みんなフル稼働

 その日は家に戻り、琴ちゃん達の様子を確認して寝る事にした。焼いた肉は冷めてしまっていたが皆、後遺症?も無く元気にしていた。

 というか以前出していた勉強ノートに、切り傷は消毒して深ければ血管がどうとか、咳病の予防には手洗い、うがい、栄養ある物を食べ養生するやら、重傷患者にはイソフルラン麻酔を吸引式でとか、オレが初めて聞く薬の名前とかを書き出し、ビックリするくらい集中していた。

 あの実がどんだけ凄いかは分からないが、戦の怪我だけじゃなく仮に癌とかになっても、医療器具さえどうにかすれば治療してくれそうな気がするな。鈴ちゃんに関しては欲しい物リストまで書いてるわ。


 「お菊さん、この衛生班の5人は数日で人に教えられるようになると思う?」


 「私は専門外なので分かりませんが、見た感じでは教えられるのではと思います」


 「あの村の事は信長様はオレに任せてくれたから、オレの好きなようにしようと思う。戦に出る衛生班の人達が少ないと治療が追いつかないのと、例のスーパー軟膏で治療してたらすぐ治る代わりに考える事をしなくなり、そこで技術は止まってしてしまうから、重傷者以外は使わないように」


 「はっ。分かりました」


 「まず、未亡人の中で働く意欲のある人を、琴ちゃん達の下に付けてくれる?狙撃班の隼人君の部隊はオレが人を集めるから。工兵班の剛力君もオレが何とかするよ」


 「私はどうすれば良いですか?」


 「読み書きとか大人の人達に教えてくれる?距離や時間の統一をしないと、正直オレこの時代の時間とか距離が分からないんだ」


 「私もまだはっきりとは覚えてませんが、なんとかしてみます」


 それから1ヶ月の間は忙しいってレベルじゃない程、働きに働いた。慶次さんも合流して、甲賀の人達に陣の形成訓練や槍の訓練を見てもらい、杉谷さんは旧式ではあるが火縄銃をどんどん撃ってもらい、狙撃班の隼人君達に教えながらオレもこの時代の銃を練習した。

 加藤さんは数日後に奥さんと一緒に来てくれて国友さんに紹介し、残り一つの実を食べてもらい次の日からブラック企業並に働いてもらった。

 たまにみんなで川に行き、うなぎやマスを取りに行ったり山に生えてる松茸乱獲したり、オレは見た事がない草を見つけ草の癖に高く売れたり、珍しい石を見つけて試しに売ろうとすれば、有り得ないくらい高く売れたりした。



 《クジャクシダ》買い取り金額1株¥1500

 自然な雰囲気の庭の人気が高まり、良さが見直されている植物の一つ。


 《庵治石》買い取り金額1kg¥4000

 墓石に使われる最高級な石。訪問してくる参拝者に格の違いが見せつけれる石。未来では価値が高い。


 ただの草や石だと思ってた物が思わぬ買い取りの良さに驚き甲賀の人総出で乱獲した。

 甲賀の人達の家も加藤さんの家も結局は一つ10万円で売っていた、5人程ならゆっくり雨風凌げ布団も敷いて眠れる、プレハブを出してあげた。


 「剣城殿!」「殿!」「剣城様!」「ご意見番殿!」


 色々な人に色々な呼び方をされてるが、皆が言ってくれる『ありがとう』って言葉が素直に嬉しく思う。

甲賀の暮らしがどれだけ酷かったかは分からないが、少なくともこの村の暮らしは前よりいい筈だ。そう思いたい。飢える事だけはさせたくないし、皆笑って暮らせるようにもっと頑張るぞ!!


