切腹おじさんの正体は・・・
その後、村の人達には後日褒美と沙汰を出すと言う事で皆解散となったが、オレは怪我してる人をそのままに出来ず、手が欠損してる兵の人、未だに馬糞を塗ってる人を見てこの時代の皆の意識改革をしないと、このままなら戦以外で死んでしまう事の方が多そうに思えた。
なので、特に指示は受けてないが城下の広場で八兵衛村長、木下さん達に協力してもらって怪我人の治療を開始した。正直オレは医療の事はさっぱりなのでGarden of Edenの効能頼りのところがあるが・・・・。
《消毒液》
効能・・・・傷口にかけると全く染みる事なく患部が綺麗になる。少し血止め効果がある。
《包帯、ガーゼ、テープセット》
効能・・・・お母さんの優しさで作った医療の基本3セット。水に入れても濡れない、剥がれない。
《痛み止め軟膏&錠剤》
効能・・・・物凄く苦い。だが効果は絶大。瞬時に対象箇所の痛みが無くなる。
《止血剤軟膏タイプ》
効能・・・・患部に塗るだけで即座に傷口の止血効果が出る。 皮膚再生軟膏を購入する事を勧める。
《麻酔軟膏》
効能・・・・医療従事者が野外手術する時に重宝する。傷口付近に塗るだけで即座に患部が何も感じなくなる。
《皮膚再生軟膏》
効能・・・・ありとあらゆる人間種の皮膚再生に効く軟膏。有識者の間ではスーパーエンジェルゴッデスフェアリー軟膏と言われている。欠損した箇所も12時間後には再生する。
※欠損してる場合に塗る時は傷口を消毒して血止めしてからじゃないと効果が発動しない。
オレは目を疑った。もう色々栄養ドリンクだとか布団の効能とか他にも見てきたがこの皮膚再生軟膏と麻酔軟膏、もう貴方達の優勝です。欠損しても生えてくるってどうなってるの!?
しかも天使、女神、妖精が軟膏ってどんな名前よ!?これに関しては全然名前負けしてないぞ!!!それに値段も¥25000程で現代の薬局で普通に塗り薬飲み薬を買うより少し高いくらいだった。
そもそも矢が刺さったままのあの切腹おじさんのために、無いとは思ったが麻酔を検索したら普通に出てきたから買ったんだが、麻酔が無かったら如何に凄い効能があるGarden of Edenの物でも矢を抜くのは超絶痛いだろうな。とオレは思った。
「皆さん!今から皆さんの治療を行います!怪我が酷い人から診ますので動けない人とか居たら周りの人が教えて下さい」
「こっちだ、こっち!こいつは前線に居た奴で腕を斬られたんだ!」
「いや!こっちが先だろうが!こいつは俺の兄貴で…」
「いや、我らが最初だ!我らは先祖代々…」
「各々方待たれよ!そもそもあいつは誰なんだ?あんな奴が金創医には見えないぞ」
「そうだそうだ!あんな奴ヤブでしかねぇ〜!それに見た事ない物ばかり出しやがって!」
「皆さん!この人は私の主で決して怪しい人ではなく…」
「女はすっこんでろ!でしゃばるんじゃねぇ〜!」
お菊さんがオレを擁護してくれたが効果なしだった。すると木下さんが前に出て叫んだ。
「貴様ら!こいつはワシと同じ任務をしとる芝田剣城である!今、此奴の文句を言った奴は出てこい!嫌なら貴様らは己らの家に帰れ!此奴を信じる奴のみ治療をしてやる」
木下さんの一喝で皆静かになったが誰一人帰る人は居なかった。
「木下さん、すいません。ありがとうございます。それとお菊さんもありがとう。まずは、お菊さんから治療します。
確か矢を自分で抜いてましたよね?痛みがあるかどうか分からないですがとりあえず消毒します。
その後この痛み止め飲んで下さい。飲み終わったらこのクリームを塗ります」
「くりーむ!?消毒!?そ、それに、そんな剣城様、勿体のうございます。私は末端の人間です!!そんな聞いた事も見た事もない高価な薬の代金は支払えません!」
お菊さん・・・本当に真面目な人だな。もし今度オレが戦に行ったとしても絶対この人だけは死なせない。オレが絶対守る。
「勿体ない勿体なくないじゃないんです。自分が出来る事があり目の前に怪我してる人が居たら私は治します。それに銭もいりません。なので、これからも護衛よろしくお願いします」
それから消毒して痛み止めを飲んでもらい皮膚再生クリームを塗ってお菊さんは治療が終わった。本当にこんなので大丈夫かは分からないがゴッドファーザーを信じるしかない。
治療が終わった後お菊さんも手伝うと言ってくれたが座って安静にしておくように言った。オレは一晩中治療頑張ろうと意気込んでたが、幸い酷い怪我の人は10人くらいしか居なくて後は切り傷くらいの人が多くて1時間くらいで治療が終わった。欠損してる人達に、
「明日になれば斬られた手、足、耳が生えてくると思います。私の事は追々信長様から教えてもらって下さい」
「そうじゃ。この芝田剣城への質問は本人じゃなくワシ、木下藤吉郎に言うてこい。まさか治療してもらって文句言う奴なんか居るまいな?もし貴様らの治療に不備があればワシが責任を取って切腹致そう」
「きき、木下さん!?何もそこまで・・・」
「いやすまん。あの竹中何某もあそこまで我らに強気に出てくると思わなんだ。あの村人はワシは直接は知らんがお主の今の顔に目も当てられんでな。 ワシが出来る事は手伝おう。それにワシはお主を信じておる。何も心配なんかせんでも良い」
「はっはっはっ!藤吉郎のおっちゃんが剣城を信じるか!なら俺もここはご一緒させてもらおうか!おい!織田の兵と村の奴らよ!剣城の薬が効かん場合は俺、前田慶次も切腹してやろう!」
「慶次さんまで・・・」
「沈んでばかりですいません。何とかこの気持ち整理する様に心掛けます」
そう言ってあと一人治療が残っているあの矢が刺さった切腹おじさん、なんと名前を聞いたら信長公記を書いた太田牛一さんだった。
「誠に申し訳ございません。普段はお館様の政務を担当し、戦には中々呼ばれない身で久々に戦に呼ばれ、あの時は興奮してこの様な情けない敵方の矢なんかに貫かれてしまいました。斯くなる上はこの腹掻っ捌いて…」
いやマジでもういいって!この人何でこんなに切腹したがるんだよ!!!
「折角治療したのに、矢を抜くのも苦労したのに切腹したがるんですか!?貴方はこれからも信長様を支えて行くんです!
それに貴方は私が見たところ、書物を書く才能がある様に思えます。これを差し上げますので怪我が治ったら何か書いてみればいいんじゃないですか?」
《大学ノート20冊》
《ボールペン2本》
「某に書の才能があると!?いや、この様な治療をして頂き且つこの様な物まで頂くとは・・・。この太田牛一、貴方様の事は一生忘れません。
まずは手始めに小姓の、堀殿が書かれているお館様の日常や功績を某も真似して書いてみる事に致しまする。誠にかたじけない」
これが後の世に残る、かの有名な信長公記である。
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