安芸への訪問 前
日を跨ぎ、那古屋へと赴いた。吉蔵さんの所だ。護衛と称して、小川さんが着いて来てくれている。そして見えない所に、甲賀上忍?の卵の子達が居るらしい。それとかなり珍しく隼人君と鶴さんも居るらしい。
何故かって?どうやら今日、見えない所に居る子達は最終試験らしく、いつかのタイミングでエアガンを隼人君がオレに向かって撃つらしい。それを防げられるか!?って試験なのだと。
オレに言われた事は・・・、
「剣城様にはどのタイミングとかは言いません。流石に、要人や仕事の話の途中にはしませんが、いつかのタイミングで撃ちますので、一応、下にベヒーモスーツだけ着ていただければと」
と、言われたのだ。最初はビックリしたけど今後はミヤビちゃんが頭となり、黒歴史のような部隊名だけど、芝田家親衛隊となりオレとゆきさんを24時間常に誰かが護衛してくれるのだそうだ。
それと並行して、装備した者は満足に動けたりはしないが、もう鉄砲を物理的に防ぐ甲冑を三好が少し開発した事を聞いた、国友親子、そして加藤さん。
隼人君の意見を聞き、今後そんな物をも貫く弾丸を開発すると意気込んでいるみたいだ。所謂、FMJ弾こと、フルメタルジャケット弾を開発すると意気込んでいるそうな。
その弾が開発されるまでの運用として、もし他国と戦になり、織田家・・・特にオレの部隊の要でもある鉄砲隊が防がれた場合の戦術としては、芝田軍 第一決死隊と名付けられた慶次さんが隊長の武者が肉弾戦を行い、その鉛を仕込んだ動きの遅い奴等を刈り、隼人君率いる鉄砲隊の斉射をかける。
野戦で、敵の鉛仕込みの隊が多い場合は小泉さんが率いる砲撃隊が最初に仕掛け敵を木っ端微塵とするらしい。
で、その大砲が使えそうにないような戦場なら小泉さん達、砲撃隊はコンパウンドボウ・・・現代の競技などで使われるようなアーチェリーに持ち変え、その弓矢の先に爆発物・・・芳兵衛君や加藤さん達が片手間に作った小さな鉄パイプに錆びた釘やネジ、クヌギを火薬と一緒に混ぜて、後は導火線に火を点けて矢を射る。
物によっては爆発するまでラグはあるだろうが足跡のダイナマイトのような物だ。
効果は・・・言わなくても分かるだろう。
「おっ!お久しぶりだ!剣城殿!」
吉蔵さんの滅多に見ない笑顔と使い慣れていない呼び方に出迎えられる。多分、オレが居ない間に話し方とかも注意されたのだろう。
その隣には朱華さん達、明の船員まで居る。
「お久しぶりです。なにやら、林様や布施様と市場の話をしたとか?」
「えぇ!はい!分かりやすく教えてもらった。良い話だと思う。いや、そもそもそんなに俺達が利を享受して良いのかと疑問にすら思う」
「オレ個人的にはこれでも取り過ぎかと思っているんですけどね。あ、今日は吉蔵さんに相談をと思っているのですよ」
「相談か?」
「えぇ。市場の件は聞いたでしょう?で、新たに漁師になりたいって人の統括を任せたいと。要はその市場の管理をお願いしたいって事です。飽く迄織田家は座として市場を銭で貸してるって感じで言えば分かりますか?後は人の成りや何かは吉蔵さんに任せたいということです」
「いやそれはいいが・・・そんな漁師になりたい者なんて居ないだろう?」
「それがどうでしょうね。今回、初めて税率というものを決めるので、漁師は税を安くするつもりだし、ここは林様が元々治めていたような場所ですからね。多分、林様も並々ならぬ思いが出てくると踏んでるんですよね。斯くいうオレも牡蠣とかハマグリとか食べ歩きしたいですし。それを安定供給するにはやはり人が要りますからね。
けど、間者を入れてしまってはいけませんので、信用できる吉蔵さんに!と思っているのです」
「そこまで言ってくれるなら引き受けようじゃないか。ただ、税率?なんぱあせんととか言うのは分からないから、覚えるまで人を付けてはくれねぇか?」
