こそは織田軍、信長直属、料理ご意見番ぞ!ふはははは!


 「剣城様!御免ッ!(パチンッ!)」


 「おっ、おう!お菊さん!?ごめんごめん!危ないところだったよ」


 「分かれば大丈夫です」


 「剣城殿は配下から叩かれるのか!?」


 うん!ちょっとしたご褒美です!!!と言いたいくらいか!?


 「これはですね・・・。理由があるのです。いずれ言います!松平様なら分かっていただけるかと」


 「そ、そうか。ではまた後に・・・。そしてこの様な装備、構わぬのか!?このはなびとやらも試して良いか?」


 「どうぞどうぞ!最初は私の配下に手本を。金剛君?よろしく!」


 「はっ」


 ピュ─────────パンッ!!


 「「「「おぉぉぉぉぉぁ!!!!」」」」


 シュゥゥゥゥゥゥゥ────。


 「おっ!?煙が!?前が見えぬぞ!?」


 パンパンパンパンパンパンパンパンパンパン!


 「鉄砲か!?」「殿をお守りしろ!!」


 「最後のは爆竹と言いまして、音で驚かす花火です。どれも殺傷能力はありませんが敵を驚かすのに最適かと」


 「凄いッ!!素晴らしいですな!!これをこんなに預けてくれるので!?忠次!家成!元忠!使い方を間違えるなよ!くれぐれも死なぬように!」

 

 「後は私達が持ってきた米を。まずはこれだけですが全部お持ち下さい。また時間差で持って来る手筈を整えております」


 「済まぬ。殿に代わりワシからも礼を言うぞ!皆の者、行くぞ!」


 農民と一向宗の離間作戦をするとの事で、酒井さん、石川さん、鳥居さん達は200人ずつ兵を連れて出て行った。

 

 米を無償で渡し暫くは今後も配給し、年貢も一年は免除すると大胆な家康さんの作戦だ。

 

 その口上を酒井さん、鳥居さん、石川さんが方々で言い、花火を撃ち動揺したところで、これ以降一揆に加担するなら容赦しない!と脅すようにすると。


 「上手く事が運べばいいけど」


 「これは剣城殿が居て、ワシの家臣も居て成り立つ作戦です。信用して下され」


 「はい。南西側は頼みますね。北西側に私は向かいます。那古屋方面に一揆が向かうのを私は防いできます。松平様、ご武運を」


 「くれぐれも剣城殿も怪我無き様に!落ち着けばワシからの一献を」


 「はは!楽しみにしておきます!小川さん!お菊さん!金剛君!荷物纏めて向かうよ。あっ、松平様!?私の配下の大膳という者が米を運んでくるようになっております。1人残しておきますので、この者を使って下さい」


 「ありがとう。そのように」


 「杉谷さんの君は・・・」


 「はっ。従兄弟の杉谷亮右衛門と申します」


 いやまだ20歳前後だと思うけどこの時代の人の名前は分からん!!明らかに名前だけ60歳くらいの人に感じるんだが!?


 「悪いけど、岡崎の伝令役頼める?大膳が米持ってくるから酒井様、鳥居様、石川様と連携を」


 「はっ。畏まりました」


 「金剛君?予備のトランシーバーを。周波数決めて亮右衛門さんに渡しておいて」


 「我が君!滾ってきましたな!この小川三左衛門!小川三左衛門が我が君に近付く者は方天戟にて一刀で冥府に送りましょうぞ!いや一向宗なら喜びましょう!死ねば極楽と言いますからな!?がははは!」


 いや今回は小川さんは重要だ。死ぬ事を恐怖に思うように出来れば怯んでくれる筈だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る