忍びよる間者の影

 よし!天麩羅の材料ついでに、お市さんや新たに来てくれた甲賀の人達の服も、注文しようかな?


 〜時間が止まる〜


 「よよ、良かった!人間!!」


 「あれ?また新しい人ですか?」


 「うん!?あぁ。何故か分かりませんが神格が上がったんですよ!以前の球体の私ですよ」


 「そうなんですね!おめでとうございます!それで今日は芸術神様に──」


 「そんな事より、ホットケーキなる物や他の甘味などはございませんか?お礼にこの二つの剣をお渡しします!」


 「え!?ホットケーキですか!?帰ったばかりで何も・・・。あっ!だいぶ古いですが収納に入れたままの、砂糖ドバドバのパン擬(もどき)ならありますが?」


 「それで良い!!むしろそれが良い!!それと交換はしてくれませんか!?」


 なんか凄く焦ってるな?ってかこの人?神?が戦神様なんだよな。あんま舐めた口聞いてたらやられるかもしれないな。気を付けよう。


 「はっ。畏まりました。どうぞ」


 「人間よ!助かる!それで今日はどの様なご用件で?」


 「はい。芸術神様に服を頼みたくてですね。私が居る時代の結婚式に着れる服数着と、私にも配下が増えましてその者達の普通の服を、600着くらい・・・」


 「そんなにもですか?いやぁ〜、芸術神様もお喜びになられるかと思います。デザインなどはお決まりでしょうか?」


 「いや、それはやはり芸術神様の美的センスにお任せします!それと天麩羅を作りたくてその材料をと」


 天麩羅・・・天麩羅・・・。あの油で揚げるこの人間が居る日の本の料理だったよな・・・?あぁ、おいも食べてみたい・・・。


 「あれ?何かまずい事言いましたか?」


 「いやいや、何でもございませんよ!それでは、未来の日本海で取れた車海老なんか如何でしょう?」


 「食材の方は自分で買いますので大丈夫ですよ」


 「そうでしたか。失礼致しました。では今芸術神様はここに居ませんので、後程ボックスにお届けという事で如何でしょうか?」


 「それでお願い致します。私のクレジットで払える範囲でお願い致します。できれば私が居る世界の銭300貫くらいの範囲で、よろしくお願い致します」


 「分かりました。レートはこちらで確認しておきます。いつもご利用ありがとうございます。ではまた何かあればお呼び下さい。それと農業神様からですが、バカンスのお土産があるそうです。帰ればボックスにお渡しするそうですよ」


 バカンスとな!?農業神様がバカンスだと!?どこでバカンスしてるんだ!?


 「はは。グラズヘイムという場所でございますよ。天界で有名な避暑地でもあり、観光に人気なのですよ。近くにヴァルハラ宮殿なんかもございますよ」


 いや貴方も心が読めるのですか!?


 「心で話さなくとも。神格が上がり心読みの権能を授かりましてね。誰かは分かりませんがありがたいことでございますよ。では注文承りました」


 「あ、ありがとうございました!またお願い致します!」




 ふぅ〜。あの人間が優しくて助かったな。


 「戦神様!お待たせ致しました!地球産のパンだそうです。凄く甘いそうですよ」


 「おっ、おう!良い匂いがしておる!素晴らしい供物だ!うん!美味い!!ではこれは貰って行くぞ!また来る!がははは!」


 えぇ〜!!?また来るのですか!?あぁ・・・。おいも一口欲しかったんだなぁ・・・。いや、待てよ!?芸術神様に頼む服を早くに用意すると、あの人間に感謝されるのでは!?


 こんなに早く用意してくれるとは思わなかった。これをどうぞ!!と何かくれるのではないか!?いかん!早く用意しよう!!!




 〜時間が動く〜


 よし。服の件は何とかなるかな。いつまでかかるか聞いておけばよかったな。まぁ、間に合いそうになければまた聞けばいいか。


 《シーフードパック詰め合わせ×100》¥700000


効能・・・・西太平洋から東太平洋に生息するエビから始まり海の幸の詰め合わせ。煮物、焼き、炒め、揚げ、色々な料理に応用できる。


 良い物見つけたけど高いな!?おい!!皆に振る舞おうとすれば大所帯になったから、これくらいは要るだろうけどよ・・・。


 これからは滅多な事では飯も皆で食べれないな。これも早急に料理人になる人見つけないと。そして海にも進出しないと!