「あ、それはもちろんです。ここは林様に一任する予定ですので、伝えておきますよ。で、落ち着けばここに小屋でも建てて、海鮮丼屋さんとかしてくれれば
非常に助かります!食べに来ますよ!それとですね・・・近々、甲斐に向かうのですが、鯛とか結構な数を見繕っていただきたいのですが、最近はどうですか?」
「甲斐!?それはどこでぃ!?」
「まぁまぁ遠い所です。エラと内臓を取り省いて、例の真空袋に入れて、海水氷を作ってクーラーボックスに持って行こうかと。で、定期的に暫くは魚を注文したいのですよ。今回は氷の凄さを見せつけたいからわざと海水氷で運びますが、次からはこのクーラーボックスで!」
オレがドヤ顔で出したクーラーボックス。現代日本の工業メーカーが販売しているリチウム電池を使った充電式のクーラーボックスだ。それの1番大きいサイズだ。お値段98000円もしたやつだ。
「見た目は俺達にくれたくうらあぼっくすと変わらないんだな?何が違うんだ?」
「手を入れて見てください!氷もないのに冷たいでしょう?温める事もできる優れ物ですよ!」
ここでもオレが作ったわけでもないのにドヤ顔だ。
「ほぅ?中々凄い物があるのだな。ではこれに入れて大膳様に頼めばいいのだな?」
チッ。全然驚かないのな。オレはタブレットで見つけた瞬間から狂喜乱舞したんだけどな。
それから30日に一度大膳に取りに来させる事を言い、市場の件はまた近い内に取り決めを書いた紙と一緒に新たにハンコと許可証を作り持ってくると言い、吉蔵さんとは別れた。
とりあえず、鯛とかカサゴ、メバル辺りだけでも喜ぶだろう。那古野で獲れる最もポピュラーな魚だしな。ごく稀にサクラマスが獲れるみたいだが、サクラマスは問答無用で信長さんに回収されてしまうらしい。まぁオレはタブレットから買えるからいいけど。
次は明の人達だ。
「ふっふっふっ。仕事している時のあんたは顔が違うのねぇ〜」
「おい!明の女!ワシ等だけになると軽口になるのは辞めろ!ちゃんと我が君を敬え!」
「相変わらずだねぇ〜。あなたは筆頭家老?になったのでしょう?剣城の旦那の家の偉い役なんだってね?ディン!土産を」
「はっ!」
「あぁ、この女はディン。アタイの弟子みたいなものさ。日の本の言葉がまだあまり分かっていないからそこは勘弁してちょうだい」
「それはいいけど、よく見ると顔が似てる気がするけど家族とかかな?」
「分かるかぃ?」
「やっぱり!従姉妹とか妹ですか?」
「いや?他人だよ。皆から言われるからね。説明が面倒な時は妹って事にしてるわけさ」
クソが!知った口で言ったのが恥ずかしいじゃねーか!
オレが恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうになったから軽く後ろを向いて深呼吸した所で何かが飛んできたような気がした。が、それを正に肉壁かの如く防いだ子達が居た。
「(パシュ コツン)」
「がっはっはっ!さすが我が君!隼人の狙撃の気配を感じて後ろを向いたのですな!」
え?いや、違うけど。ドヤ顔で家族ですねって言って間違えて恥ずかしかったから後ろに向いただけなんだけど。
「おや?側近の子達かい?良い動きじゃないか!それより、今後の荷物の件なんだけど、羽柴様って人と連携すればいいんだろう?」
朱華さんはあまり興味なさ気に仕事の話へと話題を変えた。現れた子達も気付けば見えなくなっていた。まぁこれは夜にでも挨拶すればいいか。
「(シィーッ シィーッ)おぉ!遅れてすまんすまん!そこの浜の女から貝のばたあ焼きを是非食べてくれって言われてな!良い尻の女じゃった!それにしても貝は美味いのぅ!」
チッ。羽柴さんはまた女のケツかよ。しかも是非食べてくれって・・・絶対に女のケツ目当てだっただろうが!
