日本一と定評のあるジャンピング土下座
オレはその日の夜は八兵衛村長達と村に行き、八兵衛村長の家に泊まらせてもらった。村に行く前に信長さんに一言お伝えして行こうとしたら、木下さんから言ってくれるとの事で任せた。ただ明日は朝には必ず登城するように言われた。
「剣城が村に泊まるのは久しぶりだな!またあの肉でも食べさせてくれるのか!?」
「何でそんなに笑ってられるんですか?自分も気持ちを切り替えようと思ってはいるのですが・・・」
「ワシは千吉も源蔵も昔から知ってるからな。それにもしワシなら死んだ時、そりゃ内心は少しくらいは悲しんで欲しいが、他の者達は笑って送って欲しいな。
それに千吉はいつもいつもこの鳥が食べれるくらい増えたら、ばーべきゅーするんだって意気込んでたからな」
いや、育てたら食べるとは言ったが・・・ニワトリから見たら軽く狂気だよな。
「・・・・・・・・・。」
「源蔵は独り身で何も興味を示さない変わった奴ではあったが唯一こしひかりを食べてからだな。米を炊いて食べるのを楽しみにしてる感じだったな」
「それを自分のせいで・・・・。うわぁぁぁぁぁぁぁぁ─────」
「そんなうちのせいで泣かないで下さい。そりゃ確かに、肉を食べたいばーべきゅー食べたいと言っていた主人ですが、剣城様のお陰で少しずつですが、この村の食事情が良くなってきております」
そう言ってくれたのは千吉さんの奥さん、たみさんだった。奥さんに気付いてオレは現代では日本一と定評があったジャンピング土下座をして謝った。
「誠に申し訳ありません!自分が戦の時ちゃんと動けたら千吉さんを死なせずに…」
「いい加減におし!戦で死んだのは剣城様のせいじゃない!たまたまうちの旦那に運が無かったのさ!いや逆に運が良かったかもしれないね!
なんたってこの村を発展させてくれてる人を守って死ねたんだ!もし本人がここに居るなら村に大きな墓を作って毎日肉でもお供えしてくれ!とか言うてるに違いないさね」
「あまり喋る事は少なかったですが千吉さんは明るい方だったのですね・・・」
「ちょっと私も口が悪くなってしまったが許しておくれ。ただ主人は最初、剣城様を見た時から変わった奴だが村の事を考えてくれてる奴だって、他の村の人達にも言ってたのさ。
あの見た事ない野菜とか米を託された時なんか『この村も剣城が居た未来に近付いた』って喜んでたんだ。だからどうせなら笑って送ってやってくれないかい?」
「拙僧で良ければ二人の菩提を弔おう。拙僧が修行しておる政秀寺で、葬儀はここの村で行おう」
「沢彦さん、いつの間に!?それなら沢彦さんにお願いしたいです!ありがとうございます」
「良い眼になった。明日の早朝に葬儀を始める。良いかな?奥方様?」
「いえ、私の主人如きに・・・。それにうちは貧乏でそんなお布施なんか・・・」
「いえ、布施は結構。拙僧、この剣城殿や織田の殿様が手を加えておるこの村に大変興味がある。布施が無いからと手を抜いたりはしないから安心しなされ。
ただもし良ければだが、今日寝る場所をば貸してくれればと思うのだが?」
「そんな、ありがとうございます!うちに来て頂いてもらえれば狭い所ですが・・・」
「では後程参らせてもらおう。それと剣城殿?この後、少し良いかな?」
沢彦さんにそう言われて村の人達は家に帰りオレ達は村の入り口まで歩いた。
「それでどうだったかな?拙僧はあまり詳しく剣城殿の事は聞いてないんだが確か未来から来たと申してたな?それと・・・護衛の方も出て来なさい」
「見破り。見事です」
「中々良い動きをしている。だが気配を消し過ぎて逆に怪しい。これから精進しなされ」
何!?この人!?ただのお坊さんじゃないの!?何でお菊さんが居る事分かってるの!?それに中々良い動きをしている。って貴方も元忍びですか!?