 国友さん達は日に10丁という脅威的なスピードで旧式ながら火縄銃を生産していき、話し掛けると信長さんの小姓、遠藤さんから200丁用意するように言われたらしく、必死で作っているようだった。俺が鋳型で作った『剣城が作った火縄銃を研究したいのに出来ん』とぼやきながらも、手は相変わらず動いていた。


 そんなある日の夜、夢の中に農業神様が現れた。


 「やぁ、我が兄弟」


 「お久しぶりです!ちゃんと毎朝拝んでいますよ!なんならポテチとかコーラもお供えしてますよ!」


 「あれは美味しいんだなぁ。最近Garden of Edenで購入してくれないから面白くないんだなぁ」


 いや面白い面白くないは関係なくね!?


 「最近色々忙しくてここ尾張でも色々生産出来だしたので中々・・・。ただそろそろ私の仲間に戦闘服的な装備をと思っております」


 「運命神の言う通りなんだなぁ。この前そろそろおいが仲良くしてる人間が『特別な服を購入するだろう』と言っていたんだなぁ」


 うん!?運命神!?また凄そうな神が出てきたな!?


 「面白い物を眷属と開発したんだなぁ。名付けてエイブラムスジオラマなんだなぁ」


 いやまた凄い名前だな!?確かエイブラムスってアメリカ軍の戦車の名前だったよな!?戦車でも作ってくれたのか!?


 「これなんだなぁ。Garden of Edenのボックスから取り出し、ここのボタンを押すと大きくこの模型の様な街が出来るんだなぁ。違和感が無いように、我が兄弟が居る時代に合ったように作ったんだなぁ」


 「・・・・・・・・・・・」


 エイブラムスという名前に釣られた・・・。てっきり武器かと思ったら街の模型かよ!?ていうかオレ戦闘服が欲しいって言いましたよね!?いやこれでも凄いけどよ!


 「やっぱ我が兄弟もくだらないおもちゃと貶すんだなぁ・・・」


 「いやいや!そんな事思ってません!!買います!買いますから!!」


 オレは勢いで購入すると言ったが値段聞く事を忘れていた。


 「ありがとうなんだなぁ。値段は10万円でいいんだなぁ」


 「分かりました!!!購入しますのでそんなウルウルしないで下さい!!!」


 農業神様の泣き顔なんか見たくないんだけど!?まあどのくらいの街か分からんけどボタン押せば街が出来るとか反則だよな。甲賀の人達が最初作った廃墟に近い家を取り壊してこのジオラマを出してみようか。


 「それともし良いなら、さっき言った戦闘服的なのと、有刺鉄線とか陣地構築できそうな装備とかありますか?」


 「色々あるんだなぁ。物は使い用なんだなぁ。我が兄弟は拠点を作ろうと思ってるけど、フェンスを置き監視塔を簡易的に作るだけでも、良い拠点になるんだなぁ」


 「私自身こんな事初めてで何が要るとか分からないので、300万程で一通りの物見繕ったりしてくれませんか?贅沢を言うなら参考書みたいに、習熟度が上がる工兵の専門書とかあれば嬉しいです!」


 オレはダメ元で農業神様にお願いしたんだが、農業神様がプルプルしながらまた目元をウルウルしだした


 「おいの事を我が兄弟が頼ってくれたんだなぁ!!!!!神界では運命神も鍛治神も生命神も芸術神も薬神も、おいには任せられないと言ってくるんだなぁ」


 いやどんだけ神様が居るか分からないけど、まあまあ農業神様って信用されてないのか!?可哀想なんだが!?


 「ホイホイハイのホイ!ハッ!!!!何が入っているかは夢から覚めてからのお楽しみなんだなぁ。色々役に立ちそうな物を見繕ったから、喜んでくれると思うんだなぁ」


 「ありがとうございます!起きたら確認してみますので、もしまた欲しい物あれば購入させてもらいます!」


 「ありがとうなんだなぁ。たまにはショッピングして欲しいんだなぁ。じゃないと広告作れないんだなぁ。さよならなんだなぁ」


 いやあの広告そんなお金かかるの!?

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