「これはこれは。昨日振りですね。羽柴様」
「おぅ!朱華!お主も中々良い尻をしておる!男が寂しいならワシを尋ねると良い!」
「羽柴さん・・・今日は仕事の話なんですけど?ねねさんに言いましょうか?」
「おぉ・・・剣城!そんなつまらん事は言うな!な!?」
「まぁもういいです。で、これから朱華さんが乗る船を変更致します。まずは、島津家への定期航路はもちろん、その途中に安芸にも偶に寄ってもらいたいって感じです」
「安芸?どこだい?そこは?」
「それはこれから走ります。金剛君!ドンペリ1番艦回して来て!」
久しぶりに登場の農業神様から買ったドンペリ船だ。この時代、朱華さん含め、明やポルトガルなどの船がどのような航海術を用いているかは分からない。 まぁ恐らく羅針盤のような物を使ってはいるだろうが、オレには関係ない。オートパイロットではないが、目的地をナビで入力すると勝手に走ってくれるからな。
「これは・・・織田軍の主力艦じゃないのかい!?こんなの勝手に動かして怒られないのかい!?」
「怒られるもなにも・・・これオレが出した船ですし。他の人はどうかは分からないですが、オレなら怒られないですよ」
まぁもしかすれば怒られるかもしれない。かもしれないが、信長さんとオレはこのくらいで怒られたりするような信頼関係ではないと思う。
他の人なら謀反と直ぐに疑われるだろうな。
「まぁとりあえず大丈夫です!日帰りできるので、小舟に乗り込んで行きますよ!大膳君!それに羽柴様!せっかくなので、安芸に何を持っていくか決めてみてはどうです?」
「どういう意味じゃ?」
「実は商いと言っても、各地に行商として出ている人は何を売りに行くかはその人に選ばせているのですよ。まぁ酒がやはり1番多いですけどね。だから今回初めての安芸に来訪となります。
熊谷さんって方が居るのですが、毛利家の殿に話は通すと聞いていますので、少量の荷を流すのはどうですか?多分、すぐに注文が入ると思いますよ。理想としては、安芸の港に織田家の小屋でも建ててくれれば御の字ですね」
「お主はサラリと凄いことを言うな。誰が自国の領土に小屋とはいえ、他国の小屋を建築する者が居るというのだ」
「え?でも、薩摩・・・じゃなかった。大隅に高山城をオレは貰いましたよ?」
「いや、だからな・・・いや、もういい。とりあえずお主のやり方を見てみる」
小舟に乗り、ドンペリに乗り込む。朱華さん達、明の乗組員の人達も5名ほど来る。こちら側は羽柴さん、オレ、金剛君、剛力君、大膳君。そして・・・、
「小川さん!いつまで遊んでいるんですか!護衛じゃないんですか!?」
「わ、我が君!!これを見てください!本物の方天戟ですぞ!」
「ふふふ。明の長安という所のとある城の宝物庫で見つけたのさ」
小川さんはお土産というには似合わない方天戟を貰ったようでご機嫌となっていた。けど、まさか本当に本物の方天戟があるとは思わなかった。まぁいいや。
「いいから!早く出航しますよ!」
「剣城様!荷の方はどうしましょう?」
「大膳君!全てを言わないと分からないか!?とりあえず、挨拶を兼ねてだから軽くでいいんだよ!なにも当主と挨拶するわけじゃないんだから!飽く迄、行商人だ!まぁ陸からじゃないから関所とかお金払わないから反則っちゃ反則だけど」
「分かりやした!とりあえず、酒でも入れておきます!後は、塩と砂糖でよろしいですか?」
「うん。そんなところだろう」
「なぁ?剣城?いつもこんな感じなのか?」
「羽柴様!考えてはダメなのです!感じるのです!ドントシンク!フィール!!」
「お、おぅ・・そうか。まぁ、とりあえずワシが見て、下の者に伝える」
羽柴さんにまずは覚えてもらわないといけないからな。それに瀬戸内海・・・村上水軍が居るんだっけ?まぁいいや。日本の小さな船でこのドンペリ号に攻撃なんて仕掛けてこないだろう。
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