 「皆さんお待たせ!!今から呼ぶ人は手伝って欲しいんだけどいいですか?」


 「はっ!!味見はお任せを!」「いやいや、某が!」


 「次郎左衛門さん!金剛君!鈴ちゃん!鞠ちゃん!ゆきさん!」


 「「「「「はい!」」」」」


 「このシーフードパックの中に入ってる海産物に塩胡椒を少々かけてほしい。それと大膳!!大膳君はどこだ!!?」


 「はっ!ここに!心なしか某にだけ当たりが強いように思いますが!?」


 「それは当たり前だ!大膳君だからだ!!大膳君は竹中さん達の席決めを早急に!」


 「はっ」


 「この大鍋に油を・・・油は!?油はどこにあるの!?」


 「この一斗缶一つしかございませぬが・・・」


 クッ・・・誰かが何かに油料理を使いやがったな!?業務用の油20缶くらいストックしてただろ!?


 《業務用油一斗缶×30》¥50000


 《神様印(かみさまじるし)天麩羅粉×100》¥50000


効能・・・・高天原の老舗、(株)天ぷら天照 の店長が考案した黄金比の天麩羅粉。付属のカップに一杯の水で食材に黄金色(こがねいろ)の衣を纏わせ、食べる者を唸らす至高の粉。


 おいおい!?高天原って神話だろ!?そんな所に老舗があったのか!?黄金色の天麩羅粉とは!?店長凄過ぎだろ!?


 「はい。油と天麩羅粉ね?この粉一袋にこのカップ一杯の水を混ぜて、後は食材をこのバッター液に付けて油で揚げるだけだよ!」


 「おっ!?これは以前食べた、かつと似ておりますね!?」


 さすが次郎左衛門さん!だが少し違うな。


 「流石、美食家の次郎左衛門さん!似てますが違いますよ!レシピ本渡すので色々作って勉強してほしいですよ。それで出来れば飯屋なんかしてほしいくらいです」


 「剣城様はそれがお望みで?」


 「いや、強制ではありませんが配下が多くなったので、おいそれと皆で飯も食べにくくなったなと。飯屋をする人が居ないから、今なら上手い職だと思うんですけどね?」


 「畏まりました。剣城様がお喜びになるなら某が引き受けましょう。大野家の活躍は弟の太郎左衛門にお願いしましょう」


 「え!?そんな二つ返事で構わないのですか!?」


 「いや、昔から甲賀でも某が畑仕事してお袋が居なくて、料理までして弟に食わせていましたからな?料理は得意なのですよ」


 これで線が繋がったわ。だから伊右衛門さん並みに包丁が上手だったんだ。まあこの時代の人は皆、男でも包丁捌きは上手だけど。


 《神様印(かみさまじるし)料理本レシピ》¥1500


効能・・・・西洋〜東洋、その時代、年代の料理の極意を記した本。農業神監修。習熟度up。



 《神様印(かみさまじるし)お酒の歴史書》¥1500


効能・・・・天界で酒好きとして有名な鍛治神監修の、酒の造り方から飲み方、合う入れ物まで書かれている。習熟度up。



 「この2冊を託します。正直、酒の方は国友さん頼りになるかもしれませんが、皆酒好きだから喜んで仕事はしてくれるでしょう」


 「はっ。必ずや剣城様が喜ぶ酒と飯を作ります!」


 「まあ、普通に営業してほしいからね。とりあえず天麩羅作りましょう!」


 それから皆で揚げて盛り付けてと繰り返してたが、最初に出来たやつは冷めてしまうから、金剛君や鞠ちゃん達は『要領が分かった』と言ってくれたので、この場は任せて大広間に向かう。


 クッ・・・!大膳めがッ!!何でオレが真ん中なんだよ!!?何で皆に囲まれて食べないといけないんだよ!?


 そう思いつつ部屋に入ると、竹中さんの歓迎会の筈が、オレが入ると何故か拍手されてしまう。


 「ささ、我が君は真ん中へ!」


 「真ん中とか食べにくいんだけど!?」


 「ははは!剣城は我らの殿だからな?てんぷら、楽しみにしてるぞ!」


 「慶次さん?マジで美味いから覚悟しといてね!」


 「よしっ!とりあえず順番に出てくるから出された人から食べていって下さい!本当は天つゆってのがあるけど塩と醤油、好きな方で今日は食べて下さい!それでは・・・皆ビール手に持ちましたか!?」


 「「「「「オ───ッ!!!」」」」


 「では・・・・竹中さんと望月さん達の歓迎会を始めます!望月さんの歓迎会は皆揃えばまたやりますが・・・乾杯!!」


 「「「「「かんぱいっ!!!!」」」」」


 「プハァ───ッ!!!美味い!久しぶりのビールは美味い!!望月さんも竹中さんも遠慮なく!飲んで食べて下さい!」


 「剣城様!?この黄金の水は口で暴れておりますが!?」


 「そういう飲み物です!喉越しが良いですよ!癖になりますよ!」


 「剣城殿!?こっ、この食べ物は!?サクサクで──」


 「天麩羅と言うんです!美味いでしょ!?オレも一つ・・・美味ッ!これめちゃ美味ッ!!エビが堪らないくらい美味い!」


 「これが海老ですと!?ではこちらは・・・」


 よし!皆上々・・・!というか、かなり高評価だな!!