「それで、未来から来たのだったかな?」
「はい。未来から参りました。今が西暦1561年、私が居た時代は2022年です。約460年先から来ました」
「西暦とは分からぬが、460年も先の世から来たのだな。だからこんなにこの村だけ見た事がない作物などが多いのだな。未来と言うのは平和かね?」
そこからオレは自分が知りうる歴史を伝えた。そして、未来ではこの永禄やこの後に続く時代が人気な時代である事を言い、自分もこの時代に来た時、安易に考えて失敗して今になっている事も言った。
「ほうほう。世界でこの日の本だけでなく南蛮も含んだ世界の戦を2回もかね・・・。なんとも愚かな。だが剣城殿が居た未来の日の本は裕福なんだな。
げーむにてれび、それに何故こんな狂った時代が人気なのかも分からぬ。いや、拙僧には何がなんやら分からない」
「テレビとは・・・何と言えばいいかな?この今私達が話してる映像を・・・目で見た物をそっくりそのまま他の人にも見せられる機械です。
この時代が人気な理由は、やはり名のある人もいつかは死にますが、その死に方に華があると言うか何と言うか・・・。そういうところが人気なのだと」
「ほうほう。ワシも先の世を見てみたいと思うが少しばかり刻が足りぬな。ほっほっほっ。剣城殿に問おう。このまま剣城殿はこの永禄の世で骨を埋める気はあるのかね?」
「今のところは帰る術(すべ)も無いし、信長様に早く日の本を統一してもらって皆笑える世界を作ってもらいたいです。なので、このまま信長様に嫌われない限りはお役に立てたらと思っております」
「我々と物の捉え方、人の死生観がだいぶ違う様だが、剣城殿の様な考え方は嫌いじゃない。むしろ好感すら覚える。
この先、剣城殿も戦に出るなら今日より苛烈な戦に出会う事もあるだろう。
もしまた大切な人を失い自分を見失いそうになり、拙僧が知らない未来の力で人を沢山殺そうと考えるなら、拙僧は剣城殿を止める様に務めよう。今のこの眼を忘れない様にしなさい」
「何でなんでしょうかね?沢彦さんは本当に凄い人ですね。お話ししたら心が軽くなると言うか、何でも見透かされてると言うか・・・」
「ほっほっほっ。拙僧は未来を見る力、ましてや南蛮にすら行った事も無いが、剣城殿がこの村を未来の力で発展させておる事の方が、誰にも出来ん凄い事だと思うがね?
これから自分に出来る事を精一杯しなさい。敵にも情けをかけ、一時の感情に流されず、優しい人になりなさい。そして大切な人を見つけ帰る場所も見つけなさい」
「沢彦さん。本当に話を聞いて気に掛けてくれ、ありがとうございます。これからも色々とよろしくお願いします!沢彦さんと話してたらお腹空きました。折角なので皆で未来の何か食べますか?」
「ほっほっほっ。未来の食は興味が湧くのう。剣城殿が良いようにしなされ」
「はい!ただ気になるのですがお肉って食べれますか?最近信長様もお気に入りで色々お出ししてるのです」
「仏教の教えでは『自分で殺していない』『自分の為に殺されていない』『殺されたところを見ていない』という三種の条件で肉を食べる僧侶も居る。拙僧もそうだ。
悪戯で殺生する事は御法度だが他者の命を頂くと言う感謝を忘れない事が大事だと拙僧は思っておる。村の皆にも振る舞うのだろう?拙僧はそれの余りを頂こう」
「へぇ〜!!!!中々凄い考えなのですね。大変勉強になります。では私は準備しますので少しお待ち下さい。またお呼びしますので!皆に知らせて来ますね!」
「何ともまあ不思議な人じゃのう。てれびにげーむに銭で世の中が回るのか、未来は。拙僧も変化をしないといけないのかもしれないな。いやしかし、食に興味が湧くのは久しぶりだ」
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