小七郎さん達も元気に食べてるし!後で、戦神様から貰った剣を鑑定して、渡せそうなら小七郎さんに渡してあげよう。


 その後、皆最初は少しずつ食べて飲む感じだったが、オレが色々な人の所を回りお酌をしていると、緊張が解れたのか皆ワイワイ宴会みたいな雰囲気になった。


 パンッ! パンッ!


 「皆さん、お腹も膨れて良い感じに酔いも回った所で、新たな役割りを言います!竹中さん、前へ!この竹中さんは当初敵だった斎藤家の者でした!ですが今は味方です!信長様も私も一度は負けました!作戦から陣とか色々教えてもらうように!」


 オレは目で竹中さんに一言お願いした。


 「えぇ〜・・・。剣城殿より紹介してもらいました、竹中半兵衛と申しまする。主に、知略を使った作戦が得意でございます。以後お見知り置きを」


 う〜ん・・・硬いな。まあ最初はしょうがないか。


 「続いて望月さんです!皆知ってると思いますが、問答無用で私の右腕左腕になってもらいます」


 「えっ!?それは誠ですか!?いや元甲賀頭領でもそれは・・・」


 「後で、野田さんからオレの境遇を聞いて下さい。そして聞きたいことがありますので」


 「・・・分かりました」


 「そんな怖い顔しないで下さい!大した事ではありませんよ!」


 「とりあえず家はかなりあるので、皆家族とか好きな家に泊まって下さい!後日必要な物資は渡しますので!」


 「剣城様?何から何までありがとうございます。この望月信雅。残りの人生、一生懸命に奉公致します」


 「こちらこそよろしくお願い致します!」


 「それはそうと、ゆきと夫婦となるとか?」


 「え!?どうしてそれを!?」


 「いやいや、一蔵が方々で言って喜んでおりましてな?長数も喜んでおられますぞ!おーい!長数!こっちだ!」


 いや実のお父さんだろ!?スーツ着てないぞ!?土下座か!?元日本一と定評のあるジャンピング土下座か!?


 「この度は我らにこの様な──」


 「いいんです!個人的に甲賀の事を聞き皆さんの境遇を知り、私に出来る事は無いかと思いまして」


 「一益坊にも一度礼を言わねばなりますまい。それと・・・うちの娘と?」


 「ゴホンッ・・・。えーと・・・今すぐとは、申せませんが今やっている仕事が落ち着き次第に・・・娘様をゆきさんと夫婦になる事をお許し下さい!絶対に不幸にだけはさせません!」


 言えた・・・!珍しく吃らずに言えたぞ!!


 「こちらこそ織田家の芝田剣城様と言えば、この近辺では今や飛ぶ鳥落とす勢いのお方・・・。家格が合いませんが宜しかったので?なんなら側室にでも・・・」


 え!?オレってそんな有名なの!?ってか、そんな事より側室!?側室か!?この時代は許されるのか!?男の夢!側室を!?


 「望月様、伴様、御免!お久しぶりでございます」


 「おう。菊か。息災なようでなによりだ」


 「剣城様は側室など持たれません。後で申しますが、剣城様が居た世界では一夫一妻でございます」


 「うん?剣城様の居た世界?」


 クッ・・・!変に色々な雑誌やら本見せたせいで、未来の事分かってるからか!?お菊さん!?何余計な事を!!!オレのハーレムルートを!!!ぐぬぬぬぬ・・・・。


 「宜しいので?」


 「え!?あっ、当たり前じゃないすか!オレはゆきさん以外目に入りませんから!ははは!」


 「これはめでたい!長数!良かったではないか!まあ今すぐではないが娘を嫁にやれる!しかも剣城様にだ!側室を取られないと申しておる!安心ではないか!」


 あぁ〜・・・ハーレムルートが・・・。






〜観音寺城〜


 「なぁ〜にぃ〜!?望月に続き47の家全員が、織田に向かっただとぉぉぉ!?!?」


 「申し訳ございませんッッ!!!望月本人は武田と誼が有り、某はてっきり甲斐に向かうものかと・・・」


 「たわけがっ!!!!」


 「で、ですがあれ程の草をしかも老人や子供、女まで全員となると、食い扶持を揃えるのは・・・・」


 「結局は何人なのだ!?」


 「はっ。当初は300人前後でしたが700人程は・・・・」


 「チッ。一軍が作れるではないか!いや待てよ・・・。山中!!一計を計る!織田に向かう者の中に間者を放て!そして潜入できた者に乱暴、狼藉を働き織田に住めなくせよ!」


 「はっ!」

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